まちづくりの担い手育成では、地域について知ることと、実際に企画や運営を進められることをつなぐ必要があります。講演を聞いて関心が高まっても、次に関わる場所や役割がなければ、行動に移しにくいことがあります。
研修を企画するときは、「どんな人を何人集めるか」に加え、「終了後に何を担えるようになってほしいか」を考えましょう。本記事では、学び、現地理解、企画、実践、振り返りを組み合わせる方法を紹介します。

自治体・デベロッパー・エリア運営のご担当者へ
学びを、地域で
動くきっかけへ。
地域を知る学びから、対話・企画・発表や小さな実践へつなぐプログラムを、対象者と活動先に合わせて検討します。
- 参加対象と問いを整理
- 若者との接点づくり
- 対話・運営・意見整理
各地の実施レポートと、支援内容・進め方をご紹介しています。
担い手に期待する役割を分ける

まちづくりに必要なのは、一人で何でもできるリーダーだけではありません。課題を見つける人、地域の人をつなぐ人、現場を運営する人、記録や広報を担う人など、複数の役割があります。
| 役割 | 育成で経験してほしいこと |
|---|---|
| 課題を見つける | 現地を見る、話を聞く、事実と解釈を分ける |
| 企画をつくる | 対象者、目的、内容、必要条件を整理する |
| 関係者をつなぐ | 相手の目的を聞き、役割を相談する |
| 実施を支える | 準備、連絡、当日の進行、振り返りを行う |
| 活動を伝える | 経緯、結果、次の参加機会を記録・発信する |
コーディネーター、ソーシャルデザイナー、まちづくりリーダーなどの名称を使う場合も、実際に担ってほしい行動に置き換えます。参加者全員を同じ役割に育てる必要はありません。
育成する役割を、日々の作業に分解する
「地域を引っ張る人」という目標だけでは、研修で何を扱うかを決めにくくなります。現地の課題を聞く、企画をまとめる、会議を進める、協力者へ連絡する、当日の運営を行うなど、期待する作業に分けます。すべてを一人が担う必要はなく、複数の人が役割を分担する育成も考えられます。
自治体職員向けであれば、住民の声の整理や庁内調整、事業の評価が重要になる場合があります。住民・学生向けであれば、地域を知る入口や、小さく実践できる役割が必要です。同じ研修名でも、対象者の経験と活動先に合わせて内容を変えます。
対象者と、参加後の活動先を一緒に考える
高校生・大学生、地域活動の経験者、行政・企業の担当者では、前提知識や使える時間が異なります。既存の活動に参加するのか、新しい企画をつくるのかでも必要な内容は変わります。
例えば学生を対象にするなら、授業や試験、移動、費用の条件を確認します。仕事として関わる担当者なら、職場へ持ち帰る企画や判断材料を設定すると、学んだ内容を使いやすくなります。
募集前に、地域で協力できる団体や施設を確認しておくことも重要です。受入側に余力がない状態で参加者だけを育てると、実践の機会が不足します。募集と参加の設計は、若者が参加するまちづくりをご覧ください。
参加前に確認することと、修了後に用意すること
| 参加前に確認すること | プログラムの設計へ反映すること |
|---|---|
| 地域に関わった経験 | 基礎説明の量、現地学習の内容 |
| 参加できる日程と期間 | 各回の間隔、課題の量、途中参加の扱い |
| やってみたいこと | 役割の選択、チームの組み方 |
| 相談できる相手や活動先 | 地域団体との接点、伴走者の配置 |
修了後の活動先は、募集と同時に検討します。既存団体の活動を知る、企画の試行に参加する、次の期の参加者を支えるなど、複数の選択肢を用意すると、それぞれの生活に合う関わり方を選べます。修了者全員へ同じ継続参加を求めるより、選べる役割を示すことが大切です。
大学や学校と連携して学びと地域活動をつなぐ場合は、大学・地域連携の目的と実施体制の整理で、地域側の目的・学生の学び・伴走する役割を確認できます。
講演・研修・現地実践を使い分ける
| 形式 | 得やすいもの | 次につなげる工夫 |
|---|---|---|
| 講演・出前講座 | 基礎知識、関心の入口 | 自地域に置き換える短い作業を加える |
| 勉強会・対話 | 経験の共有、疑問の整理 | 次に調べることを決める |
| 視察・まち歩き | 現場の理解、比較する視点 | 見る観点と持ち帰る問いを決める |
| 企画研修 | 課題から案を組み立てる経験 | 利用者や運営者のコメントを得る |
| 小さな実践 | 準備・調整・運営の経験 | 記録を使って、企画を修正する |
著名な講師や先進的な視察先だけで、研修の効果が決まるわけではありません。参加者が何を学び、どの行動に使うかを決めてから、必要な専門性や経験を持つ人を選びます。
視察では、目立つ施設や催しだけでなく、調整、費用、日常の運営にも注目します。公開資料で確認できることを先に調べ、現地では自地域と条件が違う点を考えると、持ち帰る知見が具体的になります。
学びから実践までのプログラム例

