若者向けの情報発信を考えるとき、「Z世代ならSNS」という一言で媒体を決めてしまうことがあります。しかし、短く話題を知るとき、移動中に耳で聞くとき、背景を深く読むときでは、選ばれる媒体も受け取り方も変わります。テレビ、ラジオやポッドキャスト、書籍・雑誌、ウェブ記事、SNSは、互いを単純に置き換えるものではありません。
媒体名や利用率だけでなく、いつ、何を知り、次に何をする場面なのかを分けて考えましょう。この記事では、総務省と文化庁の公的調査が扱う範囲を確認しながら、テレビ・音声・出版・オンラインの役割を一つの導線として設計し、若者本人に確かめる方法を紹介します。
Z世代のメディア接触は、媒体名より「何をする場面か」で分ける

メディア接触を考えるときは、「若者が使う媒体」を一つ選ぶのではなく、行動の流れを分けます。最初にテーマを見つける、概要をつかむ、背景を確かめる、家族や同僚と話す、申込みや購入をする――それぞれで必要な情報量と使える時間が違います。
| 場面 | 媒体の役割例 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 短時間で話題を知る | SNS投稿、短い動画、番組の告知 | 何が自分向けだと分かるか |
| 移動中・作業中に知る | ラジオ、ポッドキャスト、音声配信 | 画面を見ずに理解できるか |
| 背景や根拠を確かめる | 書籍、雑誌、新聞、長いウェブ記事 | 出典や全体像へたどり着けるか |
| 周囲と共有する | テレビ番組、記事、切り抜き、URL | 何を共通の話題にできるか |
これは媒体の固定的な優劣ではなく、役割を考えるための仮説です。たとえばテレビをリアルタイムで見なくても、番組由来の映像を配信やSNSで知ることがあります。書籍を紙で読まなくても、著者のインタビューを音声で聞いた後に電子書籍へ進むことがあります。接触経路とコンテンツの出所を分けて聞く必要があります。
年代だけでなく、通学・通勤時間、通信環境、興味の強さ、家庭や友人との会話、アクセシビリティも選択に影響します。「Z世代だから」ではなく、対象者の生活時間と目的を確認しましょう。 時間の長短だけでなく得られる価値を考える視点は、Z世代のタイパと情報の受け取り方でも整理しています。
公的調査を読むときは、テレビ・音声・出版・ネットの定義をそろえる

総務省情報通信政策研究所が2025年6月27日に公表した令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書は、テレビ(リアルタイム・録画)、ラジオ、新聞、インターネットなどの利用時間や行為者率、主なサービス利用を年代別に整理しています。媒体を横断して見る出発点になります。
ただし、調査の年齢区分は「10代」「20代」などであり、出生年で定義したZ世代と完全には一致しません。テレビ番組を配信で見る行為や、新聞社の記事をウェブで読む行為は、媒体の出所と接触経路がまたがります。表の項目名と定義を確認し、SNSの利用率とテレビの利用時間のような異なる指標を、そのまま順位にしないことが大切です。 SNSごとの利用率・利用時間を比較したい場合は、10代・20代のSNS利用実態で、同じ調査の対象条件と指標を確認できます。
文化庁が2024年9月17日に公表した令和5年度「国語に関する世論調査」は、全国16歳以上6,000人を対象に面接で実施し、月に1冊も本を読まないと答えた人が62.6%でした。この結果は読書行動を考える資料ですが、Z世代だけの数値ではなく、雑誌、ウェブ記事、音声など出版コンテンツ全体への接触を測るものでもありません。
公的調査を企画に使うときは、対象、調査方法、質問、時点、母数をメモし、自社の対象者とどこが一致しないかも書きます。全体傾向は仮説づくりに使い、実際の媒体選択は対象者へのインタビューや行動データで確かめます。
テレビ・音声・書籍・雑誌は、情報の深さと使う時間で役割が変わる

