まちづくりのニーズ調査|施策につながる質問例と、3つの調査方法

まちづくりのニーズ調査。アンケート・対話・観察を使い分ける。地域づくりをテーマにした解説イラスト。

まちづくりのニーズ調査は、住民や利用者の行動、困りごと、求める状態を把握し、施策や空間・サービスの検討に使うための調査です。「何が欲しいか」だけを聞くと、要望は集まっても、なぜ必要か、どの人に必要かが分からないことがあります。

調査の出発点は、得た結果で何を判断するかを決めることです。本記事では、方法の選び方、対象者、質問例、分析・報告までを整理します。質問や表は、本記事で作成した例として紹介します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 NORIHITO UKON

一般社団法人Re-Generation 代表理事|若者参画・地域共創

若者参画を専門に、企業・自治体とともに都市開発・まちづくりの共創プロジェクトを企画・運営。神戸・三宮での対話を原点に、大阪・うめきた、佐賀の中心街、兵庫県三木市などで、若者の視点を地域の未来につなぐ場づくりに取り組む。

1999年生まれ。神戸大学法学部卒業後、2022年に関西電力へ入社。新ビジネス創造コース1期生として、脱炭素や社会課題領域の新規事業開発に携わり、2023年6月に一般社団法人Re-Generationを設立。

現場で得た知見をもとに、日本経済新聞社大阪本社・大阪商工会議所共催シンポジウムで登壇。全国市街地再開発協会の広報誌「CITY in CITY」vol.36の座談会にも参加し、次世代とともに進めるまちづくりのあり方を発信している。

まちづくりから始まった、右近宣人の想いとリジェネレーションの歩みを知る →

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コンテンツ

調査目的を、判断したいことに置き換える

「若者のニーズを知る」では、調査範囲が広すぎます。例えば「駅前広場の利用を増やすため、平日夕方に立ち寄らない理由を知る」とすると、対象者、聞く場面、使う結果が具体的になります。

調査前に、次の一文をつくってみましょう。

「誰の、どの場面について、何を明らかにし、どの判断に使うか」

市場調査が市場規模や競争環境などを含む広い調査を指すのに対し、ニーズ調査では対象者の行動や求める状態に焦点を当てます。名称よりも、必要な判断と方法が一致しているかを確認します。

一つの判断を、調査できる問いに分解する

ここでは「駅前の広場を、夕方に使いやすくする」という架空の検討例で考えます。「どんな広場がよいか」だけを聞くと要望が広がるため、誰が、どの時間に、何のために使い、何が妨げになっているかに分けます。そのうえで、座席配置を変えるのか、案内を直すのか、利用ルールを検討するのかという判断へ結びつけます。

判断したいこと確かめたい問い調査後に残すもの
座席の配置を見直すかどこに、何人で、どの程度滞在するか時間帯別の利用図、利用時の困りごと
案内を追加するか初めて来た人はどこで迷うか迷った地点と、必要な情報
夜間の使い方を変えるか利用者と周辺住民にどんな影響があるか利便性と生活上の懸念、確認が必要な条件

調査票を作る前にこの対応を確認すると、興味はあるものの今回の判断には使わない質問を減らせます。既存統計や過去の調査で分かることは先に確認し、新しく聞く項目を絞りましょう。

アンケート・インタビュー・観察を使い分ける

調査方法を、得たい情報で選ぶ。アンケート:共通の質問で傾向を確かめる。インタビュー:具体的な経験と理由を深く聞く。観察:実際の行動と場所の使われ方。
一つの方法だけでは分からないことを、別の方法で補う。
方法得たいこと主な注意点
アンケート行動や意識の分布、属性・利用状況による違い回答者の集まり方と質問の影響を確認する
インタビュー行動の背景、迷い、具体的な経験少人数の発言を全体の割合に置き換えない
現地観察どこで、いつ、どんな使われ方をするか行動の理由は観察だけでは分からない
グループでの対話異なる見方や案への反応他者の発言による影響を考慮する
既存資料の確認人口、施設利用、既存調査などの基礎情報時期・対象・定義が今回に合うか見る

