ブランド調査の進め方|認知・イメージ・選ばれる理由を捉える質問例

ブランド調査 質問から判断へをテーマにした担当者のイラスト

ブランド調査とは、自社のブランドが誰に知られ、どんな意味で捉えられ、なぜ選ばれているかを確かめる調査です。認知率を出すことだけが目的ではなく、商品・説明・接点のどこを改善するかを決めるために行います。

「若い人に選ばれない」と感じても、知られていないのか、価値が伝わらないのか、使う条件が合わないのかで打ち手は変わります。この記事では、ブランド担当者が調査の問いを具体化できるよう、目的別の質問例と結果の使い方を整理します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 Ukon Norihito

一般社団法人Re-Generation 代表理事|次世代との対話・共創

企業と次世代の接点をつくり、生活者の価値観を企画につなげる対話・共創プログラムを企画・運営。NECとの未来社会共創プログラムや、SMBCなどと連携したワークショップを通じて、企業の問いと若者の日常をつなぐ場づくりに取り組む。

1999年生まれ。神戸大学法学部卒業後、2022年に関西電力へ入社。新ビジネス創造コース1期生として新規事業開発に携わり、2023年6月に一般社団法人Re-Generationを設立。

学生との面談経験と、企業で次世代向けの事業を考えた経験を原点に、生活者との対話を大切にしている。本記事では、調査で確かめる問いと、その結果を企画の判断につなぐ方法を解説する。

右近宣人の想いと、リジェネレーションの歩みを知る →

参加者が自分の経験や考えを共有するワークショップの様子
参加者が経験や考えを共有するワークショップの様子

ブランド・商品企画に、若者の視点を

調査の「問い」を、
次の企画につなげる。

インタビューや対話型リサーチで、選び方の背景にある価値観を探ります。調査の問いづくりから参加者募集、得られた気づきの企画への活用まで、目的に合わせて支援します。

  • 選択の理由を深掘り
  • 企画の仮説を確認
  • 次の打ち手を検討

NEC・SMBCとの共創事例と、調査・企画支援の進め方をご紹介しています。

コンテンツ

ブランド調査は「何を決めるか」から設計する

経営上の悩みを、調査で答える問いへ。課題:何が起きているか、問い:どの理由を確かめるか、判断:結果によって何を変えるか
この章の要点:経営上の悩みを、調査で答える問いへ。クリックで拡大。

まず、調査後に選びたい行動を書きます。「認知度を知る」より、「認知を広げる施策と、商品の説明を直す施策のどちらを優先するか」と置くと、必要な情報がはっきりします。

現場の悩み調査で答える問い検討する行動
ブランドを選んでもらえない知らないのか、知っても候補に入らないのか接触機会を増やす/価値の説明を見直す
伝えたい印象と違うどんな場面・情報から、その印象になったか商品ページ、接客、体験内容を見直す
既存顧客の利用が減った利用場面や選択肢がどう変わったか商品・サービスの利用条件を改善する
若年層を理解したいどんな生活場面で、何と比較しているか対象場面と企画仮説を絞る

調査の実施自体が認知やロイヤルティを上げるわけではありません。結果を使う部署と、誰が判断するかを先に決めることが、調査を実務につなぐ条件になります。

調査対象は、購入者・未購入者・離反者を分けて考える

誰の回答なのかを、利用経験で分ける。購入・利用者:選んだ理由と実際の体験、未購入者:認知・比較・見送りの理由、離反・休眠者:使わなくなった場面と代替
この章の要点:誰の回答なのかを、利用経験で分ける。クリックで拡大。

自社のSNSフォロワーやイベント参加者だけに聞くと、接点のない人の認識は分かりません。ブランドを知っていることを参加条件にした調査で、対象市場全体の認知率を出すこともできません。

食器ブランドを例にすると、「直近3か月に自宅用の食器を買った人」と「自社で買った人」は異なる対象です。前者は選択肢全体の中での比較、後者は購入体験や利用後の評価を聞くために使います。期間は商品の購入頻度に合わせて設定してください。

対象人数は、全体の数字だけでなく、比較したい区分ごとにどの程度の回答が必要かから相談します。少人数の区分を細かく割るほど数値は不安定になります。オンラインパネル、会員、店頭募集など、集め方による偏りも記録し、参加者の結果を無条件に市場全体へ広げないようにします。

アンケート・インタビュー・対話を目的で使い分ける

広がり・背景・新しい案を分けて捉える。アンケート:認知や評価の分布を捉える、インタビュー:選択の経緯と理由を深掘り、対話・共創:気づきや企画の論点を広げる
この章の要点:広がり・背景・新しい案を分けて捉える。クリックで拡大。
方法向いている問い得られるものと限界
アンケート対象条件の中で、何がどの程度あるか回答分布や区分比較。対象の集め方と質問に結果が左右される
個別インタビューなぜ選んだか、なぜやめたか行動の経緯や仮説。少人数の発言から比率を推計しない
グループでの対話他者の経験を聞くと、何に気づくか比較や連想。周囲の意見に影響された反応を含む
共創ワークショップどんな場面・企画を考えられるかアイデアや判断の論点。自然な購入意向の測定と区別する
口コミ・SNSの観察公開された言及に何があるか既存の声の探索。投稿しない人や非公開の声は含まれない

