サステナビリティコミュニケーションとは、環境・社会に関わる方針や取り組み、進捗と課題を関係者に伝え、疑問や意見を受け取りながら理解を深める活動です。実務では「誰の、どの疑問に答えるか」を決め、主張を裏付ける根拠と、発信後に応答する仕組みをセットで用意します。
活動報告を出しても読まれない、SNSでは説明が短くなりすぎる、質問が届いても担当部門が分からない。こうした悩みを持つ企業・自治体の担当者に向けて、対象者、根拠、チャネル、返答の設計を整理します。企業の取り組みを知ってもらう段階から、対話へ進むための具体的な方法を紹介します。

サステナビリティ推進・広報のご担当者へ
伝えたい活動を、
若者と考えるテーマへ。
Re-Generationは、企業・自治体と若者をつなぐ対話や共創プログラムを企画・運営しています。事業の背景を知る機会と、参加者自身の経験から考える場を組み合わせます。
- 若者との接点づくり
- 目的に合う対話設計
- 企画から運営まで
企業・自治体と若者をつなぐ取り組みと、目的別の支援内容をご紹介しています。
サステナビリティコミュニケーションの目的と役割

伝える内容は、環境負荷を減らす取り組みに限りません。働く人への配慮、地域との関係、事業が社会へ与える影響など、組織の活動に関わるテーマも含みます。話題を広げすぎず、今回の発信で受け手が判断できるようにしたいことを一つ定めるのが出発点です。
例えば、地域の回収活動なら「実施しました」という報告に加え、対象となる品目、回収後の扱い、参加できる場所、まだ対応できない品目を示します。読者が参加方法を選び、不明点を質問できる情報になっているかを確認します。
| 関係する取り組み | 主に担う役割 | コミュニケーションとの接点 |
|---|---|---|
| 広報・活動報告 | 活動の背景や実施内容を知らせる | 受け手の疑問を想定し、詳しい情報へ案内する |
| サステナビリティレポート | 方針・進捗・データなどをまとまった形で示す | 必要な情報にたどり着ける要約や解説を用意する |
| ステークホルダーとの対話 | 期待や懸念を聞き、意思決定に活かす | 事前に背景を伝え、対話後に検討結果を返す |
| 商品・サービスのマーケティング | 顧客の課題に合う価値を届ける | 表示の根拠や利用条件を、選択の場面で伝える |
一つの発信で、認知、信頼、購買、採用、地域との合意まで同時に達成しようとすると、情報の優先順位が曖昧になります。まず「参加方法が分かる」「活動の対象範囲を理解できる」など、受け手に起きてほしい具体的な変化へ絞りましょう。
意見を施策へ反映する一連の工程は、ステークホルダーエンゲージメントの進め方で詳しく解説しています。本記事では、その前後に必要な情報の届け方と応答を中心に扱います。
誰に伝えるかを「相手が知りたいこと」から決める

発信対象を「社会全体」「Z世代」とだけ置くと、何を説明すべきか決まりません。同じ年齢層でも、商品を使う人、地域に住む人、活動に参加する学生では関心が違います。事業との関係や、情報を必要とする場面で対象を分けます。
| 対象者の例 | 先に答えたい問い | 渡す情報の例 |
|---|---|---|
| 商品・サービスの利用者 | 自分が使うものの何が変わるのか | 対象商品、仕様、使い方、価格・利用条件 |
| 地域の住民・参加者 | 生活への影響や参加の負担はあるか | 場所・時間、対象者、影響、相談窓口 |
| 従業員 | 自分の業務で何をすればよいか | 担当範囲、判断基準、相談先 |
| 取引先 | 自社にどの対応が求められるか | 対象範囲、期限、必要な資料、協議方法 |
| 若者・学生 | 自分の生活や将来と何がつながるか | 身近な場面、考える問い、参加の選択肢 |
この表は設計例です。実際には問い合わせ記録、営業や現場の声、過去の参加者の質問を確認し、想定を更新します。広報担当だけで対象者像を作らず、日常的に相手と接している部門とすり合わせると、説明の抜けが見つかります。
例えば「資源循環の重要性を理解してほしい」という送り手の目的を、そのまま見出しにする必要はありません。参加者が困るのが分別方法なら、まず「持ち込めるもの・持ち込めないもの」を見せ、詳しい背景を続けます。専門性を落とすのではなく、相手の判断に必要な順番へ並べ替えます。
公開前に対象者に近い人へ読んでもらい、「この記事は何の話でしたか」「自分に関係する点はどこでしたか」と聞く方法もあります。「分かりやすかったですか」という感想だけより、意図した内容が伝わったかを確かめやすくなります。
何を伝えるか:活動・成果・目標を分け、根拠を添える

