ステークホルダーエンゲージメントとは?若者との対話をサステナビリティ施策に活かす進め方

若者・企業・地域の担当者がテーブルを囲んで対話するイラスト。ステークホルダーエンゲージメントを次の施策へつなぐ。

ステークホルダーエンゲージメントとは、企業の活動に関わる人々と対話し、把握した期待や懸念を意思決定・取り組みの改善に活かしていくことです。サステナビリティ推進で若者の声を聴く場合も、企画時に「どの判断に使うか」「誰が検討するか」「いつ結果を返すか」を決めておくと、対話を次の施策へつなげやすくなります。

「若者との対話を企画したいけれど、何を聞けばよいか分からない」「意見は集まったものの、社内で活かし切れていない」。この記事では、そんな担当者に向けて、参加者・問いの設計、実際の企業との取り組み、120分の企画例、事後の評価までを整理します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 / Ukon Norihito

一般社団法人Re-Generation 代表理事|若者参画・地域共創

2022年、神戸大学法学部卒業。在学中はNPO法人en-courageの本部メンバーとして、学生のキャリア支援に関する事業戦略・組織戦略の策定と実行に携わる。関西電力の新ビジネス創造コース1期生として入社し、脱炭素や社会課題解決に向けた新規事業開発を経験。2023年6月、一般社団法人Re-Generationを設立。

企業・自治体と若者をつなぐ対話や、次世代の学びのプログラムを企画・運営。一般社団法人Re-Generationの代表理事として、若者の経験や関心から社会の未来を考える場づくりに取り組む。

Re-Generationでは、NTT東日本と地域循環型社会を考えるプログラム、NECと2030年の自分・未来社会を考えるワークショップなどを実施。企業が伝えたいテーマと、参加者自身の問いをつなぐ設計を大切にしている。

右近宣人の想いと、リジェネレーションの歩みを知る →

NTT東日本との地域循環ミライサミットの様子
NTT東日本との地域循環ミライサミット

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ

若者の声から、
次の取り組みを考える。

Re-Generationは、企業・自治体と若者をつなぐ対話や共創プログラムを企画・運営しています。社会課題への関心を、参加者自身の経験や問いと結びつける場づくりを支援します。

  • 若者との接点づくり
  • 目的に合う対話設計
  • 企画から運営まで

企業・自治体と若者をつなぐ取り組みと、目的別の支援内容をご紹介しています。

コンテンツ

ステークホルダーエンゲージメントとは

声を聴く、組織で検討する、結果を返す。双方向の関わりを判断と次の対話につなげる。

ステークホルダーは、企業の活動から影響を受ける、または受ける可能性がある個人や集団です。従業員、顧客、取引先、地域住民、投資家など、事業やテーマによって関わる人は異なります。

GRI 2の開示事項2-29は、関わるステークホルダーと特定方法、対話の目的、意味のある関わりを確保する方法を説明する枠組みです。そのガイダンスでは、双方向性、相手の声への応答、継続性、意思決定前の関わりが示されています。これはGRI基準の文脈における説明で、すべての企業への法的義務を意味するものではありません。出典:GRI 2: General Disclosures 2021、2-29。

「ステークホルダーダイアログ」は対話の機会や方法を指す言葉として使われます。エンゲージメントを設計する際には、その対話を開く前後の関係づくりや、意見を受けた企業側の対応も考えます。

方法主な役割次に必要なこと
情報発信・説明会方針や取り組みを知ってもらう質問や懸念を受け取る機会を設ける
意識調査・インタビュー経験・認識・行動の背景を把握する調査の対象と限界を明示し、判断への使い道を決める
対話・共創ワークショップ視点の違いを交わし、課題や案を具体化する意見の記録、社内検討、参加者への返答を組み込む

各方法には役割があり、組み合わせて使えます。商品やサービスについて消費者の認識を調べたい場合は、若者へのマーケティング・リサーチとして目的と調査対象を整理すると、依頼内容が明確になります。

サステナビリティ推進で若者の声を聴く意味

今の生活者、将来の当事者、多様な経験という視点から参加者を考える。若者だけで全関係者を代表させない。

将来にわたって使われる商品や地域の仕組みを考えるとき、若者は今の生活者であると同時に、将来の影響を受ける当事者でもあります。企業側の想定と、日々の選択や困りごとの間にどのような違いがあるかを確かめる相手になります。