未知の課題を探るなら聞き取りから始め、その仮説の広がりをアンケートで確かめる方法があります。逆に、既存調査で気になる差が見えた後、インタビューで背景を調べることもできます。順序は一律ではなく、判断に足りない根拠で選びます。

認知・イメージ・選択理由を聞く質問票の例

思い出す→知っている→選んだ理由の順に。自由想起:名前を見せる前に思い出す、認知・経験:知っている程度と利用を分ける、理由・場面:評価の背景を具体的に聞く
この章の要点:思い出す→知っている→選んだ理由の順に。クリックで拡大。

以下は、自宅用食器を対象とした架空の設計例です。選択肢や期間は対象商品に合わせて調整し、本調査の前に少人数で質問の意味や回答しやすさを確認してください。

目的質問文の例回答形式・確認点
利用条件の確認直近3か月に、自分のために食器を購入しましたか購入有無。贈答用とは分け、必要な対象を確認
純粋想起自宅で使う食器のブランドで、思い浮かぶ名前をお書きください自由回答。ブランド一覧を見せる前に聞く
助成認知次のブランドについて、どの程度ご存じですか「知らない/名前だけ/特徴を知る/利用経験あり」などを区別
イメージこのブランドから思い浮かぶことを、自由にお書きください自由回答を先に置き、後の選択肢による誘導を避ける
比較検討直近の購入で、ほかに何を候補にしましたか他ブランド、無名の商品、購入しない選択も拾う
選択理由最後に購入を決めた理由と、そのときの状況を教えてください価格だけで終わらず、場面・比較対象・決め手を確認
見送り理由知っていたものの買わなかった理由を教えてください対象者を分岐し、使う必要がない場合も含める
利用後の評価使う前の期待と、実際に使った感想はどう違いましたか利用者だけに聞く。良かった点と困った点を分ける

「おしゃれで使いやすいと思いますか」のように二つの評価を一問にまとめないようにします。また、「環境に良いので買いたいですか」と理由まで質問に入れると、こちらの仮説を肯定する回答へ寄りやすくなります。「分からない」「当てはまらない」を必要に応じて用意し、無理に評価させないことも重要です。

参加者が自分の経験や考えを共有するワークショップの様子
参加者が経験や考えを共有するワークショップの様子

ブランド・商品企画に、若者の視点を

調査の「問い」を、
次の企画につなげる。

インタビューや対話型リサーチで、選び方の背景にある価値観を探ります。調査の問いづくりから参加者募集、得られた気づきの企画への活用まで、目的に合わせて支援します。

  • 選択の理由を深掘り
  • 企画の仮説を確認
  • 次の打ち手を検討

NEC・SMBCとの共創事例と、調査・企画支援の進め方をご紹介しています。

回答を施策に変える分析表と、KPIの読み方

回答→解釈→次に確かめることを分ける。回答・観察:実際に確認できたこと、解釈:考えられる理由、次の判断:改善案と追加確認
この章の要点:回答→解釈→次に確かめることを分ける。クリックで拡大。

集計表を並べるだけで終わらせず、判断につながる形で整理します。以下は実際の調査結果ではなく、分析の書き方を示す架空例です。

仮の観察結果考えられる解釈次の行動・追加確認
名前は知っているが、特徴を説明できない回答が見られたブランド名への接触と、価値の理解が分かれている可能性接触した媒体と記憶に残った情報を聞き、説明を試す
購入者が「重ねてしまいやすい」と話した収納のしやすさが利用価値の一部かもしれない生活場面の異なる利用者にも確認し、訴求仮説にする
未購入者からサイズが分からないという声が出た魅力より購入前の情報不足が課題かもしれないサイズ比較や収納写真を追加し、理解を確認する
再購入しない人でも商品評価は良い耐久品のため、購入機会が少ない可能性買い足し時期や用途を確認し、再購入率だけで評価しない

認知率は「誰を分母にしたか」、イメージ評価は「自由回答か選択式か」、購入意向は「どの条件を見せたか」を添えます。点数が高いことと、実際の購入や継続利用は別です。変化が小さい場合は、回答数や対象構成、調査時期の違いも確認してから施策を決めます。

NPSとブランドリフトは、別の問いに答える指標

「利用者が薦めたいか」と「広告によって認識が変わったか」は分けて調べます。認知・イメージ調査の代わりに一つの指標で済ませず、今回の判断に必要な場合に追加します。

方法向いている問い計算・読み方判断の限界
NPS(Net Promoter Score)利用者の推奨意向と、その理由を継続して確認したい0〜10の回答から、9・10の割合-0〜6の割合。7・8も分母に含む認知率、実際の紹介件数、売上そのものではない
ブランドリフト調査特定の広告が認知・広告想起・比較検討へ与えた影響を確かめたい広告接触群と対照群の回答差を見る。絶対差と相対差を区別する比較設計、回答数、配信条件によって解釈できる範囲が変わる

