脱炭素まちづくりの進め方|暮らしの課題を若者・地域と考える

脱炭素まちづくりをイメージしたイラスト

脱炭素まちづくりは、地域で温室効果ガスの排出を減らしながら、暮らしやすさや地域の課題にも向き合う取り組みです。若者や生活者と進めるときは、地域の排出に関するデータと、移動・住まい・公共空間を使う人の経験を合わせて、施策の選択肢と実施条件を考えます。

本稿では、自治体・地域事業者・エリア運営の担当者に向けて、暮らしの課題を捉える問い、関係者との対話、提案を小さく試す方法を解説します。神戸と佐賀の共創の過程を紹介し、公的な脱炭素まちづくり資料と照らして、地域で応用する際の判断を整理します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 / Ukon Norihito

一般社団法人Re-Generation 代表理事

神戸大学法学部卒業。在学中は神戸大学SDGs推進室の学生委員として活動し、神戸大学・IGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)連携の脱炭素社会に関する授業を履修。若者と環境課題をつなぐ活動の原点となる。

2022年関西電力 新ビジネス創造コース1期生として入社後、脱炭素分野や社会課題領域の新規事業開発に携わると同時に、2023年6月に一般社団法人Re-Generationを設立し、代表理事に就任。

神戸・瀬戸内・山口などで若者・学生の環境学習プログラムを企画・運営。JAL・NEC・日本旅行などの企業との連携も重ねながら、サステナビリティをテーマにした学びの機会づくりに取り組んでいる。

代表・右近宣人の想いと、リジェネレーションの歩みを知る →

佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note
佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

暮らしの声から、
地域の選択肢を考える。

若者がまちを使う経験を持ち寄り、地域の関係者と未来を考える場を設計・運営します。

  • 若者の利用経験を可視化
  • 地域の関係者と共創
  • 企画・対話・具体化の支援

地域の課題を若者と考える対話や、担い手の学習企画もご相談ください。

コンテンツ

地域の排出源と、暮らしの困りごとを一緒に見る

データと利用経験を合わせる。地域のデータ:排出の部門、移動・施設の利用/生活者の経験:困る場面、選んでいる理由/施策の問い:誰の何を変えるか、必要な条件

まちづくりで扱う課題を、移動、住まい、店舗、公共施設などの場面に分けてみましょう。地域の排出量や交通のデータから重点を捉え、生活者への聞き取りで、なぜ現在の選択をしているのかを確かめます。双方を持ち寄ると、施策の必要性と利用される条件を検討できます。

場面地域側で見る情報の例生活者への問いの例
移動交通手段、時間帯、目的地、便数車を選ぶのはどんな時か。別の手段で困ることは何か
住まい・施設エネルギー利用、設備、利用時間快適さを保つために何が必要か。利用者が変えられることは何か
公共空間・地域の拠点徒歩で行ける場所、滞在環境、利用者どこなら歩いて立ち寄りたいか。避ける時間帯や理由は何か

自治体が公表する排出量の資料を読む際は、対象年、区域、部門、推計方法を確認します。人流データは「いつ、どこに人がいるか」を捉える材料ですが、一人ひとりの目的や困りごとは別途確かめる必要があります。特定の利用者の声だけで地域全体を代表させないようにします。

制度や計画策定に関する技術的な資料は、環境省の区域施策編のマニュアル・参考資料を参照できます。共創の場では、参加者が考えるのに必要な情報を読みやすく選び、出典と条件を示しましょう。

若者や生活者が参加し、利用条件を話せる場をつくる

使う人の条件を捉える。対象を広げる:通学・仕事・生活、異なる使い方/場面を聞く:具体的な一日、困りごとと理由/条件を共有:使いたい選択肢、必要な支援

若者を年齢だけでまとめず、高校生、大学生、働く人、地域に通う人など、場所を使う立場を分けて考えます。住民であっても、仕事の時間帯や家族との移動、身体の状況によって利用できる選択肢は異なります。普段の会議に参加しない人にも、話を聞ける接点を探しましょう。

