若者向けの環境人材育成を始めたいが、ほかの県が何をしているのかわからない……
一度きりの講座で終わってしまい、参加者の活動が続かない……
環境リーダーの育成などを目指す脱炭素人材育成事業の企画・開催・運営に関して、上記のようなお悩みを抱えている自治体・企業の担当者様も多いのではないでしょうか。
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)では、全国47都道府県が実施している若者や大学生向けの脱炭素・環境リーダー育成事業を独自調査しました。
調査の結果、若者向けの環境人材育成事業を確認できたのは30県で、そのうち研修から実践、成果発表までが一続きになっている継続型のプログラムを持つ県は10県でした。残りの20県で実施されているのは、1回で終わる講座や見学、推進員やアンバサダーの委嘱・登録、学生団体への補助、コンテストです。
言い換えると、残りの20県には、若者向けの事業を、参加した若者が学び・実践し・成果を発表する継続型のプログラムへ広げていける余地があるということです。
上記をふまえ、この記事では次の3点をご紹介します。
- 47都道府県の調査結果:環境人材育成事業の対象者別・実施形態別の集計と、47都道府県の一覧
- 単発の環境人材育成事業と継続する事業の違い:一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が兵庫県・山口県・神戸市でプログラムを運営してわかったこと
- 自分の県で環境人材育成プログラムを設計するときに決めること:外部に委託するべきかどうか等
若者向けの環境人材育成プログラムをこれから企画する、または既存の事業を見直したいと思っている自治体・企業のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。
右近宣人1999年大阪府生まれ 神戸大学 法学部卒業
神戸大学SDGs推進室の学生委員として、神戸大学・IGES(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)連携の脱炭素社会の授業を履修。これを原点に若者・学生と環境課題をつなぐ事業に取り組む。
また、NPO法人en-courage 9期 本部メンバーとしては、全国の大学生を巻き込んだキャリア支援活動を展開。
2023年6月、関西電力で脱炭素分野の新規事業開発に関わる中、一般社団法人Re-Generationを設立し代表理事に就任。神戸市×IGES「未来社会デザインとカーボンニュートラル」、瀬戸内未来ビジョン、HYOGO GREEN NEXT等、全国の若者・学生を対象とした環境学習プログラムを企画・運営している。
調査の概要
はじめに、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が47都道府県のどの事業を、どのような方法で調べたのかをお伝えします。あわせて、事業を分類するときに使った「対象者」と「実施形態」の区分もご紹介します。
調査の対象と方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査の対象 | 47都道府県が実施している大学生を対象に含む脱炭素・環境リーダー育成の事業 |
| 調査の方法 | 各都道府県の事業の公開ページを1件ずつ開き、事業の対象者と実施形態の2軸で分類 |
| 調査の時点 | 2026年9月 |
| 出典 | 各都道府県の公開ページ(本記事の一覧表に掲載) |
| 調査主体 | 一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション) |
環境人材育成事業の対象者の5つの区分
各都道府県の環境人材育成事業の対象者は、それぞれの事業の参加者募集ページに書かれている参加資格をもとに、次の5つに分けました。
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 大学生等が中心 | 事業の対象として、大学生・大学院生・高専生・専門学校生を明示している |
| 高校生を含む若者 | 高校生から大学生までを事業の対象にしている |
| 子ども中心 | 事業の対象が小中学生・児童 |
| 一般・事業者向け | 事業の対象が県民や企業で、若者に限定していない |
