企業の環境教育には、従業員が業務と環境の関係を学ぶ取り組みと、子ども・学生・地域の人へ学びを提供する取り組みがあります。どちらも「環境に関心を持ってもらう」だけで終わらず、対象者が何を判断し、行動できるようになるかを決めることが大切です。
この記事では、企業が取り組む目的、7つの実践事例、企画・社内調整・効果測定の進め方を解説します。社内研修と次世代向けプログラムを分け、自社の事業や地域との接点を活かす方法を紹介します。
企業の環境教育とは?社内向けと社外向けの違い

| 区分 | 主な対象 | 学習の目的例 | 確認する成果例 |
|---|---|---|---|
| 社内教育・研修 | 従業員、管理職 | 業務上の環境課題を理解し、判断を改善する | 業務に即した説明、改善案、実施記録 |
| 学校・親子向け | 児童・生徒、保護者 | 身近な環境と暮らしの関係に気付く | 観察記録、体験後の問い |
| 学生との共創 | 高校生・大学生など | 実社会の課題を調べ、提案する | 根拠を伴う提案、試行、振り返り |
| 地域との協働 | 住民、地域団体 | 地域の資源や課題を共有し、活動につなぐ | 関係者の役割、継続活動の記録 |
社内向けでは、購買、製造、物流、営業などで必要な知識が異なります。環境教育のeラーニングは、基礎知識の共有や各自の都合に合わせた受講に使い、職種ごとの判断は演習で確かめる、といった組み合わせが考えられます。例えば購買部門なら、価格、品質、納期、環境情報の異なる調達案を比べ、選んだ理由と追加で必要な情報を書き出す方法があります。これは研修設計の例です。受講完了率や確認テストの点数と、実務で判断できるようになったかは分けて記録しましょう。
社外向けでは、参加者の学びと企業側の目的を両方明確にします。自社製品を知ってもらうことと、複数の選択肢を比較する教育活動は目的が異なるため、教材や進行を設計する段階で区別しておきます。
自治体・企業・学校のご担当者へ
学生・若者向けの
環境教育プログラムなら、
リジェネレーションへ。
高校生・大学生を中心に、環境や地域の課題を学び、自ら考え行動する力を育むプログラムを企画・運営します。単発のワークショップから継続型の環境学習まで、目的に合わせて設計します。
環境リーダー育成
地域と学ぶ探究学習
企画から運営まで
兵庫県・山口県などの実施事例と、支援内容・進め方をご紹介しています。
企業が環境教育に取り組むメリットと、成果を見る視点
事業と環境の関係を、従業員が自分の仕事で考えられる
例えば調達担当者なら、価格だけでなく、原材料、耐用年数、修理、廃棄などを確認する視点が必要になります。教育の目的を「環境意識の向上」とだけ書くより、「比較に必要な情報を集め、理由を説明して選択できる」とすると、実務に結び付けやすくなります。
ただし、研修を行ったことだけでコストや排出量が下がったとは言えません。改善施策、実施期間、生産量などの条件を記録し、学習の成果と事業上の結果を分けて検証します。
自社の技術や現場を、社会の学びに活かせる
工場、水源、物流、地域の施設、社員の専門知識などは、企業ならではの学習資源です。普段は見えにくい製品の背景を伝えることで、参加者が暮らしと社会のつながりを考える材料を提供できます。
教材化する際は、製品の長所だけでなく、課題や制約も扱います。例えば素材の選択なら、機能、費用、回収、再利用の条件を比較すると、学習者が自分で判断する余地が生まれます。
学生・地域との対話から、異なる見方を得られる
学生との共創では、企業が想定していなかった使い方や、参加しにくい理由が見えてくることがあります。意見を集めた後に「何を検討するか」「採用できない案にはどのように返答するか」まで決めると、対話を次の活動につなげやすくなります。
信頼、採用、売上への効果は、事業目的として置くことはできても、実施だけで保証できるものではありません。教育活動の評価と、広報・採用など別施策の評価は区別します。
子ども・地域へ学びを届ける企業の取り組み事例
1.サントリー「水育」|事業に欠かせない水を教材にする