例えば、利用者数が少ないことが既存記録で分かったら、現地観察で時間帯や使われ方を確認し、インタビューで理由を聞く方法が考えられます。広がりを確かめたい仮説ができたら、対象範囲を設計したアンケートにつなげます。

ワークショップで新しい案をつくる場合は、「現在の経験を聞く時間」と「案を考える時間」を分けると、発言の性質を整理しやすくなります。

表に出た要望と、その背景にあるニーズを分ける

「ベンチがほしい」は具体的な要望ですが、背景には休憩したい、友人を待ちたい、荷物を整理したいなど異なる目的があります。要望をそのまま設備案にせず、どの場面で困ったかを確かめると、座席以外の選択肢も検討できます。

アンケートは選択肢ごとの回答傾向を捉えやすく、インタビューは回答の理由や行動の経緯を詳しく聞くのに向いています。観察は実際の行動を確認できますが、本人の意図までは決められません。最初に少人数への聞き取りで論点を見つけ、その後にアンケートで広がりを確かめるなど、方法を組み合わせます。ワークショップで出た意見は検討の材料として扱い、それだけで地域全体の割合を示さないようにします。

対象者は、利用者だけでよいかを考える

利用者の声と、利用しない理由。利用している人:どんな場面で使うか何に困っているか。利用していない人:なぜ使わないか何が参加の障壁か。
調査目的に合わせ、まだ聞けていない人を確認する。

施設の利用者アンケートだけでは、来ていない人の理由は把握できません。地域全体の意向を知りたい場合も、特定の団体やSNSで集めた回答には偏りが生じることがあります。

対象者を、居住・通勤・通学などの地域との関係、利用頻度、生活時間、参加経験などで整理します。人数を増やすだけで偏りがなくなるわけではありません。必要な精度や比較単位に応じて、対象者の集め方を決めましょう。

全体の傾向を数量で説明する調査と、未知の理由や仮説を探す少人数の調査では設計が異なります。「何人いれば十分か」は一律に決めず、母集団、抽出・募集方法、分析目的を合わせて検討します。

回答者の集まり方が、結果の読み方を変える

施設の利用者へ配布した調査では、そもそも利用していない人の理由が見えにくくなります。SNSで募集した調査では、そのアカウントを知る人や、テーマに関心のある人に偏る可能性があります。対象にした人、募集経路、回収期間、回答数を報告書に残すことが必要です。

利用していない人にも聞きたい場合は、周辺の学校や事業所との連携、地域の別の場所での案内など、接点を増やします。それでも回答しなかった人の意見は分からないため、回答者の属性と地域の人口構成等を比較し、読み取りの範囲を明記します。回収数が多いことだけで代表性を判断しないようにしましょう。

まちづくりアンケートの質問例

以下は、駅前広場の使われ方を検討するための質問例です。実際には、対象地域の事情に合わせ、少人数で分かりにくい質問がないか事前に確認します。

項目質問例設計のポイント
地域との関係この駅周辺との主な関わりを教えてください居住・通勤・通学など複数の関わりを考慮
利用頻度過去1か月に、この広場を利用しましたか対象期間を明示する
利用場面直近に利用したとき、何をしていましたか通行・待ち合わせ・休憩などを区別
利用時間そのとき、どの時間帯に利用しましたか目的に必要な区分で聞く
困りごと利用中に困ったことはありましたか「困らなかった」も選べるようにする
非利用理由利用しなかった主な理由を教えてください非利用者だけに聞く分岐を設ける
改善への期待使いやすくするために変えてほしい点はありますか自由記述で、選択肢以外の意見も受ける

「座る場所が少なく、暑いと感じましたか」のように二つの内容を一問に入れると、どちらへの回答か分からなくなります。「便利な交流施設があれば利用しますか」のように、好ましい評価を含む聞き方にも注意します。