テレビ・映像は、場所の様子や人の動きを同時に伝え、家族や友人との共通の話題になり得ます。音声は、移動や作業をしながらでも聞け、話し手の間合いや対話を届けやすい形式です。書籍・雑誌は、章立てや特集の中で背景をまとめ、後から参照しやすくできます。
一方で、長い映像は途中で離脱される、音声は図表や固有名詞を確認しにくい、紙の本は入手までに時間がかかる、といった制約もあります。媒体の特徴だけでなく、対象者が使う状況と、制作・更新・配布の条件を合わせて選びます。
| 役割 | 向く形式の例 | 次の接点 |
|---|---|---|
| 存在を知ってもらう | 短い映像、番組紹介、SNS投稿 | 概要ページ、放送・配信予定 |
| 考え方や声を届ける | 対談音声、ラジオ、ポッドキャスト | 要点記事、関連回、登壇者紹介 |
| 背景と根拠を残す | 書籍、雑誌特集、長文記事 | 出典、索引、申込み・相談 |
| 現場の様子を共有する | テレビ・動画、写真記事 | 実施報告、次回企画 |
同じ内容をすべての媒体へそのまま複製するのではなく、それぞれの役割を決めます。短い投稿では問いを示し、音声では当事者の考えを聞き、記事では出典と要点を確認できるようにする、といった分担です。どこから入っても、次に必要な情報へ移れるリンクや案内を用意します。 各接点で使う言葉は、Z世代に伝わる言葉選びとコミュニケーションと合わせて点検し、媒体を移っても同じ企画だと分かる名前や説明を使います。
実例:対面・記事・写真を組み合わせ、体験の入口と記録を分ける

リジェネレーションとNECが2024年9〜10月に全国3か所で実施した「2030年の自分と未来社会」プログラムは、実践者によるレクチャーとワークショップを行い、後から記事と写真で内容を公開しています。参加者・メンターを含め約80人が参加したと実施報告に記録されています。

別の実践として、NTT東日本との「地域循環ミライ共創サミット」は、2025年7月13日に同社本社で実施されました。高校生から社会人までの参加者とメンターを含め約20人が、都市と地方の関係を考えるために参加。レクチャーの後、現状と理想の循環社会を図にし、今後の行動案を検討しました。

対面では質問や共同作業を行い、実施後の記事では開催条件、流れ、写真を読み返せます。ここから参考にできるのは、理解を深める場と、後から参照できる記録を分ける設計です。記事や写真を公開したこと自体が、テレビや音声より効果的だと示す事例ではありません。
これらはテレビ・音声・出版の効果を比較した事例ではありません。参考にできるのは、リアルな体験と、その内容を残すメディアの役割が違うことです。自社の施策では、告知、当日の参加、記録、次回案内のどこを各媒体が担うかを明確にし、接触後の行動を測ります。
テレビの見方の変化は若者のテレビ離れを考える記事、動画は若者の動画視聴を考える記事、SNS検索や口コミはZ世代の情報収集を捉える記事で詳しく扱っています。本稿は、それらとテレビ・音声・出版を横断して導線を考える範囲に絞ります。
若者向けの情報発信は、一本の導線として小さく検証する

最初に「20代へ新しい地域プログラムの存在を知ってもらい、詳しい記事を読んだ人が説明会を検討できる」のように、対象、伝えること、次の行動を書きます。媒体は目的の後に選び、SNS投稿、短い音声、記事、イベントなどを一列の導線にします。 説明会や体験の場まで設計する場合は、Z世代向けイベントの目的別の企画方法を参照し、参加後に持ち帰ってほしい経験を決めます。
| 確認段階 | 聞く・見ること | 改善例 |
|---|---|---|
| 発見 | どこで存在を知ったか | 入口の言葉と対象を明確にする |
| 理解 | 何が分かり、何が不足したか | 音声に要点記事、記事に図解を添える |
| 比較 | 何と比べ、誰に相談したか | 条件・費用・事例へ直接つなぐ |
| 行動 | 申込み・保存・共有で止まった場所 | 次の操作と期限を近くに置く |
インタビューでは「普段どのSNSを使いますか」だけで終わらせず、直近で同じ種類の情報を知った場面を時系列で聞きます。最初に見たもの、詳しく調べた場所、信頼できると思った理由、共有した相手、行動しなかった理由を確認します。申告だけでなく、公開後のクリック、再生、記事到達、申込みなど取得できる行動データとも照合します。
最初から全媒体へ展開せず、一つの対象と一つの導線で試します。例えば、短い紹介→要点記事→説明会という流れを公開し、対象者数人に画面を見てもらいます。分かりにくい点を直してから、音声や動画を追加します。利用率の高い媒体を選ぶだけでなく、必要な内容が次の行動まで届いたかで判断しましょう。
出典確認:2026年9月29日。本文中の図は内容を整理した説明図、アイキャッチは説明用イラストです。実際の現場写真とは区別しています。