伝える情報は「行ったこと」「確認できた変化」「これから目指すこと」に分けます。ワークショップを開いた事実は、参加者の行動が変わった証拠とは別です。将来の削減目標も、すでに実現した成果と同じ見出しで並べると誤解を生みます。
| 表現が広すぎる例 | 書く前に確かめること | 説明の組み立て例 |
|---|---|---|
| 環境負荷を大幅に削減 | 何の負荷か、対象、期間、比較基準、算定方法 | 対象とした包装の材料使用量について、旧仕様との比較条件と確認値を示す |
| 若者に支持された | 誰の、どの反応を、どう集めたか | 参加者アンケートの対象・回答数・質問文を示し、感想の範囲で記載する |
| 地域を活性化した | 具体的な変化と観測期間はあるか | 開催内容と参加状況を報告し、地域への継続的な変化は別に追跡する |
| 持続可能な商品 | どの側面について、どこまで根拠があるか | 確認した材料・工程・利用条件を具体的に説明する |
環境に関する主張では、環境省の「環境表示ガイドライン」令和8年3月版が参考になります。主に自己宣言による環境表示を対象に、曖昧な主張を避けること、説明、ライフサイクル全体への配慮、検証に使う情報へのアクセス、適切な比較を整理しています。事業活動やイメージ広告なども対象範囲に含めています。
このガイドラインの考え方を、社会面のすべての表示や、国内外の法令の適用条件と同一視しないことも必要です。個別の表示を出すときは、商品・地域・媒体に関係するルールを担当部門と確認します。
運用では、原稿の一文ごとに資料を増やすより、「主張/対象範囲/根拠資料/確認担当/確認日」の管理表を作ると引き継ぎやすくなります。まだ把握できていない範囲はそのまま書き、更新予定が決まっている場合は時期も添えます。

サステナビリティ推進・広報のご担当者へ
発信の先に、
問いを交わせる場を。
取り組みを紹介した後、若者はどこに関心を持ち、何を疑問に感じるのか。目的に合わせた問いやワークを設計し、次の企画を考える対話を支援します。
- 若者との接点づくり
- 目的に合う対話設計
- 企画から運営まで
企業・自治体と若者をつなぐ取り組みと、目的別の支援内容をご紹介しています。
チャネルを選び、短い発信から詳細情報へつなぐ

チャネルは「流行しているか」より、「相手がどこで情報を必要とするか」で選びます。短い投稿、詳しいWebページ、対面の説明会を同じ文章で埋める必要はありません。それぞれが次の行動へ案内する役割を持つようにします。
| チャネル | 向く役割 | 用意したい接続 |
|---|---|---|
| SNS・短い動画 | 身近な場面から取り組みを知る入口 | 対象範囲を省きすぎず、詳細ページへの導線を置く |
| 自社Web・活動レポート | 背景、方法、根拠、課題を継続して確認する | 更新日、参照資料、質問先を分かる位置に置く |
| 広報誌・紙の案内 | 地域や現場で情報を受け取る | 電話なども含め、対象者が使える問い合わせ方法を示す |
| 説明会・ワークショップ | 疑問や解釈の違いをその場で確かめる | 事前資料、発言の扱い、後日の回答方法をそろえる |
| 営業資料・接客 | 具体的な選択や利用判断を支える | 現場が説明できる条件と、確認が必要な質問の連絡先を用意する |
例えば回収活動を案内する場合、SNSには対象と参加方法の要点を置き、Webに対象品目、注意点、回収後の流れを載せます。会場では同じ内容を短い掲示にし、スタッフ用には判断しにくい品目の確認先を用意する、と分担できます。
短くする過程で大切な条件を落とさないよう、見出し、画像、本文、リンク先を一続きで確認します。「詳しくはリンク先へ」と書くだけで、目立つ主張の誤解が解消されるとは限りません。対象商品や比較範囲など、判断を左右する条件は主張の近くにも示します。
複数の媒体を使うほど更新漏れが生じます。最新情報を管理するページと責任者を決め、条件変更時に直す媒体を一覧化しておきましょう。アクセス数は入口の届き方を示す情報として使い、理解や信頼の獲得まで証明する指標とは分けます。
発信後の質問や批判を、返答と改善につなげる

