Z世代向けのデザインは、特定の色や流行語を選ぶことからではなく、誰がどこで見て、何を判断する制作物なのかを決めることから始めます。淡い色、余白の多い画面、写真映えする包装が、すべての若者や商品に合うとは限りません。
この記事では、企業・自治体の制作担当者に向けて、決まった企画を文字・色・写真・パッケージに落とし込む方法を整理します。コピーの修正例と実在の取り組みを分け、制作会社への依頼や社内レビューで使える確認表も紹介します。
デザインを始める前に、見られる場面と情報の優先順位を決める

制作依頼では『Z世代らしく』を、確認できる条件へ置き換えます。例えば、大学生が売場で商品を見比べるのか、就職したばかりの人がスマートフォンで案内を読むのかを決めます。年齢に加えて、予備知識、利用目的、見る距離を共有すると、文字の量や写真の役割を話し合いやすくなります。 接触する媒体と読まれる場面の整理には、Z世代のメディア接触・タッチポイントの考え方が役立ちます。
| 制作物・接点 | 先に見つけてほしい情報 | 制作時の確認 |
|---|---|---|
| 店頭のパッケージ | 商品名・種類・選び分ける違い | 隣の商品と並べ、正面から識別できるか |
| スマートフォンの商品画像 | 何の商品か・形・使う場面 | 縮小表示でも主要情報が残るか |
| イベントの案内 | 内容・対象・日時・会場 | 申込条件や次の操作を探し回らないか |
すべてを同じ大きさで置かず、最初に知ってほしいこと、比べるための情報、詳しい説明の順に整理します。ブランドとして約束する価値がまだ決まっていない場合は、先にブランドコンセプトの作り方で判断軸をそろえましょう。
コピーは、見出し・補足・操作案内の役割を分けて配置する

コピーを短くするときは、必要な情報まで削らないようにします。見出しで関心を持ってもらい、その近くに商品名や内容を補足し、ボタンや開封口のそばに操作を示す言葉を置きます。同じ文言を大きく繰り返すより、それぞれの置き場所に仕事を持たせます。 商品を知ってから公式情報を確認する流れは、Z世代の情報収集と発信物の設計を参考に、見出しから詳細へ移れるよう整えます。
下表は、配置と文言を考えるための説明用の修正例です。実在企業の原稿や、効果測定済みのコピーではありません。
| 置き場所 | 修正前の例 | 修正後の例と配置 |
|---|---|---|
| 商品の正面 | 毎日に、ちょうどいい。 | 見出しは残し、直下に「持ち歩き用ノート」を添える |
| イベントの案内 | 未来を語ろう!参加者募集中 | 「学生と考える、まちの過ごし方」を見出しにし、日時・会場・対象を別の情報欄へ |
| 詳細ページへのボタン | こちら | 「開催内容と参加条件を見る」と遷移先の内容を示す |
| 包装の開封口 | OPEN | 「ここから開ける」を、実際の切り口と矢印のそばに置く |
商品名を改行の途中で分断していないか、見出しと補足の間が離れすぎていないかも確認します。装飾文字にした見出しが読めても、条件を小さな文字へ押し込めてしまえば判断に必要な情報は伝わりません。
修正例を使う際は、商品の仕様、開催内容、リンク先、実際の開け方との一致が前提です。広告全体の訴求や届け方を検討する場合は、Z世代向け広告の改善方法と分けて進めます。 若者言葉を使うか迷う場合は、若者言葉の意味・場面と表現を比較する方法を確認し、流行語を足す前に平易な表現との伝わり方を比べます。
色には役割を持たせ、文字の可読性と区別のしやすさを確かめる

配色案には『かわいい』『落ち着く』という評価だけでなく、その色を使う目的を書きます。背景色は雰囲気、見出し色は情報のまとまり、強調色は操作や重要事項など、同じ色の役割をそろえます。淡色を使う場合も、背景の淡さと文字の薄さは別に決められます。
色だけで種類や状態を伝えない
商品の種類を青・緑で分けるなら、種類名や番号も同じ位置に添えます。申込画面のエラーも赤色だけでなく、何を直すかを文章で伝えます。W3CのWCAG 2.2「色の使用」は、情報を伝える唯一の視覚的手段として色を使わないことを求めています。これはウェブ向けの基準ですが、色に加えて言葉や形でも区別する考え方は、印刷物の点検にも活かせます。
コントラストは、文字と背景の組み合わせで見る
ウェブの通常の本文文字では、WCAG 2.2の達成基準1.4.3(レベルAA)が示す4.5対1以上のコントラスト比を確認します。大きな文字などには別の条件・例外があり、この数値だけでウェブ全体の適合を判断するものではありません。
紙のパッケージにこの数値をそのまま合否基準として当てはめず、実際の紙・印刷・照明で確認します。光沢による反射、写真の上に置いた文字、細い書体、袋の曲面による見え方まで、実物で読む工程を入れましょう。
パッケージは正面だけでなく、手に取る・開ける・片付けるまで確認する

パッケージの見た目は、実際の扱いやすさと合わせて判断します。正面で商品が分かるか、裏面の説明を読めるか、開封口が見つかるか、開けた後に必要な説明が失われないかを順に確かめます。商品写真だけでは、持ったときに指で隠れる表示や、開封時の迷いを捉えきれません。
制作時は、正面・裏面・側面それぞれの情報を一覧にします。選ぶための情報と使用上の説明の両方を残し、印刷面積の制約があれば、飾りや重複する文言から整理します。紙への変更などを案内するときも、素材名だけで環境負荷全体が小さいと言い切らず、どこを何に変更したかを具体的に示します。 環境配慮を訴求する際の選択条件は、Z世代のサステナブルな消費を考えるコラムと併せて、使いやすさや価格との関係から検討します。
商品そのものの仕様や使い方から若者と検討する段階では、Z世代と進める商品開発を参照し、今回の変更が表示・包装の範囲か、商品仕様にも及ぶかを整理してください。
制作案は実寸で試し、好み・理解・操作の結果を分けて直す

完成に近い制作案を、実際の大きさで見てもらいます。画像ならスマートフォン上の表示、包装なら印刷して組み立てた試作を使います。ここでの目的は、案を褒めてもらうことではなく、狙った情報が見つかり、必要な行動を進められるかを確かめることです。
| 確認したいこと | 試してもらう作業 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 情報の優先順位 | 最初に目に入った言葉を示してもらう | 意図した見出しとの違い |
| 商品・条件の理解 | 種類の違いや対象条件を説明してもらう | 見落とした情報、読み違えた語 |
| 操作や扱いやすさ | 詳細を開く、包装を開ける等を試す | 探した場所、手が止まった箇所 |
| 印象・好み | 好ましい点と気になる点を聞く | 理由となった色・文字・写真 |
比較では『配置は同じで文字の大きさを変える』『文言は同じで色の組み合わせを変える』など、確かめる要素をそろえます。複数案の提示順は入れ替え、説明を加える前の反応を残します。少人数で見つけた迷いは修正の手がかりになりますが、世代全体の好みや購入率を示す数字にはしません。 対象者の選び方や質問の順序は、Z世代へのインタビュー・定性調査の設計で整理しています。
最終レビューでは、採用案とともに、変えた箇所・理由・未確認事項を一枚にまとめます。重要情報の読み違いを直してから印象を整え、印刷や公開前に再度確認する。こうして制作物ごとの判断を積み重ねることが、対象者に伝わるデザインにつながります。
参考資料・出典
確認日:2026年9月27日。調査・実施の時点は本文中に記載しています。