以下は、地域資源を使った小規模な企画づくりを想定した設計例です。リジェネレーションの特定案件の実施内容や、固定の販売パッケージを示すものではありません。
| 段階 | 行うこと | 残すもの |
|---|---|---|
| 事前 | 参加動機と地域との関わりを確認 | 自分が取り組みたい問い |
| 学ぶ | 地域の状況と活動の基礎を知る | 分かったこと・まだ分からないこと |
| 見る・聞く | 現地観察、関係者の話、既存資料の確認 | 経験や事実の記録 |
| 考える | 対象者と課題を絞り、企画する | 目的・内容・条件をまとめた企画書 |
| 試す | 実施できる規模で動く | 実施記録、反応、運営の課題 |
| 振り返る | 想定と実際の違いを整理 | 改善案と次の行動 |
日程の長さを先に固定せず、実践に必要な調整から逆算します。短い研修なら、企画の完成を急がず、課題の見つけ方や次の確認までを到達点にする方法もあります。
各回の学びを、次の作業へつなぐカリキュラム例
以下は、地域の課題をもとに小さな企画を試す場合の設計例です。必要な回数や期間は、現地調整や参加者の経験によって変わります。
| 工程 | 参加者の作業 | 支援側が確認すること |
|---|---|---|
| 地域を知る | 資料を読み、現地を歩き、経験を聞く | 事実と推測が分かれているか |
| 課題を選ぶ | 対象者と困っている場面を絞る | 当事者の経験を踏まえているか |
| 企画を作る | 目的、内容、協力者、準備を整理する | 実施条件と役割が具体的か |
| 小さく試す | 役割を分担して実施し、記録する | 相談先と対応方法が共有されているか |
| 振り返る | 結果と次に変える点をまとめる | 感想だけでなく根拠があるか |
発表会を設ける場合は、資料の見栄えだけで評価せず、調べて分かったことや、案を修正した理由も話せるようにします。実施まで進められないプログラムでも、次に確かめる条件と相談先を整理すれば、その後の行動につなげやすくなります。
伴走する人は、答えを出すより判断を支える
運営者やメンターは、参加者の案を代わりにつくるのではなく、考えるための問いを返します。「誰にとって必要か」「そう考えた根拠は何か」「何があれば試せるか」と確認すると、企画の前提を整理できます。
一方、参加者だけでは調整できない施設利用や安全、地域との連絡は、運営側が支える必要があります。任せることと、支援することの境界を共有しましょう。
チームで進める場合は、企画、調整、記録、発表などの役割を経験できるようにします。話すことが得意な人だけが評価されないよう、準備や記録の貢献も振り返ります。
伴走者が使える、判断を促す質問
案が広すぎるときは「誰の、いつの困りごとか」、方法が先に決まっているときは「ほかの方法でも目的を満たせるか」、実施が難しいときは「小さく確かめられる部分はどこか」と問いかけます。答えを渡す前に、本人が何を根拠に考えたかを聞くことが重要です。
相談の記録には、現在の案、迷っている点、確認すること、次回までの作業を残します。伴走者が交代しても経緯を共有でき、参加者も考えの変化を振り返れます。専門的な判断が必要な事項は、その場で断定せず、適切な担当者へ確認する流れを用意します。