対話につながる発信には、返答の仕事が伴います。窓口だけ置き、問い合わせ先で答えを確認できない状態にしないよう、広報、事業、サステナビリティ、現場の役割を公開前に整理します。
質問は、情報不足による疑問、事実確認が必要な指摘、活動そのものへの懸念、個別の相談などに分けます。すべてにその場で結論を出す必要はありません。確認が必要な場合は、何を確認しているかと返答の見通しを伝え、約束した期限に状況を知らせます。
| 届いた内容の例 | 最初の対応 | その後の改善 |
|---|---|---|
| 対象品目が分からない | 条件を確認して案内する | 案内ページと会場掲示に同じ説明を追加する |
| 削減率の比較対象を知りたい | 算定担当と根拠資料を確認する | 対象期間・比較基準・測定範囲を見える位置へ補う |
| 地域の負担が増えないか | 懸念の具体的な場面を聴く | 担当部門で影響を検討し、対応と残る課題を返す |
| 誤った数値が掲載されている | 元資料と掲載箇所を照合する | 必要な訂正を行い、変更点と日付を示す |
否定的な意見を単に「説明不足」と片づけると、活動自体を見直す必要性を見落とします。分かりにくかったのか、条件が利用者の生活に合わないのか、根拠が不足しているのかを分けて考えることが重要です。
公開して答える場合も、投稿者の名前や個別事情を無断で紹介しないようにします。共通する質問は個人を特定しない形でFAQへまとめ、個別案件は本人に返すなど、情報の扱いを分けます。改善に時間がかかるものは、未対応のまま消さず、担当と次回確認日を残します。
実践例:企業の取り組みや地域資源を、参加者の問いへ変える

NTT東日本:取り組みの紹介から、地域循環の未来を考える
2025年7月13日にNTT東日本本社で開催された「地域循環ミライサミット」は、NTT東日本とRe-Generationが連携したプログラムです。地域循環型社会に関するレクチャーの後、現状の社会モデルの見える化、未来社会のデザイン、実行プランニングへ進みました。出典:NTT東日本との実施レポート。

この構成から参考にできるのは、企業の説明を受けた後に、参加者が自分の経験や考えを整理する時間を置くことです。一度説明して終わらせず、どのように受け止めたかを、図や言葉として共有できる形にしています。
三木市:地域資源を、若者が語れるテーマにする
兵庫県三木市の「市制70周年記念 若者ミーティング」では、金物、山田錦、ゴルフなどの地域資源を切り口に、高校生・大学生が地域の未来を考えました。Re-Generationはワーク設計や運営、フィードバックなどを支援しています。出典:三木市の実施レポート。
地域の魅力を説明する側にとって大切な資源も、若者にとって身近とは限りません。日常の関心と結びつく問いへ置き換え、考えるための材料を渡す設計が参考になります。企業が自社の技術や社会課題への取り組みを伝える場合にも、同じように受け手との接点を探せます。
いずれも、説明と参加者の思考を組み合わせた実践例です。ここで紹介した実施内容だけから、購買増加、ブランド価値向上、地域への定住増加などの効果を判断することはできません。自社へ応用するときは、何を確認する企画かを別に定めます。
まず一つの活動で、発信と応答の計画を作る

最初から全社の情報を整理し直すより、今後発信する一つの活動を選び、対象者の疑問に答える小さな計画を作ってみてください。活動担当と広報担当が同じ表を見ながら、公開までの準備と公開後の対応を確認します。
| 確認する項目 | 担当者が記入する内容の例 |
|---|---|
| 対象と目的 | 地域の回収活動に初めて参加する人が、品目と持参方法を判断できる |
| 伝える事実 | 実施場所、対象、回収後の扱い、対応できないもの |
| 根拠と確認 | 実施要項や処理工程の資料を事業担当が確認する |
| チャネルと導線 | 短い案内から詳細ページへ。会場でも同じ情報を提供する |
| 質問と返答 | 窓口、確認担当、返答の目安、FAQの更新者を決める |
| 振り返り | 繰り返された質問、条件の読み違い、修正した説明を確認する |
表は企画例であり、そのままどの活動にも当てはまるものではありません。特に環境効果や調査数値を扱う発信は、確認に必要な時間を見込み、説明や根拠がそろってから公開します。
振り返りでは、投稿数や閲覧数だけでなく、相手の質問がどこに集中したか、理解を確かめる問いにどう答えたか、次の行動で何につまずいたかを見ます。反応が少ない場合も、関心がないと即断せず、届ける相手や場所、説明の入口を一つずつ確かめます。
サステナビリティコミュニケーションは、立派な言葉を増やすことより、相手が判断できる情報を届け、残った疑問に向き合う仕事です。伝えた内容と受け取った声を記録し、次の説明と取り組みの改善へつなげていきましょう。

サステナビリティ推進・広報のご担当者へ
次の発信を、
対話から見直しませんか。
若者との接点づくり、企業や地域のテーマを考えるワークショップなど、目的に合う進め方を検討します。支援内容と実践事例をサービスページでご覧ください。
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