問いは「環境のために何をすべきか」から始めるより、具体的な利用場面を尋ねると状況を捉えやすくなります。「放課後、駅からどこへ行くか」「雨の日や夜に歩きにくい場所はあるか」「バスを使おうと思ったが使わなかったのはなぜか」と、行動の前後も聞いてみます。

  • 一日の移動や、地域で過ごす場所を地図に記す。
  • 選んだ理由、迷った選択肢、困った条件を分けて書く。
  • 時間・費用・安全・快適さなど、変える必要がある条件を確かめる。
  • 関係者に共有する際は、個人の生活場所などを必要以上に公表しない。

参加者に期待するのは、地域の課題について自分の経験を伝え、ほかの立場と考えることです。設備や交通制度の専門的な解決策を最初から求めず、分からないことを関係者に確認できる進行にします。背景を調べる方法は、脱炭素の意識調査とも組み合わせられます。

神戸・佐賀の共創から、暮らしの声を企画にする過程を学ぶ

対話を具体的な場所につなぐ。神戸:街の未来を議論、専門家と行政の視点/佐賀:道路の過ごし方、若者と地域の視点/応用の判断:対象の場所と課題、試せる活動

神戸・三宮:カーボンニュートラルと未来の街を議論

2023年2月14日の「未来社会デザインとカーボンニュートラル」では、大学生、神戸市の職員、研究者が一緒に三宮の未来を考えました。専門家と行政から情報を得て、若者が街のあり方を提案し、フィードバックを受ける構成です。開催の背景と当日の内容は神戸の実施レポートで確認できます。

地域で応用する点は、生活者の希望と、施策や空間を扱う関係者の情報を同じ場へ持ち込むことです。当日の提案と、その後に実装された施策や排出削減量は区別して扱います。

神戸・三宮で若者と行政・研究者が対話する様子
神戸・三宮で若者と行政・研究者が対話する様子。実施レポートを見る

佐賀駅南:道路でどのように過ごしたいかを具体化

2024年6月29日の第2回「Saga Z世代未来社会デザイン」では、若者が5グループに分かれ、佐賀駅南側の道路空間の使い方を考えました。佐賀県庁・佐賀YEG・サガつく!が共催し、リジェネレーションが協力。地域関係者のレクチャーと、メンターを交えたワークを組み合わせています。

この事例は公共空間の共創の実践で、脱炭素の効果測定事例ではありません。「誰が、いつ、どのように過ごすか」を言葉にし、地域の関係者と実際に試せる企画へつなぐ過程が、まちの利用条件を考える参考になります。詳細は佐賀駅南のほこみちの実施レポートに掲載しています。

佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note
佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note。実施レポートを見る

地域での応用では、事例の名称や演出だけを移すのではなく、どの場所を誰と考え、どんな条件を確かめたかに着目します。歩いて過ごす空間の魅力と、車の利用や排出の変化は、それぞれ記録が必要です。

神戸・三宮で若者と行政・研究者が対話する様子
神戸・三宮で若者と行政・研究者が対話する様子

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

若者・地域・事業者の視点を、
実施できる企画へつなぐ。

場所と課題に合わせて、参加者との接点づくり、対話、アイデアの具体化を支援します。

  • 若者の利用経験を可視化
  • 地域の関係者と共創
  • 企画・対話・具体化の支援

地域の課題を若者と考える対話や、担い手の学習企画もご相談ください。

データを使い、施策の選択肢と担当を整理する

候補を比較して担い手を決める。選択肢:移動・拠点・空間、課題に合う候補/実施の条件:権限・予算・運営、関係者の役割/確認の方法:利用の変化、排出との関係

対話で出た希望を、そのまま完成した施策案と扱わず、対象となる場面と必要な条件に整理します。「歩いて寄り道したい」であれば、歩行ルート、滞在できる場所、日陰、営業時間などに分け、誰が変更できるかを確かめます。実施できる主体と、別途の調整が必要な主体を書き出しましょう。

環境省は、令和2年度の事業で富山市と鎌倉市を対象に、移動データの可視化を踏まえた脱炭素化施策の検討を行い、報告書を公開しています。事業の概要と地域別資料は、データを施策の検討材料にする公的な参照例です。ここでは報告書の存在と検討対象を紹介しており、個別施策の削減効果を転載しているものではありません。