| 該当事業を確認できず | 大学生向けの環境人材育成事業を公開情報では確認できなかった |
環境人材育成事業の実施形態の6つの区分
環境人材育成事業の実施形態は、それぞれの事業が参加者を募集してから、参加者が成果を発表するまでの流れをもとに、次の6つに分けました。
| 区分 | 定義 |
|---|---|
| 継続型の育成プログラム | 1つの事業の中で、複数回の研修と実践、成果発表までが継続している |
| 推進員・アンバサダーの委嘱/登録 | 県から委嘱や登録を受けた参加者が、継続的に活動する |
| 単発の講座・研修・見学 | 講座・研修・見学が1回で完結し、参加者のその後の実践活動は伴わない |
| コンテスト | 県が企画やアイデアを募集して審査する |
| 補助金・支援制度 | 県が直接実施せず、学生団体などの活動を支援する |
| 該当事業を確認できず | 大学生を対象に含む脱炭素・環境リーダー育成の事業を、公開情報では確認できなかった |
47都道府県の事業を分類するときの前提
47都道府県の環境人材育成事業を分類するにあたっての前提は、次のとおりです。
- 事業の対象者と実施形態の判定は、2026年9月時点で各都道府県の公開ページに掲載されている内容にもとづいています。
- 香川県と高知県は同じ合同研修を実施しているため、事業としては1つです。ただし、県単位の集計では香川県と高知県を2県として数えています。
- 大学生を対象に含む脱炭素・環境リーダー育成の事業を公開情報から確認できなかった県も、その県に事業が存在しないと判断したわけではありません。
なお、脱炭素そのものの意味や、カーボンニュートラルとの違いについては、以下の記事で解説しています。

若者向けの環境人材育成事業がある県は30県、うち継続型プログラムがある県は10県
ここからは、47都道府県の環境人材育成事業を、対象者と実施形態で分類した結果をお伝えします。
環境人材育成事業の対象者で分けた結果

環境人材育成事業の対象を大学生等と明示している県が18県、高校生から大学生までを対象にしている県が12県でした。47都道府県中30県(63.8%)で、若者向けの環境人材育成事業を確認できたことになります。
一方で、大学生を対象に含む脱炭素・環境リーダー育成の事業を公開情報から確認できなかった県が11県あります。また、県民や企業を対象にした環境人材育成事業はあるものの、大学生向けの事業を確認できなかった県が5県、子ども向けの事業のみを確認できた県が1県でした。
環境人材育成事業の実施形態で分けた結果

複数回の研修と実践、成果発表までが一続きになっている継続型の育成プログラムを実施している県は12県でした。次いで、1回で完結する講座・研修・見学を実施している県が11県、推進員やアンバサダーの委嘱・登録制度を設けている県が7県と続きます。
若者向けの事業がある30県のうち、継続型のプログラムを持つ県は10県
事業の対象者と実施形態の2つの軸を重ねると、今回の調査で最も伝えたい数字が出てきます。

若者向けの事業がある30県のうち、継続型のプログラムを持つのは10県です。宮城県・埼玉県・千葉県・岐阜県・愛知県・兵庫県・奈良県・鳥取県・山口県・大分県の10県が該当します。
残りの20県の事業の実施形態は、推進員やアンバサダーとしての登録が6県、1回で終わる講座・研修・見学が8県、学生団体などへの補助が4県、コンテストへの応募が2県という内訳でした。
若者向けの環境人材育成事業を実施している県は多いものの、参加した学生が学び、実践し、成果を発表するところまで事業が設計されている県は、30県のうち10県でした。継続型プログラムを実施できている10県と、それ以外の20県の差がどこから生まれるのかは、記事の後半でお伝えします。
都道府県の環境人材育成事業を実施形態で5つに分けてわかったこと
続いて、都道府県の環境人材育成事業の5つの実施形態について、それぞれの特徴と、どんな目的に向いているのかを整理します。
| 実施形態 | 特徴 | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 継続型の育成プログラム | 県が複数回の研修とフィールドワーク、成果発表までを設計する。県の運営の負担は5つの中で最も大きい。 | 地域で実際に動く人材を育てる。県が若者から政策への提言を受け取る。 |