ただし、「Z世代は環境意識が高い」と一括りにして参加者を選ぶと、期待に沿った意見だけを集めてしまうおそれがあります。環境への関心、居住地、学業・仕事、利用経験などの違いを考え、テーマとの関係を説明できる募集条件を設けましょう。

例えば地域の資源循環を考えるなら、環境活動に参加する学生に加えて、日常の分別に負担を感じる人や、地域外へ通学・通勤する人の経験も論点になります。これは参加者設計の例です。若者だけで地域住民や従業員など全関係者の意見を代表できるわけではなく、必要な相手には別の機会を設けます。

参加者を集める前に、意見の活用先を決める

判断すること、担当部門、変更できる範囲、返答方法、記録の利用範囲を募集前に決める。

最初の打ち合わせでは、開催日より先に「対話の後、社内で何を決めるのか」を言葉にします。事業部が次の実証案を検討するのか、CSR担当が教育プログラムを見直すのかによって、問いも記録も変わります。

決めること具体化の例
検討する判断次年度の地域プログラムで、優先して試す案を決める
社内の担当推進部門が論点を整理し、事業部と地域担当が実行条件を検討する
変更できる範囲テーマや参加方法は見直せるが、当日の提案採用は約束しない
参加者への返答検討中・実施予定・今回は見送る案と、その理由を共有する
記録と利用範囲社内検討用の記録と公開レポートを分け、事前に説明する

上の表は企画を整理するための例です。社内で回答の責任を持つ人が決まっていなければ、対話の成果物は「提案集」にとどまりやすくなります。担当部門の参加や確認時期を、募集前に確保しておきます。

NTT東日本との地域循環ミライサミットの様子
NTT東日本との地域循環ミライサミット

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ

テーマと活用先から、
対話の設計を始める。

若者と接点をつくりたい、企業の取り組みを一緒に考える場を開きたい。そうした目的に合わせて、参加者との接点づくり、問い・ワークの設計、当日の進行を検討します。

  • 若者との接点づくり
  • 目的に合う対話設計
  • 企画から運営まで

企業・自治体と若者をつなぐ取り組みと、目的別の支援内容をご紹介しています。

対話を施策へつなぐ5つの手順

目的と活用先、参加者と問い、対話と記録、社内検討、返答と継続の5工程。返答で得た課題を次の目的に反映する。
対話の前後を含めた進め方の整理。実施条件に合わせて調整します。

1. 目的と、社内で使う場面を決める

「サステナビリティについて意見を聞く」から、もう一段具体化します。例えば「地域の回収活動に参加しづらい理由を知り、参加方法の改善案を検討する」とすれば、聞くべき経験が見えてきます。結論がすでに決まっている部分も共有し、どこに意見を反映できるのかを明らかにします。

2. 必要な参加者と、経験を引き出す問いを選ぶ

有識者だけで議論する場と、生活者の経験を聞く場では選び方が異なります。年齢だけでなく、テーマとの接点を整理してください。参加しにくい時間帯・場所・専門用語も確認し、事前資料は目的、背景、当日の問いが分かる量に絞ります。

3. まず個人の経験を聴き、違いを記録する

企業からの説明を短く区切り、個人で考える時間を挟んでから対話へ進みます。司会は賛同を促すよりも、「そう感じた場面はどこですか」「別の経験はありますか」と確かめます。声の大きい人の意見だけにまとめず、少数意見や懸念も残します。

4. 発言と解釈を分けて、社内で検討する

参加者の言葉、背景となる経験、運営側の解釈、提案を分けて記録します。例えば「回収場所が遠い」という発言を、そのまま「環境意識が低い」と読み替えないことが大切です。検討する案ごとに担当、追加確認、実施判断の期限を付けます。

5. 検討結果を返し、次の関わりをつくる

参加者には、何を聞き取り、どのように扱ったかを伝えます。すべてを採用する必要はありません。実施する案、追加検討する案、見送る案と理由を分ければ、企業側の判断を共有できます。返答を通じて新たな問いが生まれたら、次の対話の目的へ戻します。

抽象的になりやすい問い具体的な経験から聴く問いの例
サステナビリティをどう思いますか?最近、環境や社会のことを考えて迷った買い物はありましたか?
当社の活動は魅力的ですか?この活動に参加するとしたら、分かりにくい点や負担に感じる点は何ですか?
どんな未来にしたいですか?普段の生活で変わってほしい場面と、残したい場面を一つずつ教えてください。