候補の例実施に向けて確認すること記録すること
駅から拠点まで歩きやすくする道路・土地の管理、安全、滞在設備の運営歩行や滞在の状況、利用者の声
公共交通で訪れやすくする運行事業者、接続時間、案内、費用移動手段と利用条件の変化
施設の使い方を見直す管理者、設備、利用時間、快適さ利用実態、エネルギー利用、調整事項

比較表では、生活者にとっての便益、脱炭素に関わる経路、費用と体制、実施までの課題を併記します。共創の場で扱う範囲を超える設備設計や排出量算定は、専門家・担当部署と連携する工程として整理します。

小さく試し、利用者と運営者の双方から確かめる

試行から実施条件を学ぶ。試行の単位:場所・期間・対象、試すことを絞る/当日の記録:使い方と声、運営の負担/次の判断:続ける・直す、必要な調整

候補がまとまったら、一つの場所、限られた期間、特定の利用場面で試せる内容にします。たとえば、拠点への歩行ルート案内、滞在場所の使い方、公共交通との接続を知らせる方法などです。何を確かめる試行なのかを先に決め、必要な管理者の了解や運営条件を整えます。

記録するのは来場者数だけではありません。どうやって訪れたか、どの時間に使ったか、使いにくかった理由、運営側に発生した作業も残します。利用者の満足と、継続できる運営の条件は両方確認しましょう。既存のイベントの参加者だけで判断する場合は、届かなかった利用者の声を別に聞く方法も考えます。

  • 試行の目的、場所、期間、対象、担当を企画書に記す。
  • 実施前後で比較する情報と、参加者への質問を決める。
  • 安全・管理・費用・片付けなど、継続に必要な負担を記録する。
  • 試行後の検討会で、続ける内容と変更する条件を整理する。

試行の結果を若者や地域の参加者に返し、次の検討に関われる機会を示します。提案を採用できない場合にも、権限や費用など判断の理由を伝えると、その後の企画を考える材料になります。

暮らし・参加・排出の変化を分けて評価する

評価するものを対応させる。暮らし:使いやすさ、選択肢の広がり/参加・運営:関わる人、継続する体制/排出:活動量と係数、比較条件

脱炭素まちづくりでは、暮らしがどう変わったか、関係者がどう関わったか、排出にどんな変化があったかを分けて評価します。歩行者が増えたという記録だけで、自動車から徒歩への転換を断定することはできません。移動手段や目的の変化を確認してから、排出との関係を検討します。

評価する内容根拠の例判断に必要な条件
利用・暮らし利用観察、参加者への聞き取り時間帯、天候、対象者、比較する場所
参加・継続関係者の役割、継続活動、運営記録必要な費用、担当、管理の条件
温室効果ガス対象活動量、排出係数、算定記録算定範囲、基準となる状況、同じ比較条件

地域の変化には複数の施策が影響することがあります。対象期間に他の事業があった場合も記録し、一つのイベントや対話だけの成果として説明しないようにします。暮らしの便益を保ちながら続けられるかを確かめ、次の施策に反映しましょう。

まずは、対象の場所と利用者、脱炭素に関わる課題、地域側で検討できる範囲をそろえるところから始めます。生活者が参加して課題を考え、関係者が実施条件を持ち寄ることが、地域の選択肢を具体化する土台になります。

佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note
佐賀駅南の道路空間の使い方を考える参加者。写真出典:サガつく!公式note

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

地域の課題に合う共創を、
企画の段階からご一緒に。

自治体や地域事業者の皆さまと、目的・対象・場所・検討段階を伺いながら進め方を組み立てます。

  • 若者の利用経験を可視化
  • 地域の関係者と共創
  • 企画・対話・具体化の支援

地域の課題を若者と考える対話や、担い手の学習企画もご相談ください。

実施期間や目的に合わせて、単発の脱炭素ワークショップもご覧ください。

主な参照資料:環境省の移動データを用いた検討、神戸の実施レポート、佐賀の実施レポート、地域共創の支援内容。確認日:2026年10月3日。

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