| 推進員・アンバサダーの委嘱/登録 | 県が学生に委嘱状を出して身分を与え、その後の活動を学生の自主性に任せる。制度が単年度で終わらない。 | 継続的な広報の担い手を確保する。人材育成を制度として残す。 |
| 単発の講座・研修・見学 | 講座や見学が1回で完結する。県の準備が軽く、参加者も集まりやすい。 | 環境に関心を持つ若者を広く集める。次の事業の参加者候補を見つける。 |
| コンテスト | 県が企画やアイデアを募集して審査する。県の運営工数は比較的小さい。 | 県内の高校・大学から広くアイデアを集める。表彰で話題をつくる。 |
| 補助金・支援制度 | 県が直接実施せず、学生団体などの活動に資金を出す。活動の中身は学生団体などに委ねる。 | すでに動いている学生団体を後押しする。庁内の人手が足りない場合に選ぶ。 |
環境人材育成事業の5つの実施形態は、それぞれ向いている目的が異なります。広く関心を集めたい段階であれば単発の講座が適していますし、すでに活動している学生団体がある県なら、その学生団体を補助で後押しするほうが早く成果が出やすくなります。
環境人材育成事業を企画するうえでポイントとなるのは、事業の目的と実施形態を合わせることです。たとえば、地域で実際に動く人材を育てたい場合は、1回きりの見学会よりも、研修から実践までが続く継続型のプログラムが向いています。
推進員・アンバサダーの委嘱については、次の章で詳しく見ていきます。
ほかの県にも広げやすい「学生推進員」の制度
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が各都道府県の事業を実施形態で分類していたところ、複数の県が同じ形の制度を持っていることがわかりました。
それが、地球温暖化防止活動推進員に学生を委嘱する「学生推進員」の制度です。
地球温暖化防止活動推進員は、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)第37条にもとづき、都道府県知事や政令指定都市の市長などが委嘱する人のことです。推進員は、地球温暖化の現状や対策の重要性について住民の理解を深めたり、国や自治体が行う施策に協力したりする活動を担います。
この推進員に学生を委嘱する枠が、学生推進員です。今回の調査では、学生推進員の枠を設けている県が7県ありました。
| 都道府県 | 制度・事業名 |
|---|---|
| 栃木県 | 栃木県地球温暖化防止活動推進員(学生推進員) |
| 奈良県 | COOLサポーターズ(奈良県学生版地球温暖化防止活動推進員) |
| 徳島県 | HOP(徳島県学生地球温暖化防止活動推進員) |
| 香川県 | 香川県・高知県合同学生推進員研修 |
| 愛媛県 | 愛媛県地球温暖化防止活動学生推進員 |
| 高知県 | 高知県・香川県合同学生推進員研修 |
| 大分県 | 大分県地球温暖化防止活動学生推進員(OITA EARTH COLLEGE) |
注目したいのは、7県のうち4県が四国(徳島県・香川県・愛媛県・高知県)という点です。さらに香川県と高知県は、脱炭素ツーリズムをテーマにした合同研修を実施しており、県境を越えた連携が生まれています。
すでにある推進員の制度に学生版の枠を設けるという形であれば、県が新しい事業を一から立ち上げるより始めやすいと考えられます。四国の4県の学生推進員は、1つの県で始めた制度が隣の県へ広がった例として、参考になるのではないでしょうか。
学生推進員の制度を活かすうえでは、委嘱したあとに県が研修や活動の場を用意することも大切です。香川県と高知県が合同研修を設けているのは、委嘱した学生が活動する場をつくるためだと考えられます。
47都道府県の環境人材育成事業の一覧
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が調査した、47都道府県の環境人材育成事業の分類結果です。事業名は、各都道府県の公開ページに記載されている名称にもとづいています。
| 都道府県 | 対象者 | 実施形態 | 事業名 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 子ども中心 | 継続型 | 北海道フロンティアキッズ育成事業 | 公開ページ |
| 青森県 | 一般・事業者 | 単発 | 脱炭素経営推進プログラム | 公開ページ |
| 岩手県 | 一般・事業者 | 委嘱・登録 | いわてカーボンフリー・アクション(ICFA) | 公開ページ |
