サステナブルマーケティングとは?消費者理解から商品・価値の伝え方へ

商品を比較する生活者と、暮らしや価値観を聞く商品企画担当者のイラスト

サステナブルマーケティングとは、顧客の暮らしや課題を理解し、環境・社会への影響を考慮した商品・サービスの価値を、継続して届けるための取り組みです。環境への配慮を広告で強調するだけでなく、商品、価格、入手しやすさ、使い続けやすさまで一緒に考えます。

「環境に配慮した商品なのに選ばれない」「調査では好意的だったのに購買につながらない」。その背景を探るには、意識と実際の選択を分けて捉えることが大切です。本記事では、商品企画・マーケティング担当者に向けて、消費者理解から価値の伝え方、小さな検証までを整理します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 / Ukon Norihito

一般社団法人Re-Generation 代表理事

2022年、神戸大学法学部卒業。在学中はNPO法人en-courageの本部メンバーとして、学生のキャリア支援に関する事業戦略・組織戦略の策定と実行に携わる。関西電力の新ビジネス創造コース1期生として入社し、脱炭素や社会課題解決に向けた新規事業開発を経験。2023年6月、一般社団法人Re-Generationを設立。

企業・自治体と若者をつなぐ対話や、次世代の学びのプログラムを企画・運営。一般社団法人Re-Generationの代表理事として、参加者自身の経験や価値観から社会の未来を考える場づくりに取り組む。

Re-Generationでは、NTT東日本と地域循環型社会を考えるプログラム、NECと2030年の自分・未来社会を考えるワークショップなどを実施。企業の取り組みと生活者の問いを結びつけ、次の企画を考える対話を大切にしている。

右近宣人の想いと、リジェネレーションの歩みを知る →

NECと若者が未来社会を考えたプログラム
NECと若者が未来社会を考えたプログラム

マーケティング・商品企画のご担当者へ

環境への共感と、商品を選ぶ条件を分けて聞く

生活者の経験から、価値が伝わる点と利用時に迷う条件を整理。若者インタビュー・定性調査で、商品や説明を見直すための問いをつくります。

  • 選んだ場面を聞く
  • 価値と提供条件を分ける
  • 次に確かめる問いを定める

支援の対象・進め方・実践事例は、サービスページでご確認いただけます。

コンテンツ

サステナブルマーケティングは、商品と届け方を一緒に考える

顧客の価値と社会への配慮。生活者の価値:使う理由・品質・、負担を考える。社会への配慮:材料・工程・働く人・、地域との関係。続く仕組み:価格・入手・利用後まで、一緒に設計

「サステナビリティマーケティング」と表現されることもあります。本記事では、生活者にとって役に立つ価値と、環境・社会への配慮を、事業として継続できる形で結びつける考え方として扱います。言葉の印象だけを変え、商品の実態が伴わない状態では、説明と体験の間にずれが生まれます。

例えば、詰め替え商品を企画するなら、容器の材料を減らす工夫と同時に、注ぎやすさ、保管場所、必要量、買える店舗、価格を検討します。利用者が使い続けにくければ、想定した利用回数に届かないかもしれません。環境面の良さを主張する場合も、実際の使われ方を含めた根拠が必要になります。

関連する考え方主な焦点企画での扱い
サステナブルマーケティング顧客価値と環境・社会への配慮を継続的に届ける商品から利用後まで、選択と継続の条件を考える
グリーンマーケティング環境面の配慮や価値どの環境側面を、どの範囲で改善するかを具体化する
エシカルな消費への対応人・社会・地域・環境への配慮を含む消費の選択生産背景や調達条件など、判断に必要な情報を提供する
CSR活動の発信企業の責任や社会との関係活動の意義と事実を伝え、個々の商品価値とは区別する

用語の使い方には重なりがあります。分類名を決めることより、どの顧客の課題を解決し、どの影響を改善し、何で確かめるのかを具体化する方が、商品企画の判断に役立ちます。

本記事の中心は、特定の世代に共通する特徴や、企業全体の非財務的価値ではありません。商品・サービスを選び、使い続ける場面で、生活者にどの価値が届いているかを考えます。若者を対象にする場合も、世代名だけでニーズを決めず、実際の経験を確かめます。 年齢を限定した意識調査と行動の違いは、若者の環境意識と行動を分けて捉える記事で確認できます。