録音、写真、発言の公開は用途を説明して扱いを確認し、名前を出さずに意見を残す方法も用意します。こうした運用は、参加者が意見を伝えやすい条件を整えるためのものです。

地域のステークホルダーエンゲージメント事例

三木市では問いの設計、職員への事前レクチャー、提案へのフィードバックを支援。参加者と受け止める側の双方を準備する。

地域で対話を設計する際は、行政と住民だけでなく、学校、地域の事業者、将来の地域を担う若者など、誰の経験を聞く必要があるかを考えます。三木市の実践から、参加の入口と、意見を受け止める側の準備を見てみましょう。

三木市:地域資源を題材に、若者と地域の未来を考える

三木市の若者ミーティングで説明を聞く参加者
三木市「市制70周年記念 若者ミーティング」での説明の場面。写真・出典:Re-Generation実施レポート。

三木市では、1大学・5高校から参加者を募り、グループワークで市への意見を聴いています。2023〜2024年の取り組みでは、金物・山田錦・ゴルフを題材に、協議や現場での学びを重ねました。2024年7月の市制70周年記念式典では代表チームが発表し、他チームの研究成果は会場に展示されました。三木市の公式発表と関西国際大学の報告で確認できます。

Re-Generationは、高校生が考えやすい問いの設計、市職員への事前レクチャー、当日の進行支援、発表内容へのフィードバックなどを担当しました。地域資源の説明から始めるだけでなく、若者の日常の関心とつながる問いを用意した点が、この事例の特徴です。詳しくは三木市との実施レポートにまとめています。

企画に応用できるのは、参加者の準備と、意見を受け止める職員の準備を一緒に進めることです。地域の現場を知る機会、対話、提案へのフィードバックを組み合わせると、互いの前提を確かめられます。市は意見を事業等へ可能な限り反映する方針を示していますが、個々の提案の採用・実施までは今回の資料で確認していません。実際の企画では、検討する部署と返答の時期も決めておきましょう。

地域の協力体制や役割分担を詳しく検討する場合は、地域共創の進め方も参考になります。

企業のステークホルダーエンゲージメント事例

NTT東日本は現状・理想・行動をつなぐ設計、NECは自分の経験から未来社会を考える設計。企画への応用点を示す。

ここでは、若者との対話や共創を設計する参考として、Re-Generationが企業と実施した2つのプログラムを紹介します。実施レポートで確認できる内容と、企画に応用できる点を分けて読み、企業の方針改定や環境負荷削減まで検証された事例とは区別します。

NTT東日本:現状・理想・行動をつないで考える

NTT東日本との地域循環ミライサミットのレクチャー
2025年7月の地域循環ミライサミット。写真・出典:Re-Generation実施レポート。

2025年7月13日、NTT東日本の本社で、地域循環型社会をテーマにしたプログラムを実施しました。高校生から社会人までの参加者とメンターを含む約20名が参加。地域循環型ミライ研究所からのレクチャーの後、現状の社会関係を図にし、理想の社会像と行動案を考えました。

企画に応用できる点は、課題と提案の間に「現状を共有する工程」を置くことです。最初からアイデアだけを求めず、どの関係や不便さを変えたいのかを図や言葉でそろえると、意見の前提を確かめられます。企業の施策検討へ活かす場合は、これに社内担当者の検討と参加者への返答を組み合わせます。

NEC:自分の経験から、未来社会への問いをつくる

NECと実施した未来社会を考えるプログラムのレクチャー
「社会価値創造型企業 NECと考える、2030年の自分と未来社会」。写真・出典:Re-Generation実施レポート。

2024年9〜10月には、NECと関西・九州・東北でプログラムを開催しました。社員によるレクチャーと、自分の経験・関心を言葉にするワーク、未来社会を考えるワークを組み合わせています。参加者・メンターは全体で約80名でした。

応用できるのは、社会課題を問う前に、参加者自身の経験を言葉にする時間を設けることです。「社会価値」という大きなテーマでも、暮らしや働き方など身近な切り口から考えられます。NECのブランド関連部門と実施したこの取り組みから、企業の担当部門を問わず、参加者の経験を起点に問いを組み立てる方法を学べます。

学びや次世代育成を主目的にする場合は、企業が取り組む環境教育、教材や当日の体験づくりを検討する場合は環境教育イベントの企画方法も参考になります。目的を先に分けると、対話に求める役割が明確になります。