| 宮城県 | 大学生等 | 継続型 | みやぎゼロカーボン学生アンバサダー | 公開ページ |
| 秋田県 | 高校生を含む若者 | コンテスト | 脱炭素社会を実現するアイデア実践コンテスト(ECOコン) | 公開ページ |
| 山形県 | 高校生を含む若者 | 補助・支援 | 若者向け環境SDGsワークショップ開催支援 | 公開ページ |
| 福島県 | 大学生等 | 補助・支援 | 森林自己学習支援事業 | 公開ページ |
| 茨城県 | 一般・事業者 | 単発 | エコ・カレッジ | 公開ページ |
| 栃木県 | 大学生等 | 委嘱・登録 | 栃木県地球温暖化防止活動推進員(学生推進員) | 公開ページ |
| 群馬県 | 大学生等 | 単発 | 脱炭素まちづくりカレッジ | 公開ページ |
| 埼玉県 | 大学生等 | 継続型 | 埼玉大学×埼玉県「脱炭素社会を生きる」課題解決型プログラム | 公開ページ |
| 千葉県 | 大学生等 | 継続型 | 大学生と共創する脱炭素型ライフスタイル啓発 | 公開ページ |
| 東京都 | 高校生を含む若者 | 委嘱・登録 | 東京グリーン・キャンパス・プログラム | 公開ページ |
| 神奈川県 | 高校生を含む若者 | 単発 | 若年者向け脱炭素教育プログラム | 公開ページ |
| 新潟県 | 大学生等 | 委嘱・登録 | 大学生による普及啓発チーム「ゼロチャレ30士」 | 公開ページ |
| 富山県 | 一般・事業者 | 単発 | とやまカーボンニュートラル地域リーダー育成講座 | 公開ページ |
| 石川県 | 大学生等 | 単発 | 大学生と県内企業若手職員向け「脱炭素推進研修会」 | 公開ページ |
| 福井県 | 大学生等 | 単発 | 大学生のエコラーニング事業 | 公開ページ |
| 山梨県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 長野県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 岐阜県 | 高校生を含む若者 | 継続型 | ぎふエコアクション学生アンバサダー育成研修 | 公開ページ |
| 静岡県 | 大学生等 | 単発 | 県立大学の学生と進める環境アプリ「クルポ」づくり | 公開ページ |
| 愛知県 | 高校生を含む若者 | 継続型 | あいちの未来クリエイト部/かがやけ☆あいちサスティナ研究所 | 公開ページ |
| 三重県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 滋賀県 | 一般・事業者 | 継続型 | 環境トップリーダー育成 | 公開ページ |
| 京都府 | 大学生等 | 補助・支援 | 京都未来人材育成プロジェクト事業費補助金の脱炭素関連採択事業 | 公開ページ |
| 大阪府 | 高校生を含む若者 | コンテスト | おおさか環境デジタルメディア学生コンテスト | 公開ページ |
| 兵庫県 | 高校生を含む若者 | 継続型 | ひょうごZ世代 里山・里海環境リーダー育成プログラム | 公開ページ |
| 奈良県 | 大学生等 | 継続型 | COOLサポーターズ(奈良県学生版地球温暖化防止活動推進員) | 公開ページ |
| 和歌山県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 鳥取県 | 大学生等 | 継続型 | TRY!(トットリボーン!ユース) | 公開ページ |
| 島根県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 岡山県 | 高校生を含む若者 | 委嘱・登録 | アースキーパーユースチーム | 公開ページ |
| 広島県 | 高校生を含む若者 | 単発 | カーボンリサイクル実証研究拠点見学 | 公開ページ |
| 山口県 | 高校生を含む若者 | 継続型 | やまぐち未来環境アクション学生プログラム | 公開ページ |
| 徳島県 | 大学生等 | 委嘱・登録 | HOP(徳島県学生地球温暖化防止活動推進員) | 公開ページ |
| 香川県 | 大学生等 | 単発 | 香川県・高知県合同学生推進員研修 | 公開ページ |
| 愛媛県 | 高校生を含む若者 | 委嘱・登録 | 愛媛県地球温暖化防止活動学生推進員 | 公開ページ |