サントリーは、水と自然の大切さを伝える「水育」を展開しています。小学生と保護者が自然に触れる「森と水の学校」や、小学校での出張授業など、対象と実施場所に応じた形式を用意しています。
参考になるのは、自社の事業に関わる資源を、子どもの暮らしに近い問いへ変えている点です。企業が持つ専門知識をそのまま説明するのではなく、参加者が観察・対話できる活動へ翻訳することが重要になります。サントリーの水育
2.ダイキン「サークル・オブ・ライフ」|教材と授業の流れを用意する
ダイキンは、森林や生物多様性を題材にした環境教育プログラムを公開しています。小学校高学年向けの教材には、資料を読み、関係者の立場を考える活動などが含まれ、学校で使える授業の流れが示されています。
応用できるのは、講師が訪問する一日だけでなく、先生が前後の授業でも使える材料を整えることです。資料、問い、ワークシート、学習の狙いを揃えると、学校側が年間計画へ位置付けやすくなります。ダイキンの環境教育
3.ブリヂストン「エコピアの森」|地域で継続する活動を学びの場にする
ブリヂストンは、事業拠点の周辺などで森林整備に取り組み、地域と連携した環境教育にも活用しています。単発の見学用に新たな場所をつくるだけでなく、継続して関わるフィールドを学習へつなげる例です。
自社で応用するなら、地域の専門家、管理者、従業員がそれぞれ何を担うかを整理します。参加者を集めることと、森林を適切に管理することは別の仕事なので、活動後も現場が維持できる体制が必要です。ブリヂストンの自然共生活動
学生・若者とサステナビリティを考える企業連携事例
以下は、リジェネレーションが企業などと連携した実践です。環境を主題にしたものに加え、地域や社会の持続可能性を広く扱うプログラムも含みます。
4.NTT東日本|地域循環ミライ共創サミット
学生と企業の関係者が、地域循環や未来社会について対話した取り組みです。企業側の事業の視点と、学生が暮らしの中で感じる課題を持ち寄り、将来のアイデアを考えました。

企画へ応用する際は、企業の説明、学生の問い、共同で案を考える時間を分けると、一方向の講義に偏りにくくなります。成果としては、出された提案、残った論点、次の検討事項を記録します。サミットの実施レポート
5.NEC|2030年の自分と未来社会を考える
NECとのプログラムでは、自己の価値観と社会の変化を行き来しながら、2030年の自分と未来社会を考えました。2024年に関西・九州・東北で実施された、社会価値を広く扱う学習機会です。
環境教育に応用できるのは、社会課題を説明する前に、参加者自身の経験や関心を言葉にする設計です。企業のテーマと学習者の関心の接点を見つけることで、考える理由を持ちやすくなります。NECとの実施レポート
6.JAL・デラサール大学|国境を越えて社会課題を考える
2023年12月、JAL・デラサール大学と連携し、次世代リーダー育成プログラムをオンラインで実施しました。リジェネレーションは、プログラム開発や運営、参加者の対話の支援などを担当しています。
国際的な活動では、同じ環境課題でも、生活や産業、利用できる制度が異なります。共通の問いを置きつつ、参加者の地域の前提を共有する時間を設けることが、企画への応用点です。JAL・DLSUとのプログラム
7.ANDCO・サガつく!|自然資源の活用を学生が考える
佐賀の学生コミュニティ「サガつく!」は、ANDCOの協力のもと、Lakeside Hokuzanを舞台にフィールドワークと企画立案を行いました。実際に現地を見て、想定する利用者に合わせた活用案を考える取り組みです。
これは地域資源の活用を扱う事例であり、環境負荷の削減効果を実測した事例ではありません。環境学習へ応用するなら、利用者の楽しさに加えて、自然への影響、地域側の管理負担、移動方法も評価軸に入れると検討が深まります。活動レポート
自治体・企業・学校のご担当者へ
学生・若者向けの
環境教育プログラムなら、
リジェネレーションへ。
高校生・大学生を中心に、環境や地域の課題を学び、自ら考え行動する力を育むプログラムを企画・運営します。単発のワークショップから継続型の環境学習まで、目的に合わせて設計します。