環境への意識と購買行動の違いを読み解く

関心・意向・行動は別に見る。関心:課題や考え方に、興味がある。意向:提示された条件で、選びたいと思う。行動:実際に購入・利用し、継続したか

社会課題に関心があることと、特定の商品を買うことの間には、いくつもの条件があります。価格差を払えるか、近くで買えるか、品質を信頼できるか、家族も使えるか。購入しなかった理由を、すぐに「環境意識が低い」と結論づけないことが大切です。

消費者庁の令和7年度第2回消費生活意識調査では、エシカル消費の説明後に「興味がある」と答えた人は41.3%、「実践している」と答えた人は26.1%でした。前者は「非常に/ある程度興味がある」、後者は「よく/時々実践している」の合計です。

この調査は2025年10月2〜6日、全国の15歳以上の男女5,000人を対象にしたインターネット調査で、人口構成比に応じて割り付けています。両項目は全体集計であり、差の15.2ポイントをそのまま「関心があるのに買わない人の割合」と読むことはできません。また、実践度は回答者の自己申告で、特定商品の販売記録ではありません。

知りたいこと確かめる情報読み替えないこと
テーマへの関心関心の内容、理由、生活との関係関心が高いから、自社商品も買うはず
商品への購入意向価格・容量・入手条件を示した反応買いたいという回答を、そのまま売上予測にする
実際の購入購買記録や本人の具体的な購入経験購入されたから、環境価値だけが理由だった
継続利用買い足し、使わなくなった場面、困りごと一度試したから、長く使われる

こうした違いを踏まえると、調査結果は「どこを詳しく確かめるか」を決める材料になります。例えば説明には好意的でも、価格を示すと迷う場合、伝え方を増やすだけで解決するとは限りません。容量、初回の負担、販売場所など、商品と提供条件も検討します。 企業への共感と選択行動の違いは、非財務的価値を実施事実・受け止め方・行動に分ける記事で扱っています。

消費者理解は、具体的な購入・利用場面から始める

選ばなかった場面にも理由がある。場面:いつ・どこで・誰が、使うものか。比較:他の選択肢と、何を比べたか。障壁:価格・手間・不安・、入手しにくさ

リサーチの最初から「サステナブルな商品は好きですか」と聞くと、生活の具体的な条件が見えにくくなります。まず、最近買ったもの、途中で選ぶのをやめたもの、使わなくなったものを思い出してもらい、選択の流れを確かめます。

対象者は、商品カテゴリーを使う人と使わない人、継続している人と離れた人など、企画に必要な違いで選びます。環境に関心が強い人だけで話す場は、アイデアを深めるには役立っても、一般の顧客が迷う理由を十分に拾えない場合があります。

確認する場面質問例企画で検討すること
購入前前回はどの商品と迷いましたか。最後に決めた理由は何でしたか競合する選択肢と、決め手になった条件
店頭・購入画面分からなかった表示や、調べ直したことはありましたか根拠の見せ方、比較しやすさ
使用中使いにくかった場面を具体的に教えてください容器、保管、手入れ、家族との共用
買い足し・離脱次も同じものを買いましたか。変えた場合は何がありましたか入手場所、在庫、価格、継続する負担
利用後残った容器や部品をどう扱いましたか回収・修理・再利用の条件と実際の行動

発言は、本人が経験した事実と、まだ試していない想像に分けて記録します。「回収に協力したい」と「先月、対象容器を店舗へ持っていった」では、企画の根拠としての使い方が違います。前者からは期待を、後者からは実際に参加できた条件を探ります。

調査方法や募集条件を詳しく設計したい場合は、Z世代リサーチの進め方も参考になります。本記事では、その結果を商品価値や提供条件へ反映する判断に重点を置きます。 定量的な資料を併せて使う場合は、Z世代の統計・調査データの確認点も参照してください。

マーケティング・商品企画のご担当者へ

商品価値と説明の仮説を、生活者の声で確かめる

価格・使い方・環境への説明を含む体験案を、対象者との対話で確認。好意的な反応と実際に利用する条件を分け、改善の論点を整理します。

  • 対象と体験案を整理する
  • 伝わり方と疑問を聞く
  • 利用条件を確かめる

支援の対象・進め方・実践事例は、サービスページでご確認いただけます。

生活者のメリットと環境・社会の価値を結びつける

良いことを、使う価値につなぐ。価値:生活の何が、助かるのか。条件:価格・品質・手間に、無理がないか。根拠:配慮した対象と、確認できた事実

価値の伝え方を考えるときは、「生活者のどんな課題に役立つか」「環境・社会のどこに配慮したか」「それを何で説明できるか」を並べます。環境面の主張だけを前面に置いても、商品としての使い道や品質が分からなければ比較しにくいままです。