| 高知県 | 大学生等 | 単発 | 高知県・香川県合同学生推進員研修 | 公開ページ |
| 福岡県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 佐賀県 | 大学生等 | 補助・支援 | 大学生による脱炭素行動実践と地域展開を通じた担い手育成事業 | 公開ページ |
| 長崎県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 熊本県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 大分県 | 大学生等 | 継続型 | 大分県地球温暖化防止活動学生推進員(OITA EARTH COLLEGE) | 公開ページ |
| 宮崎県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 鹿児島県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
| 沖縄県 | 確認できず | 確認できず | — | 公開ページ |
※一覧で「確認できず」とした県は、大学生を対象に含む脱炭素・環境リーダー育成の事業を公開情報から見つけられなかったという意味です。一覧に載っていない事業を実施している自治体のご担当者様は、ぜひお知らせください。
単発の環境人材育成事業と継続する事業の違い

ここからは、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が神戸市・兵庫県・山口県で環境人材育成のプログラムを運営してきた経験から、継続型のプログラムを持つ10県とそれ以外の20県の差がどこから生まれるのかをお伝えします。
環境人材育成事業が2050年の主人公を誰に据えているか
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)がプログラムを運営してきた経験から、環境人材育成事業が続くかどうかに大きく関わると考えているのが、事業の主人公を誰に置いているかという点です。
脱炭素社会の目標年である2050年に、地域の中心にいるのは誰なのか。いま大学生や高校生である世代が、そのときには30代から40代になっています。主人公は目の前の参加者(若者)だという前提で組まれた事業は、内容が実践寄りになりやすいと考えています。
一方で、啓発の対象として若者を集めた事業は、知識を伝える形が中心になりやすいのではないでしょうか。若者向けの事業がある30県のうち20県で、単発の講座や委嘱・登録、補助、コンテストといった継続型以外の形が選ばれているのは、若者を「事業の主人公」と「啓発の対象」のどちらとして位置づけているかの違いが表れた結果だと考えております。
たとえば山口県の「やまぐち未来環境アクション学生プログラム」では、県・国・企業の3者がレクチャーを担当したうえで、参加者が自分の1日の行動を書き出すところまでを、DAY1の1日で行いました。脱炭素という大きなテーマを、参加者が自分の生活に置き換えて考えられる状態をつくることが、このプログラムのDAY1の狙いです。

事業で育てる能力を先に決めているか
継続型事業と単発型事業のもう1つの違いは、参加者に身につけてほしい能力を、事業の担当者が言葉にしているかどうかです。
環境分野の事業は、環境保全や条例づくりを専門にしてきた方が担当されていることも多いのではないでしょうか。起業家育成やイノベーター育成の分野では、鍛える能力を要件として定義してからプログラムを組むのが一般的です。環境分野のプログラムにも能力要件の考え方を取り入れることと、各回で何を鍛えるのかを決めやすくなります。
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)では、環境人材のプログラムを設計するときに、次の6つの能力を要件として設定しています。
| 能力 | 定義 | 鍛える場面 |
|---|---|---|
| 専門知識 | 地域と環境、提言のまとめ方についての知識 | レクチャー、フィールドワーク |
| 課題発見力 | 日常生活や現場から課題に気づく力 | 課題発見ワークショップ、フィールドワーク |
| アイデア創出力 | 課題を解決するアイデアを思いつく力 | アイデア創出ワークショップ |