環境リーダー育成
地域と学ぶ探究学習
企画から運営まで
兵庫県・山口県などの実施事例と、支援内容・進め方をご紹介しています。
企業の環境教育を企画・導入する6つの手順

1.対象と目的を一つの文章にする
「地域の高校生が、自社の現場を知り、地域の資源循環に関する提案を考える」など、誰の何を育てたいかを書きます。社内研修なら、対象業務と判断場面を具体化します。
2.自社で提供できる学習資源を整理する
現場、データ、社員、地域との関係、設備などを一覧にします。見学できる場所、公開できる情報、写真撮影の範囲、専門的な説明を担う人も確認します。
3.学習過程と成果物を設計する
事前の問い、現場での観察、専門家との対話、提案、振り返りをつなぎます。短時間なら比較表、継続型なら試行記録まで、使える時間に合わせて成果物を決めます。
4.社内外の役割を決める
事業部門は専門知識、人事やサステナビリティ部門は目的と社内調整、広報は公開情報、外部パートナーは学習設計や進行など、責任の所在を明確にします。募集、学校との連絡、欠席対応、当日の安全管理も担当を決めます。
5.費用を「当日」以外も含めて見積もる
主な費用項目は、企画設計、事前調整、教材制作、講師、運営、会場、移動、記録、事後の伴走です。定員や回数だけで比較せず、成果物と支援範囲を揃えて見積もりを確認します。具体的な料金は内容によって変わるため、目的・対象・期間を整理して相談します。
6.小規模に実施し、次回へ改善する
初回は、説明の難しさ、時間配分、参加者が迷う箇所を記録します。学校や地域側の準備負担も聞き取り、再実施しやすい教材と連絡手順へ整えます。
環境教育の効果は、実施・学習・行動を分けて測る

| 評価の段階 | 確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 実施 | 参加者数、参加率、継続参加 | 募集対象や母数も残す |
| 学習 | 説明の変化、根拠の使い方、成果物 | 満足度だけで代用しない |
| 行動 | 提案の試行、業務への適用 | 実施できる権限や機会も確認する |
| 事業・環境への結果 | 業務改善、資源使用量など | 他の要因と計測条件を区別する |
事前と事後に同じ問いへ答えてもらうと、考え方の変化を比較できます。数週間後などに実践状況を確認する場合は、連絡方法と回答の扱いを最初に案内します。意欲があっても、設備や予算の制約で行動できないことがあるため、参加者だけを評価しない視点も必要です。
よくある質問
自社だけで企画できますか?
社内に専門知識と学習設計・進行の担当者がいれば可能です。専門知識を対象者に伝わる教材へ変えることや、学生との対話、地域調整に課題がある場合は、外部パートナーとの分担を検討できます。
出前授業を依頼するときは何を確認しますか?
対象学年、地域、授業時間、費用、募集時期、事前準備、教材の利用条件を実施主体に確認します。企業の過去事例が、そのまま現在も同条件で提供されているとは限りません。
自治体と連携する場合の参考資料はありますか?
全国47都道府県の環境人材育成調査で地域の事業を確認し、自社の専門性やフィールドがどこで活かせるかを考えられます。比較するときは、募集対象と企業に期待される役割を分けて見ましょう。
企業の強みを、参加者が考えるための材料にする
企業の環境教育では、自社の現場や専門知識を活かしながら、参加者が問いを持ち、考えを深められる設計が求められます。具体的な進行を検討する方は環境教育ワークショップの企画ガイド、対象別の形式を比べる方は取り組み事例10選をご覧ください。
自治体・企業・学校のご担当者へ
自社の事業や地域との接点を、次世代の学びにつなげたいご担当者へ。リジェネレーションでは、高校生・大学生を中心とした環境学習や探究活動を企画・運営しています。企業と学生の対話を取り入れたプログラムを検討する際は、サービス内容と連携事例をご覧ください。
環境リーダー育成
地域と学ぶ探究学習
企画から運営まで
兵庫県・山口県などの実施事例と、支援内容・進め方をご紹介しています。