NPSの計算例では、有効回答100人のうち9・10が45人、7・8が30人、0〜6が25人なら、45%-25%=20です。平均点とは違います。算出方法はBain & Companyの説明に基づき、人数は説明用の架空例です。スコアとともに理由を聞き、同じ利用段階・募集経路・質問文で追います。異なる国や商品、対象条件の数値をそのまま優劣の基準にしないようにします。

Google広告のブランド効果測定は、広告を見た人と表示対象だったが見なかった人の回答を比較する仕組みを説明しています。利用できるアカウントや配信条件には制約があるため、実施前に公式の利用条件を確認してください。

架空の例で肯定回答が対照群20%、広告接触群25%なら、絶対差は5ポイント、対照群を基準にした相対差は25%です。回答数や不確実性を添えずに「25%の人に効果があった」とは報告しません。また、施策前後の別々のアンケートで5ポイント上がっただけでは、広告以外の要因を除いた効果とは判断できません。

NEC・SMBCの対話事例から、背景を聞く問いを学ぶ

抽象的な評価を、経験と生活場面へ。NEC:過去・現在の経験から価値観へ、SMBCなど:一日の場面から未来の使い方へ
この章の要点:抽象的な評価を、経験と生活場面へ。クリックで拡大。

NECとのプログラムでは、参加者が自分の過去・現在を言語化し、価値観や関心を共有した後に、2030年の社会を考えました。最初から企業評価を尋ねるのではなく、参加者が何を大切にしているかを考える土台を用意しています。[実施レポート]

SMBCなどとの企画では、技術を学んだ後、現在の一日の流れから未来の日常を構想しました。抽象的な技術への賛否ではなく、生活のどの場面で関係するかを考える方法です。[実施レポート]

調査へ応用する場合は、「好きですか」という評価だけでなく、そう感じた経験や利用場面を聞きます。ただし、講義や他者との対話を経た回答には、その場の学習や相互作用が含まれます。事前の自然な認知・印象を測りたいときは、説明をする前に個別に回答してもらうなど、測定と共創を分けて設計します。

NECと実施したプログラムで、自分の経験や価値観を言語化する参加者
2024年に開催したプログラムの様子。出典:Re-Generation実施レポート。
SMBCなどと連携したワークショップで、未来の日常を考える参加者
2024年1月のワークショップ。写真掲載元:Re-Generation実施レポート(画像配信元:U-FINO)。

継続調査では、質問・対象・実施条件をそろえる

比較できる測定条件を記録して残す。対象条件:集め方と区分を記録、質問条件:文言・順番・提示物を保持、実施条件:時期・施策・販売状況を併記
この章の要点:比較できる測定条件を記録して残す。クリックで拡大。

定点調査では、調査票の文言、質問順、選択肢、対象条件、募集経路を記録します。質問を変える必要があるときは変更点を明示し、以前の結果と同じ意味の指標として扱えるかを確認します。

調査員が聞く場合は、説明の仕方や追加質問の範囲もそろえます。日本マーケティング・リサーチ協会の実査管理の資料でも、調査の手順や質問・記入方法を調査員に共有する考え方が示されています。[JMRAの実査管理資料]

録音や発言の利用は目的と範囲を事前に説明し、本人が無理なく断れる運営にします。調査への協力と、営業連絡や広告への掲載は分けて扱ってください。報告時には、対象・期間・方法・回答数と、結果が当てはまる範囲を添えます。

調査を始める前に、一枚の設計書をつくる

判断・対象・質問を一枚にまとめる。決めたいこと:調査後の判断を書き出す、聞く相手:利用経験と集め方を決める、確かめる問い:質問と結果の使い道をそろえる
この章の要点:判断・対象・質問を一枚にまとめる。クリックで拡大。

設計書には、決めたいこと、対象者の条件、知りたい背景、質問項目、分析する区分、使う部署、実施時期を書きます。予算が限られるときは、質問を増やすより、今回の判断を絞ることから始めましょう。

調査で価値の仮説が見えたら、ブランドコンセプトの作り方へつなぎます。調査全体をどの戦略判断に使うかはブランディング戦略、依頼先の比較はブランディング会社・サービスの選び方を参照してください。

新しい商品・サービスの案ができたら、現在のブランド認識を捉える調査とは分けて、案の伝わり方や使う理由を確かめます。具体的な設計と質問例は、コンセプトテストの進め方をご覧ください。

参加者が自分の経験や考えを共有するワークショップの様子
参加者が経験や考えを共有するワークショップの様子

ブランド・商品企画に、若者の視点を

調査の「問い」を、
次の企画につなげる。

インタビューや対話型リサーチで、選び方の背景にある価値観を探ります。調査の問いづくりから参加者募集、得られた気づきの企画への活用まで、目的に合わせて支援します。

  • 選択の理由を深掘り
  • 企画の仮説を確認
  • 次の打ち手を検討

NEC・SMBCとの共創事例と、調査・企画支援の進め方をご紹介しています。

コンテンツ