脱炭素教材は、温室効果ガスを減らす考え方や、暮らし・地域とのつながりを学ぶための資料です。選ぶときは、対象者が読めるか、学習目標に合うか、活動に使えるか、出典や利用条件が確認できるかを順に確かめます。資料を配るだけでなく、考える問いと振り返りを組み合わせましょう。
学校・自治体・企業で教材を準備する担当者に向けて、公式資料の探し方、データの読み方、ワークシートの作成例を紹介します。授業全体の構成よりも、目的に合う資料を選び、使うための判断を中心に解説します。

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ
資料を配るところから、
自分の問いを考える学びへ。
高校生・大学生が日常や地域と環境の関係を学ぶプログラムを設計・運営します。
- 高校生・大学生の視点
- 目的に合う学び・対話
- 企画・募集・運営の支援
対象者と学習目標から、必要な教材を決める

教材を検索する前に、参加者が学習後にできることを一つ書きます。「脱炭素を理解する」なら、たとえば「暮らしのどの場面が排出と関係するかを説明する」まで具体化します。学習目標が違えば、同じテーマでも必要な資料は変わります。
| 学習目標の例 | 教材の候補 | 残すものの例 |
|---|---|---|
| 基本的な仕組みを説明する | 短い解説、図、動画 | 自分の言葉による説明 |
| 生活との関係を見つける | 一日の生活記録、身近な事例 | 気になる場面と疑問 |
| 地域の選択肢を比較する | 地域資料、地図、当事者の話 | 案の理由と実施条件 |
| 行動を試す計画を立てる | 条件を整理するワークシート | 試す行動と必要な支援 |
対象年齢の表示だけで判断せず、使われている用語、文章量、グラフの難しさを確認します。専門知識に差がある場合は、共通の短い導入資料と、関心に応じて調べる追加資料を分けると進めやすくなります。印刷か端末か、視聴環境があるかも選定条件です。
小学校・中学校の授業全体のテーマや展開を探す場合は、学年別の環境学習・授業案も参照できます。本稿では教材自体の選び方と、問いへのつなぎ方を整理します。
複数回の学びで教材を使う場合は、脱炭素人材育成プログラムのカリキュラム設計を参照し、各回で必要な資料と参加者の成果物を対応させてください。
公式資料・地域データ・ワークシートの役割を分ける

公式の解説は、用語や仕組みをそろえる入口です。地域の資料は、学んだことが身近な場所でどう関係するかを考える材料になります。ワークシートは、参加者が経験や考えを書き出し、対話の過程を残すために使います。すべてを一つの資料に詰め込む必要はありません。
東京都教育委員会のカーボンハーフスタイル推進資料第1号には、小学校の低・中・高学年版、中学校・高等学校版があり、教材とワークシート・指導資料などが掲載されています。対象と学習目標に合う版を見比べる公式資料の例です。掲載先の案内と各資料の内容を確認して利用してください。
関東地方環境事務所に掲載された神奈川県の学習用教材に関する2021年の資料では、高校の授業等を想定し、映像教材、Web資料集、活用マニュアルを組み合わせる構成を紹介しています。気候変動の緩和と適応を扱う資料で、脱炭素のみの教材と同一ではありません。用途を確認して参考にします。
| 資料の役割 | 使う場面 | 選ぶ際の問い |
|---|---|---|
| 解説・動画 | 導入、共通の知識を持つ | 対象者が用語や仕組みを理解できるか |
| 地域データ・地図 | 身近な課題を調べる | 対象区域や年、条件が分かるか |
| ワークシート | 経験を整理し、対話する | 答えを押しつけず、理由を書けるか |
資料を紹介する際には、作成主体、資料名、リンクを添えます。インターネットで公開されていることと、画像や図を自由に転載できることは分けて確認しましょう。
資料に加えて体験型の教材を検討する場合は、脱炭素ゲーム・カードゲームの選定と実施条件で、提供元への確認事項と振り返りの設計を整理できます。
数値・図・説明の時点と、比較条件を確認する

排出量や削減量の数値を教材に使うときは、単位、対象年、地域、算定範囲、比較の前提を確認します。古いデータでも、当時の状況を学ぶ目的なら使えますが、現在の状況を表す資料として紹介する場合は更新の有無を調べます。
たとえば、移動手段の比較は距離や乗車人数、住宅の比較は設備や使い方、製品の比較は製造・使用・廃棄のどこまでを含むかによって読み方が変わります。異なる条件の数字を並べる場合は、その違いが分かる説明を付けます。
- 資料の作成主体、公開日・更新日、元データを確認する。
- 「CO₂」か「温室効果ガス全体」か、単位と算定範囲を確かめる。
- 図の軸、割合の分母、比較対象を本文でも説明する。
- 配布・投影・転載・改変の条件を確認し、出典を残す。
分かりやすくするために条件をすべて消すと、参加者が誤った比較をしてしまうことがあります。主な条件は図の近くに短く示し、詳細を見たい人が元資料へ進めるようにします。本稿の図解は選定手順の説明であり、排出係数や削減量を示すものではありません。