| 未来構想力 | 周囲の環境や社会構造を理解しながら、未来を考える力 | 提言構想ワークショップ |
| 試行錯誤力 | アイデアの仮説検証を繰り返し、磨き上げる力 | 中間発表、メンタリング |
| 伝達力 | 未来に向けて、関係者に提言を伝える力 | 中間発表、最終発表 |
6つの能力のうち、専門知識は地域の資源と結びつけやすい能力です。どの県にも、環境や歴史を学べる施設と、すでにつくられた学習コンテンツがあります。新しく教材を用意するより、それらの施設を訪ねる時間をプログラムに組み込むほうが、参加者は具体的なイメージを持てます。
一方で、試行錯誤力は、伸ばすのに時間がかかる能力です。仮説を立てて試し、うまくいかなかった点を直すという往復には時間がかかるためです。半年程度のプログラムであれば、中間発表とメンタリングをどこに置くかで、参加者の試行錯誤力の伸び方が変わります。
また、プログラムの各回でアンケートを取り、6つの能力に対する参加者の自己評価がどう動いたかを見ていく方法もあります。プログラムごとの自己評価数値の変化は、次年度のプログラムの設計を見直す材料になるでしょう。
自治体の脱炭素の計画づくりと人材育成の関係は、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が実施したゼロカーボンシティの調査にも表れています。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

自治体・企業向け環境人材育成プログラムの選び方と設計のポイント

ここからは、自治体・企業のご担当者が環境リーダーや環境人材育成事業を実際に組み立てるときの判断についてお伝えしていきます。
プログラムを外部に委託するか、庁内で企画するか
事業を組み立てるときに最初に決めるべきポイントは、プログラムの企画から運営までを外部に委託するか、庁内で企画するかです。この際、判断の目安は次のとおりです。
| 庁内で企画するほうがよい場合 | 外部に委託するほうがよい場合 |
|---|---|
| すでに実施した経験があり、進行役を務められる職員がいる | 自治体としてはじめて実施するため、進行の型が庁内にない |
| プログラムの対象が県内の特定の学校に限られ、参加者の募集の見通しが立っている | 県内外から広く参加者を集めたい |
| プログラムが単発の講座で、1日で完結する | プログラムが半年規模で、参加者が集合しない期間の伴走が必要になる |
| 事業の予算の枠が小さく、職員の時間を充てられる | 職員が本来の業務と並行するため、時間を確保しにくい |
委託する場合に気になるのは、自治体側にどれだけ仕事が残るのかという点だと思います。一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)に委託いただいた場合、自治体のご担当者には初回のレクチャーと庁内での説明を担当いただくほかは、企画・募集・当日の運営・成果のまとめまでをお任せいただけます。
環境人材育成プログラムのストーリーとコンテンツを決めてから、日程を決める
環境人材育成プログラムをどの順番で設計するかで、迷われるご担当者も多くいらっしゃると思います。
結論から言うと、先に決めるべきなのはプログラム全体のストーリーとコンテンツの流れです。日程や回数、参加者の募集を始める時期は、そのあとに決めましょう。
環境人材育成プログラムの設計でストーリーをはじめに決める理由は、学校の授業に置き換えるとわかりやすいかもしれません。数学の授業がいきなり微分積分から始まると、生徒はなぜそれを学ぶのかがわからないまま手が止まってしまいます。足し算と引き算で数に慣れ、2つの数の関係を関数で考え、その積み重ねの先に面積の話が出てくる。生徒にこの流れが見えているから、目の前の1時間の授業に意味が生まれます。
環境人材育成プログラムも同じで、期間が長くなるほど、プログラム全体の流れが参加者に見えているかどうかが、参加者のモチベーションと成果物の質を分けます。参加者が集まるか、参加者がモチベーションを保てるか、プログラムの終了後に参加者が地域へ定着するかは、いずれもプログラムのストーリーに左右されます。
環境人材育成プログラムのストーリーを地域ごとにどうつくるか
環境人材育成プログラムのストーリーは、プログラムを実施する地域ならではの条件を出発点にすると組み立てやすくなります。