年齢、性別、居住地などの属性は、分析に必要な範囲で聞きます。調査票の冒頭には、実施主体、目的、利用方法、回答にかかる時間の目安、問い合わせ先などを示します。

誘導や答えにくさを減らす、質問の直し方

避けたい質問例見直す理由修正例
魅力的な広場の整備に賛成ですか評価を先に含めている現在の広場について、改善が必要だと思う点はありますか
安全で便利な駅前だと思いますか安全性と利便性が混ざっている安全性と利便性を別々に尋ねる
普段よく利用しますか期間と頻度の基準が曖昧過去1か月に利用した回数を尋ねる
どんなイベントに参加したいですか参加する前提になっている参加意向を確認してから、内容や条件を尋ねる

本調査の前に、想定する回答者に近い人へ試しに答えてもらい、言葉の意味、回答時間、選択肢の不足を確かめます。「利用したことがない」「分からない」「その他」なども、質問に応じて用意します。自由記述では個人が特定される情報を書かないよう案内し、公表時の扱いを決めておきます。

インタビューは、最近の具体的な経験から聞く

「理想のまちは何ですか」という問いだけでは、抽象的な意見になりがちです。まず実際の行動を聞き、その理由や条件を確かめます。

  1. 最近この場所を訪れたのは、いつ、どんな用事でしたか。
  2. 来る前に、何を調べたり、誰と相談したりしましたか。
  3. 到着してから帰るまで、どのように過ごしましたか。
  4. 途中で迷ったこと、不便だったことはありましたか。
  5. そのとき、ほかにどんな選択肢がありましたか。
  6. 次に同じ用事があるとき、何を重視して場所を選びますか。

回答を急いで評価せず、「そのときのことをもう少し教えてください」と具体化します。参加者が言っていない理由を、質問者が先に当てはめないことが大切です。

録音、写真、発言の引用を行う場合は、目的と使い方を事前に説明します。答えにくい質問を無理に続けず、回答しない選択を認めます。

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観察したことと、解釈したことを分ける

プロジェクトの概要:Lakeside Hokuzanは、佐賀の北山湖周辺の自然を活かした体験・滞在の拠点です。地域共創コミュニティ「サガつく!」では、2025年9月17〜18日、12名が4チームに分かれ、大学生の利用を想定して現地体験と活用モデルの検討を行いました。ANDCOの協力を得て施設の説明や体験を企画案につなげた取り組みです。出典:Lakeside Hokuzan活用モデル検討プログラム。企画提案までの記録であり、来訪者数や売上が増えたことを実証した事例ではありません。

Lakeside HokuzanでANDCOによる施設説明を聞く参加者
Lakeside Hokuzanの活用検討に向けた施設レクチャー。出典:リジェネレーション「サガつく!」活動レポート。 事例の詳細を読む

現地で見た行動や聞いた言葉は、そのまま課題の結論にはなりません。次の表のように、事実、解釈、仮説、追加の確認を分けます。

区分記入例
観察したことある時間帯に、日陰のベンチへ利用が集中していた
解釈日差しを避けたい利用者がいた可能性がある
仮説日陰で座れる場所を増やすと、滞在しやすくなるかもしれない
追加の確認別の天候・時間帯でも観察し、利用者に理由を聞く

サガつく!のLakeside Hokuzanでの活動は、現地体験を企画へつなげた例です。同様の工程を調査に使う場合も、参加者の気づきと、対象者全体の需要を分けて扱います。

公共空間の把握には、国土交通省のまちなかの居心地の良さを測る指標も参考になります。自分たちの場所を継続的に改善するために、利用の状態を確かめる視点を持てます。

集計・分析では、割合の前に分母と条件を確認する

アンケートでは、有効回答数、質問ごとの回答数、複数回答かどうかを示します。全回答者の結果と、特定の利用者だけに聞いた質問の結果を、そのまま比べないようにします。

属性別に比較するときは、各グループの人数を確認します。少人数の差を大きな傾向として扱わず、回答の理由や他の資料と合わせて解釈します。自由記述は、似た内容をまとめるだけでなく、少数でも企画の重要な条件に関わる意見を残します。