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ
暮らしと地域を教材に、
若者の関心を育てる。
生活の振り返り、現地での学び、対話を組み合わせ、対象者に合う問いを考えます。
- 高校生・大学生の視点
- 目的に合う学び・対話
- 企画・募集・運営の支援
暮らしの振り返りを、考えるワークシートにする

参加者が自分の生活を振り返るワークシートでは、「良い行動・悪い行動」を判定する前に、実際に何をしたか、なぜ選んだかを整理します。生活条件は人によって異なるため、同じ行動でも背景が違います。以下はリジェネレーションが本稿のために作成した設問例です。
| 欄 | 記入する問い | 記入例 |
|---|---|---|
| 場面・行動 | 昨日、何をして過ごしましたか | 授業の後、コンビニで夕食を買った |
| 選んだ理由 | なぜその方法を選びましたか | 帰宅が遅く、近くで買えるから |
| 環境との関係 | 資料を見て、何が気になりましたか | 食べ残しや容器がどう扱われるか |
| 他の選択肢 | 変えるなら、どんな条件が必要ですか | 早く食事を準備できること、持ち運べる容器 |
| 次の問い | さらに知りたいことは何ですか | 店や学校でできる工夫を調べたい |
個人で記入した後、話したい範囲を選んで小グループで共有します。他の人の生活や事情を決めつけず、資料で分かったことと、まだ分からないことを分けて記録すると、調べ学習につなげやすくなります。
家庭の事情や生活場所など、公開をためらう情報は無理に共有させません。学びに必要な範囲で答えられる問いにし、記入例を本人の実生活と置き換えず、架空の場面で考える選択肢も用意できます。
記入した内容をグループで話し合う時間は、脱炭素ワークショップの進め方を参考に、個人の振り返り・対話・次の一歩までを組み立てられます。
山口の実践から、シートと現地の学びをつなぐ

山口DAY1:一日の行動を、環境への問いにする
2026年8月2日の「やまぐち未来環境アクション学生プログラム」初回研修では、高校生・大学生等が日常の行動を振り返り、環境とのつながりを考えました。山口県が主催し、リジェネレーションが事務局を務めています。
教材づくりの視点では、自分の経験を書き出す欄と、環境との関係を考える時間をつなぐ構成が参考になります。参加者の気づきは初回研修の実施レポートで確認できます。本稿の設問表は当日のシートを転載したものではありません。

山口DAY2:地域での学びを、ワークシートと対話で整理
2026年8月22日のDAY2では、美祢・秋吉台を訪れ、地域の歴史や資源、自然の利用と保全について学びました。現地で得た情報をワークシートや対話で整理する様子をDAY2の実施レポートで紹介しています。
現地の経験を教材とつなぐときは、「何を見たか」「地域で聞いた説明」「そこから生まれた問い」を分けて残します。自然や資源に関する学びを、根拠なく排出削減の実績として扱わず、脱炭素との関係は追加の資料で確かめます。

同じ参加者が使うシートを継続して残すと、関心がどう深まったかを振り返れます。シートへの記入量だけを成果にせず、問いの具体性や、資料と経験を結びつけて説明できるかを見ることが大切です。
配布・投影前に確認し、学習後の反応から見直す

当日使う前に、実際の印刷や端末の画面で読みやすさを確認します。図の文字が小さすぎる、動画の音が聞こえない、QRコードだけでは資料にたどり着けない、といった問題は内容とは別に対処が必要です。紙と画面のどちらでも必要な情報を確認できる方法を用意しましょう。
- 対象者と目標に合い、使う部分が選ばれている。
- 数字の条件、出典、公開・更新の時点が確認できる。
- 配布・転載などの利用条件を確認している。
- 問いに答える時間と、共有・振り返りの時間がある。
- 学習後に、分かったことと残った疑問を確認できる。
終了時は「よかったですか」だけでなく、「自分の言葉で説明できること」「もっと知りたいこと」「難しかった資料や問い」を聞きます。感想、理解、行動の変化は別の情報なので、学習目標と対応する根拠を残します。
教材は、参加者が考えるための材料です。公式資料で共通の知識を持ち、日常や地域の経験を問いにし、ワークシートで理由と条件を残す。この役割をそろえることで、配布する資料が学びの過程に位置づきます。

自治体・企業の脱炭素/次世代支援のご担当者へ
学びの目的に合う内容を、
企画の段階からご一緒に。
対象・時間・学習目標を伺い、単発のワークから継続する環境学習まで進め方をご提案します。
- 高校生・大学生の視点
- 目的に合う学び・対話
- 企画・募集・運営の支援
実施期間や目的に合わせて、単発の脱炭素ワークショップもご覧ください。
主な参照資料:東京都教育委員会・第1号の教材、関東地方環境事務所・学習用教材の資料、山口DAY1、山口DAY2。確認日:2026年10月3日。