たとえば兵庫県であれば、神戸という都市を持ちながら、北は日本海、南は瀬戸内海と太平洋に接しています。都市の暮らしと、里山・里海の自然が1つの県の中にそろっていることが、兵庫県ならではの条件です。この条件を出発点にすると、兵庫県の特色を活かしたプログラムを組み立てやすくなります。
また山口県であれば、明治維新期に若い世代が新しい知識を学び、日本の近代化を支えた土地という歴史があります。当時の「工学と志」に対して、いまの山口に必要なものを「脱炭素と志」と置き直す。この読み替えによって、参加者は脱炭素を自分の県の話として捉えやすくなります。

環境人材育成プログラムを単発にするか、継続型にするか
最後に、環境人材育成事業の実施形態の選び方です。事業の目的から逆算すると、迷いにくくなります。
- 環境に関心を持つ若者の層をまず広げたいなら、単発の講座や見学から始めます。参加者が集まりやすく、次年度の参加者候補も見つかるでしょう。
- 地域で継続して動く担い手を育てたいなら、継続型のプログラムか、推進員・アンバサダーの委嘱がおすすめです。
- 県内にすでに活動している学生団体があるなら、その学生団体を補助や共催の形で後押しするほうが、新しい事業を立ち上げるより早く成果が出やすくなります。
- 県内の高校・大学から広くアイデアを集めたいなら、コンテストが向いています。
環境人材育成プログラムの1年目は単発の講座から始めて、翌年度に継続型のプログラムへ移行するという進め方も1つの選択肢です。1年目の講座に集まった参加者の中から、続けて関わりたいという方が出てくるためです。
自治体・企業が環境人材育成プログラム立ち上げ時に決めておく4つのこと
環境人材育成プログラムの企画の大枠が決まったら、次の4つを早い段階で決めておくと、担当者のプログラム運営の負担が軽くなります。

①プログラムの日程と回数、そして参加者が集合しない期間を決める
半年規模の環境人材育成プログラムを設計する場合、集合する回の日程とあわせて、回と回のあいだの過ごし方も決めておくことをおすすめします。回と回のあいだに、参加者が自分たちで考えを進める期間と、行き詰まったときに相談できる相手を置いておくことが、参加者の成果物の質を高めることにつながります。
実際に兵庫県の環境人材育成プログラムでは、ワークショップとワークショップのあいだにメンタリングの期間を設けました。環境人材育成プログラムの日程を検討する段階で、メンタリングの回数と担当者まで決めておくことをおすすめします。
兵庫県の環境人材育成プログラムについて詳しくは、以下の実施レポートをご覧ください。

②ワークショップの1チームの人数まで決める
参加者の募集人数を決めるときは、何人集めるかとあわせて、1チームを何人にするかも決めておきたいところです。
兵庫県で2024年度に実施した環境人材育成プログラムでは、約12名の参加者を4チームに分けたため、1チームは3名前後になりました。人数を絞ったことで、一人ひとりが意見を出す場面が増え、参加者の発言量がそろいやすくなっています。
参加者の募集目標を決める段階で1チームの人数から逆算しておくと、全員が意見を出しやすい議論の場をつくりやすくなるでしょう。
参考として挙げた「HYOGO GREEN NEXT」の事例について詳しくは、以下の実施レポートをご覧ください。

③参加者が成果を発表する場を設定する
自治体・企業が環境人材育成プログラム立ち上げ時に決めておくべき3つ目のポイントは、参加者がプログラムの成果をどこで発表するか、です。プログラムの中だけで完結する発表会と、外部の関係者が聞く場での発表とでは、参加者の準備の仕方が変わります。
たとえば一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が兵庫県と共同開催した環境人材育成プログラムでは、最終発表の場を「ひょうご里山・里海国際フォーラム」に設定しました。参加者が、行政・研究者・企業・地域の関係者が聞くと分かっている状態で準備を進めたことが、提言の内容を何度も見直すことにつながっています。
すでに開催が決まっている県のイベントに最終発表を組み込めれば、担当者の運営の負担を増やさずに、参加者の成果を高めることができるでしょう。
④環境人材育成プログラムの各回の目的を参加者に毎回伝える
環境人材育成プログラム立ち上げ時の最後のポイントは、プログラムの運営中の話になります。運営側は各回の冒頭で、プログラム全体の趣旨と、前回までに何をしたか、そして今回は何をするのかを参加者に毎回伝えます。
