脱炭素人材育成プログラムの設計|学び・現場・提案をつなぐ進め方

脱炭素人材育成プログラムの考え方を伝える概念イラスト。実施風景の写真ではない。

若者向けの脱炭素人材育成プログラムは、各回の学びを、現場で確かめる問いと、次に提出する成果物へつなぐことで具体化できます。講師や訪問先を並べる前に、参加者が何を判断できるようになるかを定めます。

この記事では、実施担当者が使えるカリキュラムの構成例、運営の役割分担、成果物と評価を扱います。自治体の実施状況や継続型事業の比較は、全国47都道府県の脱炭素・環境リーダー育成調査をご覧ください。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 / Ukon Norihito

一般社団法人Re-Generation 代表理事

神戸大学法学部卒業。在学中は神戸大学SDGs推進室の学生委員として活動し、神戸大学・IGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)連携の脱炭素社会に関する授業を履修。若者と環境課題をつなぐ活動の原点となる。

2022年関西電力 新ビジネス創造コース1期生として入社後、脱炭素分野や社会課題領域の新規事業開発に携わると同時に、2023年6月に一般社団法人Re-Generationを設立し、代表理事に就任。

神戸・瀬戸内・山口などで若者・学生の環境学習プログラムを企画・運営。JAL・NEC・日本旅行などの企業との連携も重ねながら、サステナビリティをテーマにした学びの機会づくりに取り組んでいる。

代表・右近宣人の想いと、リジェネレーションの歩みを知る →

山口県のDAY2で秋吉台を訪れる参加者
山口県のDAY2で秋吉台を訪れる参加者

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

学び・現場・提案を、
一つの育成プログラムへ。

若者が環境課題と地域に出会い、自分の問いから企画を考えるプログラムを設計・運営します。

  • 高校生・大学生の視点
  • 目的に合う学び・対話
  • 企画・募集・運営の支援
コンテンツ

プログラムの対象と、参加者が判断する課題を決める

対象・課題・到達点を具体化する。対象:年齢・経験・、地域との関わり/課題:移動・エネルギー等、扱う排出源を絞る/到達点:根拠を示し、実行条件を提案する

脱炭素の人材育成には、地域の担い手を育てる学習、企業の排出量算定、技術・資格の専門研修など、異なる目的があります。この記事は、高校生・大学生等が地域や暮らしの課題を学び、企画・提案を考えるプログラムの設計を扱います。

到達点は「知識を身につける」から具体化します。例えば、身近な移動を題材にするなら、利用条件を調べ、排出との関係を説明し、関係者に確認すべき点を含めた案を提出できる状態です。技術的な計算や設備の判断が必要なら、その工程を担当する専門家を設計段階で確認します。

自然保全や資源循環も大切な学習の題材ですが、それだけで脱炭素の学習目標を満たすとは限りません。どの排出源や生活の選択と関わるのかを、各回の問いに入れます。

カリキュラムは、各回の課題と成果物をつなげて組む

学び・現場・提案に成果物をつなぐ。学び:生活の記録と、確かめたい問い/現場:観察・聞き取りと、根拠の整理/提案:実行条件を含む案と、追加で確かめる点

次の表は、約3か月・集合6回で構成する場合の設計例です。山口県や兵庫県の実施日程を再現したものではありません。対象者の予定、地域の条件、学習目標に合わせて調整します。

回学習課題参加者の成果物運営側の準備
①導入暮らしと排出源のつながりを考える生活の振り返りと、自分の問い共通資料、記入例、参加条件の確認
②事前調査現場で何を確かめるかを決める調べた事実と、訪問先への質問資料の出典、質問の確認、訪問先との調整
③現地学習産業・暮らし・地域の条件を観察する観察と聞き取りの記録移動、ガイド、訪問範囲、当日の担当
④案づくり課題と、解決を支える仕組みを考える対象者、根拠、協力先を含む企画案実務者からの助言、検討する条件の提示
⑤検証小さな試行や関係者への確認で案を見直す確認したこと、修正点、未確認事項受け入れ先、相談対応、必要な専門家
⑥発表判断してほしい点と、次の一歩を伝える提案書と、今後の行動計画聞き手、フィードバック方法、引継ぎ先

発表だけを最終目標にせず、質問、根拠、確認、修正がどの成果物に残るかを決めます。欠席した参加者にも、前の回の資料と成果物を参照し、チームへ戻れる方法を用意します。

現地学習では、見た事実と自分の解釈を分けて記録する

観察・解釈・追加確認を分ける。観察・聞き取り:見たもの/聞いた説明/日時・相手/自分の解釈:何が課題か/そう考えた理由/追加で確認:必要な資料/関係者/提案の条件

訪問先は、学習課題から選びます。再生可能エネルギーの施設なら設備だけでなく、運営、地域との関係、利用条件について聞く。交通なら利用者の暮らしと提供側の事情を合わせて確かめる、といった設計です。

学習シートには、見た事実・聞いた説明、自分の解釈、追加で確かめる点を分けて記入します。「良かった」「驚いた」で終わらず、何を根拠に次の案を考えるかが残ります。

現地で確認した課題が広い環境・地域の問題であれば、排出の話と直接結びつく部分、別の価値として扱う部分を整理します。見学しただけで排出量や削減効果を把握できたとすることは避け、必要な資料を次の課題にします。