企画例生活者にとっての価値同時に確かめる条件
詰め替え商品使い慣れた容器を繰り返し使える詰め替えやすさ、容量、衛生上の条件、材料削減の比較範囲
修理して使うサービス気に入ったものを使い続けられる修理費、期間、対応できる故障、交換部品の供給
地域の原材料を使う商品産地や作り手を知って選べる調達範囲、品質、供給の安定性、価格
回収付きの販売使い終わった後の扱いを選べる回収対象、場所、手間、回収後の処理を確認できるか

これらは商品設計を考える例です。詰め替え、修理、地産、回収という仕組みがあるだけで、製品全体の環境負荷が必ず小さいとはいえません。材料、輸送、使用回数、回収後の工程など、主張したい価値に関わる条件を確認します。

社内では、広告で解決できることと、商品や運用を変える必要があることを分けます。品質への不安に試験結果を示すのは情報の改善です。一方、容器が扱いにくい、回収場所が遠いという課題は、説明を増やすだけでは解消しません。担当部門が変更できる範囲を決め、企画案に反映します。

説明文は「誰が/どの場面で/何に役立つか」を先に書き、環境・社会への配慮を具体的な事実として続けると整理しやすくなります。例えば修理サービスなら、対応できる故障や申込方法を示したうえで、交換部品や利用後の扱いを説明します。気持ちの良い表現と、利用の判断材料を両立させましょう。 案内の読み取り方は、Z世代に届くデザイン・コピーの確かめ方に沿って、実際の場面で検討できます。

グリーンウォッシュを避け、確かめられる表示にする

範囲・条件・比較を明らかに。範囲:商品全体か、包装・一部工程か。根拠:測定・評価方法に、アクセスできるか。比較:何と・いつ・どの条件で、比べているか

グリーンウォッシュとは、環境への配慮について、実態よりも良い印象を与えるような発信を指す言葉です。意図的な誇張だけでなく、対象範囲や前提を省いた結果、受け手が別の意味に理解してしまうことにも注意します。

環境省は2026年3月に「環境表示ガイドライン」を改定しています。主に自己宣言による環境表示を対象に、曖昧な表現を避け、説明と検証可能な情報を用意し、ライフサイクル全体や適切な比較を考慮することを整理しています。これを、すべての商品への一律の認証義務や、あらゆる社会的主張の共通基準と読み替えないようにします。

確認箇所起こりやすいずれ改善の方向
対象範囲包装の改善を、製品全体の改善のように見せる改善した部位・工程を主張の近くに記す
比較基準が違う値を、同じ条件の比較に見せる比較対象、単位、期間、算定範囲をそろえて示す
将来目標予定や目標を、達成済みの実績に見せる実績、試行中、目標を分け、期限と進捗を添える
認証・マーク一部の認証を、すべての性質の保証に見せる認証の対象・範囲と、有効な条件を確認する
利用後回収できることを、すべて再資源化されるように見せる対象品目、受入条件、回収後の工程を説明する

主張の確認は、公開直前に広報だけで行う作業にせず、企画の早い段階から商品担当や品質・法務などの関係者と進めます。根拠資料が手元にあることと、受け手が判断できる説明になっていることの両方を確認します。

海外向けの販売や広告では、対象市場のルールを別途確認する必要があります。国内のガイドラインを参考にしたことだけで、他国の制度への適合が確認できたとはいえません。表示条件や仕様が変わった場合に、商品ページ・包装・営業資料を更新する担当も決めておきます。

実践例から学ぶ:企業の説明と、生活者の価値観をつなぐ

対話で、価値の前提を確かめる。NECとの実践:経験・関心から、未来社会を考える。NTT東日本との実践:現状と理想を、図と言葉にする。商品企画への応用:得た気づきを、検証する仮説へ

NEC:個人の経験や関心から、未来社会を考える

NECとRe-Generationは2024年9〜10月、関西・九州・東北で「社会価値創造型企業 NECと考える、2030年の自分と未来社会」を開催しました。社員のレクチャーに加え、参加者が過去・現在の経験や興味を言語化し、それをもとに社会の課題や未来像を考えるワークを実施しています。出典:NECとの実施レポート。