運営側にとっては何度も繰り返すことになりますが、参加者にとっては毎回が久しぶりの参加です。しつこいと感じるくらい伝えてちょうどよい、というのが、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が環境人材育成プログラムを実施してきた実感です。
なお、環境問題イベントやワークショップのアイデアについては、以下の記事をご覧ください。

脱炭素の人材育成でお困りの自治体・企業の皆さまへ
若者向けの環境人材育成プログラムを始めたいが、進め方が決まっていない……
環境リーダーを育てたいが、育成事業が単発の講座で終わってしまい、参加者の活動が続かない……
上記のようなお悩みを抱えている、自治体・企業のご担当者様も少なくないと思います。
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)では、次のような形で自治体・企業のプログラムをお手伝いしています。
- プログラムの企画・設計 テーマの設定、日程の組み立て、フィールドワーク先の選定までを担当します。
- 参加者の募集 全国の若者・学生コミュニティとのネットワークを使い、県内外から参加者を集めます。
- 当日の運営と伴走 進行、チームへのメンタリング、成果のまとめまでを一貫して担当します。
- 実施後の発信 プレスリリースや実施レポートの形にまとめ、次年度につなげます。
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)はこれまでに、兵庫県・山口県・神戸市・福井県・兵庫県三木市などの環境人材育成プログラムを担当してまいりました。
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)代表理事の右近は、自治体のご担当者に向けて次のように話しています。
右近宣人脱炭素という言葉は難しく見えますし、未来の話となると身構えてしまうかもしれません。ですが、これは地域の未来をつくる、とても前向きな活動です。まだテーマが決まっていない段階でも構いませんので、気楽にご相談いただきたいと思っています。
若者向けのプログラムはいろいろな目的で実施されますが、その中でも環境をテーマにしたものは、社会の持続可能性について地に足をつけて考えられる機会です。ご担当者にも、その意義を楽しんでいただけたらうれしいです。
まとめ
この記事では、47都道府県が実施している大学生向けの脱炭素・環境リーダー育成の事業を、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)が調査した結果をご紹介しました。
- 若者向けの環境人材育成事業を確認できたのは30県。そのうち継続型のプログラムを持つ県は10県。
- 温対法にもとづく推進員の学生版を置いている県が7県あり、うち4県が四国に集まっている。
- 環境人材育成事業が続くかどうかには、事業の主人公を誰に置いているかが大きく関わる。
- 参加者に身につけてほしい能力を6つの要件として先に決めてから、ストーリーとコンテンツ、日程の順にプログラムを設計する。
- 環境人材育成プログラムを立ち上げるときは、参加者が集合しない期間・1チームの人数・成果を発表する場を先に決めておく。
自治体・地域の脱炭素の取り組み事例については、以下の記事でもご紹介しています。

環境人材の育成なら一般社団法人Re-Generationへ
一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)は、若者・学生と自治体・企業をつなぐ共創型プログラムを全国で展開しています。
環境人材の育成については、テーマが決まっていない段階からのご相談も歓迎しております。自治体・企業様の現状をうかがったうえで、これまでの実施経験から進め方をご提案いたします。
環境人材育成プログラムの企画や運営でお悩みの自治体・企業のご担当者様は、一般社団法人Re-Generation(リジェネレーション)までお気軽にご相談ください。
出典:地球温暖化対策の推進に関する法律 | e-Gov 法令検索
出典:兵庫県/兵庫県の概要について
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