兵庫県の環境リーダー育成プログラムで課題を整理する参加者
兵庫県の環境リーダー育成プログラムで課題を整理する参加者

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

各回のつながりと、
運営の役割を具体化する。

学習内容、訪問先、課題、成果物、関係者との調整を一緒に考えます。

  • 高校生・大学生の視点
  • 目的に合う学び・対話
  • 企画・募集・運営の支援

運営表に、主催・事務局・専門家・地域の担当を入れる

運営の判断と、学習の支援を分ける。主催・事務局:事業の目的/募集・日程・連絡・記録/講師・専門家:内容の確認/根拠・技術面への助言/地域・参加者:現場の条件/問い・確認・提案
業務決めておく担当・判断
募集と選考主催者の対象条件、募集経路、参加者への案内を事務局と確認
教材と課題学習設計担当が作成し、必要な分野を講師・専門家が確認
現地学習受け入れ先と事務局が訪問範囲、移動、当日の連絡体制を調整
各回の間の相談連絡先、回答する担当、相談できる内容と時期を明記
成果物と発信主催者が使用範囲を確認し、事務局が資料・写真・記録を整理
事後の引継ぎ提案を検討する部署・協力先、次の判断日を確認

全業務を同じ人に集めず、内容への助言と、日程・連絡の調整を分けます。現地訪問では、対象者に応じた参加条件、移動や施設の利用条件、天候等による変更判断も準備表に入れてください。

予算は講師費や会場費に加え、募集、教材、移動、訪問先調整、各回の間の支援、成果整理まで含めて考えます。見積もりを比較するときは、回数だけでなく担当する業務をそろえます。

山口・兵庫の実践から、各回をつなぐ方法を見る

二つの実践から、設計のつながりを見る。山口県:日常の学び → 資源の現場 → 未来への志/兵庫県:地域の学び → 案の検討 → 外部への提言/設計への応用:題材と成果物/支援の配置を具体化

山口県:日常から地域の資源へ、問いを広げる

山口県主催の2026年プログラムで、Re-Generationは事務局を担当しています。DAY1では暮らしと環境を考え、8月22日のDAY2では美祢・秋吉台を巡り、過去の石炭、現在の石灰石産業、自然の利用と保全を学びました。

8月23日のDAY3は萩を訪れ、先人の志や地域の歴史を題材に、自分が大切にしたいことを考えています。公開済みの実践から参考にできるのは、題材をつなぎ、学びを問いと企画に持ち帰る設計です。今後のアクションや排出削減は、実施済みの成果として扱いません。

山口県のDAY2で秋吉台を訪れる参加者
山口県のDAY2で秋吉台を訪れる参加者。実施レポートを見る

兵庫県:現地での学びを、提言と発表へつなぐ

兵庫県主催の「ひょうごZ世代 里山・里海環境リーダー育成プログラム」で、Re-Generationは企画・運営を担当しました。2025年5月から約5か月の学びを経て、15名が4チームで9月27日の国際フォーラムに提言を発表しています。

この事例は、里山・里海や地域循環共生圏を中心とした環境リーダー育成です。脱炭素の削減実績の事例ではなく、現地学習、各回の間のメンタリング、外部への提言をつなぐ設計の参考として紹介します。

兵庫県の環境リーダー育成プログラムで課題を整理する参加者
兵庫県の環境リーダー育成プログラムで課題を整理する参加者。実施レポートを見る

成果物の評価と、終了後の引継ぎを設計する

理解・提案・実行を分けて評価する。理解:排出源と地域条件を、説明できるか/提案:根拠・協力先・、検証する点があるか/実行:試行と継続を、終了後に確認するか

評価項目は、課題と成果物に対応させます。例えば提案書なら、対象者が明確か、根拠の出典があるか、協力を求める相手と未確認の条件が書かれているかを、同じ基準で確認します。文章や発表の上手さだけで学習成果を決めないことが大切です。

終了時には、提案を受け取る担当、試すための条件、次の相談先を残します。実行を評価する場合は、確認する時期、連絡方法、回答した人の範囲も決めます。排出への影響を評価する場合は、活動量や比較条件、必要な専門性を別途組み込みます。

プログラムの相談では、対象者、育てたい担い手の姿、扱いたい地域課題、期間、既存の協力先を共有してください。検討中の項目があっても、学習と運営の設計から一緒に整理できます。

山口県のDAY2でワークシートを使って対話する参加者
山口県のDAY2でワークシートを使って対話する参加者

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ

育てたい担い手の姿から、
プログラムを組み立てる。

対象者、期間、地域の課題を伺い、企画・募集・運営・振り返りの支援範囲をご提案します。

  • 高校生・大学生の視点
  • 目的に合う学び・対話
  • 企画・募集・運営の支援

実施期間や目的に合わせて、単発の脱炭素ワークショップもご覧ください。

主な参照資料:山口県DAY1、山口県DAY2、山口県DAY3、兵庫県の環境リーダー育成、環境教育・次世代人材育成の対応範囲。確認日:2026年10月3日。

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