NECとの未来社会を考えるプログラムの実施写真
NECとの未来社会を考えるワークショップの実際の活動写真。実施内容・写真の出典

商品企画へ応用するときのヒントは、最初から抽象的な社会課題への賛否を聞かず、本人の経験や大切にしていることから入る点です。そこで分かった価値観は、商品やサービスの利用場面を考える材料になります。ただし、未来像を語った発言を、その商品の購入意向へ置き換えることはできません。

NTT東日本:現状と理想の違いを見える形にする

NTT東日本との地域循環ミライ共創サミットで社会の仕組みを考える参加者
NTT東日本との地域循環ミライ共創サミットの実際の活動写真/写真・概要の掲載元

2025年7月13日、東京のNTT東日本本社で開催した「地域循環ミライ共創サミット」には、高校生から社会人までの参加者とメンターを含め、約20人が参加しました。都市と地域の循環について学び、現状と理想の社会モデルを図に整理し、次に取れる行動を考えました。生活の経験を社会の仕組みと結び付け、実際に関われる条件を言葉にする点が、生活者を理解する対話の参考になります。出典:NTT東日本との実施レポート。

ここから商品・サービスの検討へ応用できるのは、現状と理想を別々に示す方法です。例えば回収サービスを考えるなら、今どこで手間がかかるのか、理想ではどうしたいのかを分けると、改善すべき接点の仮説が立ちます。この回収サービスへの応用は本記事の企画例であり、同サミットで検証した実績ではありません。

これらは、生活者の価値観や未来の希望を言葉にする対話・共創の事例です。購買率、売上、ブランド評価の改善を実測した事例として紹介しているわけではありません。対話から得た示唆は、対象顧客や実際の提供条件で、次に確かめる仮説として使います。 環境の学びを日常の活動へつなぐ具体例は、若者とSDGsの取り組みを設計する記事で紹介しています。

一つの商品・一つの仮説から検証する

仮説を決め、小さく確かめる。仮説:選びにくい理由を、一つに絞る。試行:条件をそろえ、企画・表示を試す。判断:行動と理由を見て、次を決める

初回の取り組みでは、対象顧客、商品、改善したい場面を絞ります。「環境配慮を伝えれば売れる」では範囲が広すぎます。例えば「詰め替え方法が分からず初回購入をためらう人がいるため、使い方を確認できれば比較が進む」という仮説なら、確かめる内容が明確になります。

検証の段階確認することの例結果から決めること
理解の確認説明を読んだ人が、対象・条件・使い方を自分の言葉で説明できるか説明を直すか、企画自体の条件を見直すか
利用の試行実物や試作品で、どこに手間や不安が残るか容器、仕様、案内、サポートの改善
購入の確認価格・販売場所などの条件を含め、実際に選ばれるか訴求・提供条件・対象顧客の仮説を更新する
継続の確認次も使うか、使わなくなった理由は何か継続利用と利用後の仕組みを改善する

少人数のインタビューは理由や課題の発見に向きますが、その場の賛同人数から市場全体の需要を推定することはできません。案を比較する場合は、説明量、価格、提示順など、結果に影響する条件をできるだけそろえます。販売データを見る場合も、値引きや季節、在庫、広告量の変化を確認します。

評価は、事業面と環境・社会面を分けて置きます。購入や継続が増えたかを確認する一方で、環境面の効果は対象範囲と測定方法に沿って別に確かめます。売上が増えたことだけで社会課題の改善を証明したり、回収に参加した人数だけで再資源化量を算定したりしないようにします。

検証後は、良かった反応だけを集めず、選ばれなかった理由、利用が続かなかった条件、根拠が足りなかった説明も残します。改善する項目を絞り、担当と次回確認日を決めると、調査を企画の判断へつなげられます。

サステナブルマーケティングは、生活者に配慮を求めるだけでなく、価値を感じ、無理なく選び続けられる条件を整える取り組みです。まず一つの購入・利用場面を丁寧に見て、商品と伝え方の両方を更新していきましょう。

マーケティング・商品企画のご担当者へ

調査で得た疑問を、商品と情報の改善へ

何を聞き、どの場面の反応を記録するかを定めて、小さく仮説を確かめます。次の商品・説明の判断に使える定性調査を支援します。

  • 対象と方法を具体化する
  • 選ばれない理由も残す
  • 改善の判断材料をまとめる

支援の対象・進め方・実践事例は、サービスページでご確認いただけます。

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