AIや集計ツールを使う場合も、元の回答との照合が必要です。要約で意見の違いが消えていないか、発言していない内容が加わっていないかを確認します。外部ツールに渡すデータは、調査時に説明した利用範囲と組織の運用ルールに合わせます。

集計結果と、説明のための仮説を混同しない

夕方の満足度が低かったとしても、時間帯が原因とすぐには言えません。回答者の利用目的、年代、滞在場所なども違う可能性があります。まず全体の傾向を確認し、次に調査目的に関係する区分で比較します。回答数の少ない区分は、割合だけを大きく表示せず、実数も添えます。

自由記述は、内容ごとに分類し、分類の基準と複数分類の扱いを記録します。多かった意見と、件数は少なくても利用上の大きな支障を示す意見を分けて読むことが大切です。数字だけでは分からない点は、追加の聞き取りや現地確認の候補として整理します。

報告書は、調査結果と提案を分ける

調査報告は、事実と提案を分ける。事実:回答・発言・観察の記録。解釈:何が読み取れ何は不明か。提案:次に試す案とその根拠。追加確認:残る疑問と検証する方法。
調査結果だけで、施策の効果まで断定しない。

報告書には、目的、対象者、募集・実施方法、期間、回答数、主な結果、解釈上の限界、次の検討事項を記載します。「回答者が述べたこと」と「企画者が提案すること」を分けると、読み手が根拠を判断できます。

例えば、利用しない理由として移動の不便さが挙がっても、すぐに交通サービスの新設を結論にしません。どの経路・時間帯が問題か、代替手段があるか、他の条件が関わるかを確かめます。

調査後は、何を変えるか、何を追加で調べるか、いつ見直すかを決めます。参加者への結果共有も、次の協力を得るための重要な工程です。

調査結果を改善へつなぐ記入例

項目架空の記入例
分かったこと夕方の回答者から、待ち合わせ場所が分かりにくいという意見が出た
まだ分からないこと初めての来訪者にも同じ困りごとがあるか
次に確かめること案内を仮設し、迷う場所や問い合わせの変化を見る
判断する人と時期施設管理者が試行終了後に案内の配置を検討する

このように事実、未確認事項、次の行動を分けると、調査が報告書の作成だけで終わりにくくなります。リジェネレーションのうめきたのワークショップも、若者が訪れ活動する条件を対話で検討した事例として参考になります。利用意向の統計調査とは性質が異なるため、知りたいことに合わせて方法を選びます。

公開調査の読み方:南吹田駅周辺のアンケート

吹田市は、南吹田駅周辺の緑化に関するニーズを把握するため、2020年に周辺の18歳以上の住民1,200人を無作為に抽出し、郵送・ウェブで回答を集めました。市の公開ページでは504件の回答、調査票、調査結果を確認できます。出典:吹田市の調査概要。リジェネレーションの実施事例ではありません。

この例から確認したいのは、質問だけでなく、地域、対象年齢、抽出方法、期間、回収方法が示されていることです。他地域の回答割合をそのまま自地域の需要と扱わず、「どの人の結果か」をそろえて読みます。

ペルソナと実際の回答者は、同じではない

ペルソナは、利用者の行動や目的を具体的な人物像として整理するための道具です。仮に設定した人物像だけでは、実在する利用者の需要を証明できません。調査に基づく情報と仮置きした条件を分け、異なる利用者像も検討します。アンケートで分布を確認し、具体的な経験から理由を読む工程と組み合わせると、企画の前提を点検できます。

地域の調査と、商品・サービスの調査を相談する

まちづくりや公共空間について若者の声を取り入れたい場合は、まちづくり・地域共創支援をご覧ください。商品・サービスの選択理由や価値観を深く知りたい場合は、Z世代マーケティング・リサーチ支援が相談先になります。

調査で見つかった論点を対話へつなげたい方には、ワークショップの進め方とビジョン策定も役立ちます。

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制作・参照情報

本記事は、公開中の実施レポートと、本文中に示した自治体・公的機関等の資料をもとに構成しています。比較表や質問例は企画検討のための整理で、特定の事業の成果を保証するものではありません。リジェネレーションの団体情報・事業内容もご覧ください。

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