企画例:120分の対話と、事後の工程

企画例。0〜30分で共有、30〜75分で経験の整理と対話、75〜120分で案と次の工程を共有。終了後に記録・組織内検討・返答を行う。

以下は、若者の生活経験から企業の地域プログラムを見直す場合の企画例です。Re-Generationの固定商品や、上記の事例で実際に使った台本ではありません。対象者の人数・背景や問いに合わせて時間を調整します。

時間取り組むこと残すもの
0〜15分目的、意見の扱い、変更できる範囲を共有当日の共通理解
15〜30分企業の取り組みと現状を説明、質問を受ける分からない点・確認事項
30〜45分個人で生活経験や困りごとを書き出す一人ひとりの経験
45〜75分小グループで経験の違いを聴き合う共通点、相違点、懸念
75〜100分改善の方向と、確認したい条件を考える改善案と追加の問い
100〜115分全体共有と企業側からの確認検討すべき論点
115〜120分検討担当・返答予定・次の接点を案内今後の見通し

終了後の工程も予定に入れます。例えば1週間以内に記録を整理し、2〜3週間後に関係部門で検討、1か月を目安に参加者へ状況を共有する、といった設計です。これは目安であり、実際に返答できる日程を社内と合わせてから約束します。

返答は長い報告書でなくても構いません。「いただいた声」「現在の検討状況」「次に確認すること」「担当・時期」の4項目をそろえると、参加者と社内の双方が経過を追えます。発言者を特定する情報は、公開用の記録と分けて扱います。

成果は、参加・検討・実施・返答を分けて確認する

参加と意見の幅、対話の状態、社内での検討、試行・改善、参加者への返答を分けて評価する。

参加人数や満足度は運営の振り返りに役立ちますが、それだけで施策への活用は分かりません。企画の目的に合わせ、対話の場で起きたことと、終了後に企業が行ったことを分けて確認します。

見る対象確認する例読み取る際の注意
参加と意見の幅想定した立場の人が参加できたか、異なる経験が記録されたか人数が多くても、社会全体を代表するとは限らない
対話の状態疑問や懸念を発言できたか、説明を理解できたか満足度の高さだけで意見が活用されたとは言えない
社内での検討論点を共有した部門、検討した案、担当と期限採用案の数を増やすこと自体を目標にしない
試行・改善実施した施策、追加の調査、見直した運用活動の実施と、社会・環境への効果を区別する
参加者への返答検討状況や見送り理由を伝えたか、次の接点があるか開催レポートの公開だけで返答が済んだと扱わない

例えば、回収活動の参加方法を改善したなら、対話の参加人数とは別に、その施策で何が変わったかを確認します。環境負荷や事業成果を評価する際には、目的に合う測定方法と対象期間を別途設計してください。

外部パートナーへの相談前に整理すること

目的と担当、聴きたい相手、依頼範囲、成果物、返答担当、時期と予算を整理して外部パートナーへ相談する。

外部への相談では、詳細な企画書が完成している必要はありません。次の項目について、決まっていることと一緒に検討したいことを分けると、依頼範囲をすり合わせやすくなります。

  • 対話を通じて検討したい施策と、その判断をする部門
  • 聴きたい相手の立場・経験と、参加者との接点の有無
  • 当日の説明、進行、募集、記録のうち依頼したい範囲
  • 社内検討に必要な記録・論点整理などの成果物
  • 参加者への返答を担当する人と、継続的な関わりの見通し
  • 実施時期、回数、会場やオンラインの条件、予算の目安

地域との継続的な関係づくりが目的なら地域共創・まちづくり支援、高校生・大学生などへの学びが目的なら環境教育・次世代人材育成支援が相談先になります。担当部署の名称に加え、「誰と、何を考え、その後どう使うか」で選びましょう。

ステークホルダーエンゲージメントを進める第一歩は、対話の場と、その後の社内判断を一緒に設計することです。若者の経験を丁寧に聴き、検討したことを返す。その往復を、次のサステナビリティ施策につなげていきましょう。

NTT東日本との地域循環ミライサミットの様子
NTT東日本との地域循環ミライサミット

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ

若者との対話・共創を、
企画から一緒に。

Re-Generationは、企業や地域のテーマを、若者の経験・関心とつなぐ場をつくっています。対話、地域での共創、次世代育成など、目的に合う支援からご相談いただけます。

  • 若者との接点づくり
  • 目的に合う対話設計
  • 企画から運営まで

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