自治体・デベロッパー・エリア運営のご担当者へ
学ぶ・試す・振り返る。
実践につながる機会を。
地域の情報と若者の日常の経験をつなぎ、目的に合う問いと進行を設計します。対話で出た声は、その後の検討に使える形へ整理します。
- 参加対象と問いを整理
- 若者との接点づくり
- 対話・運営・意見整理
各地の実施レポートと、支援内容・進め方をご紹介しています。
地域を題材に学び、企画を考えた実践
プロジェクトの概要:三木市主催の「市制70周年記念 若者ミーティング」は、地域資源を学び、10年後の三木市を若者と考える参加型事業です。市内1大学・5高校の約50名が参加し、2023年8月〜2024年7月に協議・フィールドワークを重ね、周年記念式典で発表しました。リジェネレーションはワーク設計、職員への事前レクチャー、進行、発表へのフィードバックを支援しました。確認できる結果は検討・発表の実施であり、定住者増加を測った事例ではありません。出典:事業概要・担当範囲・発表内容。
育成の企画に応用する場合は、発表の出来栄えだけでなく、現地を見る視点、他者の話を聞く姿勢、案を修正する過程を確認できます。活動に参加したことから、直ちに将来の地域リーダーとして定着したと評価することは避け、継続した関わりを別に追います。
また、中小企業庁の2025年度「マチスタート」は、まちづくりを学び地域で実践する力を身につける人材育成事業として紹介されています。公式の開催概要は、実務者向けの学びを検討する参考資料です。ここでは過年度の実施例として紹介しており、現在募集中の案内ではありません。
佐賀のコスメ体験企画に見る、実践の役割
サガつくの大学生が運営した佐賀のコスメ体験イベントでは、発案、企画設計、協力者との調整、高校生ボランティアへの説明、当日の運営という複数の作業がありました。県、青年会議所、企業、専門学校などが協力し、リジェネレーションは後方から支えています。
担い手育成として読む場合は、イベントの開催だけでなく、学生がどの判断や作業を経験したかに注目できます。同種の実践を用意するなら、参加者が主体的に進める範囲、支援者と相談する節目、実施後に振り返る項目をあらかじめ決めます。経験したことを本人の言葉で整理すると、次の活動で生かしたい点も見つけやすくなります。学生が企画・運営した実施事例
研修の成果を、知識・行動・継続に分けて見る

| 見る段階 | 確認する例 |
|---|---|
| 理解 | 対象者や課題、企画の根拠を自分の言葉で説明できるか |
| 行動 | 現地確認、関係者との相談、企画の修正を行えたか |
| 協働 | 役割を分担し、相手の意見を扱えたか |
| 継続 | 次に関わる場や活動が具体化したか |
| 受入体制 | 地域側が継続を支えられる条件があるか |
満足度は、参加者がどう受け止めたかを知るために役立ちます。ただし、それだけで実践力の向上を判断せず、企画書や記録、振り返りも合わせて確認します。
修了後に活動していない場合も、意欲だけの問題と捉えないことが大切です。時間、費用、受入先、相談相手など、行動を支える条件を確かめます。
育成の評価は、本人の変化と運営の改善を分ける
評価では、地域について理解できたか、根拠を持って企画を説明できるか、協力者と役割を調整できたかなど、目標に対応する観点を選びます。開始時と終了時に同じ観点で本人が振り返り、成果物や作業記録も合わせて確認すると、満足度だけでは分からない変化を捉えられます。
修了後の活動を確認する場合は、連絡する時期と方法を事前に案内します。継続していない人についても、関心がなくなったと決めつけず、時間や活動先などの条件を確認できれば、次のプログラムの改善に使えます。参加者の優劣を決めるためではなく、学びと実践を支える設計を見直すために記録します。
修了後の関わり方を、複数用意する
継続する形は、地域活動の運営者になることだけではありません。月に一度の協力、広報、イベントの記録、企画への意見提供など、生活に合わせた関わり方を考えられます。
次の募集、地域団体との接点、相談できる相手を案内し、参加者が自分で選べるようにします。運営側は、誰が何に関心を持ち、どの役割なら関われるかを、本人が同意した範囲で引き継ぎます。
活動の方向性を共有する方法はまちづくりのビジョン策定、継続運営の体制はエリアマネジメントも参考になります。
修了後も関われる場を考える場合は、若者が選べる居場所と過ごし方の設計も参考になります。活動を担う以外の関わり方も用意します。
実践事例 / 佐賀県佐賀市
事前交流から、学生が出店・出演する一日へ

学生マルシェ「さがまる」では、事前交流から準備、本番の出店・出演へと、学生が役割を担う機会を設けました。学生が地域で企画と運営に関わった実施レポートは、学んだことを使う場と、支援する側の準備を考える例です。
企画に活かせるポイント学ぶ場と、学んだことを使う場をつなげる。実践に入る前の交流や準備も含めて、本人が担う役割と運営側の支援を整理できます。
兵庫県の事例:現地学習とメンタリングを、提言発表へつなぐ
プロジェクトの概要:「ひょうごZ世代 里山・里海環境リーダー育成プログラム」は、兵庫県が主催し、リジェネレーションが企画運営を担った、若者と地域の環境をつなぐ学習・提案事業です。2025年5月〜9月、15名が4チームでワークショップ、現地学習、メンタリングに取り組み、「ひょうご里山・里海国際フォーラム」で提言を発表しました。募集時の名称は「ひょうごZ世代 未来社会デザイン」です。出典:約5か月の実施レポート。提言の発表と、その後の政策化・事業化は区別して評価します。

このプログラムでは、里山と里海の現地学習、複数回のワークショップ、合間のメンタリング、外部の関係者へ伝える最終発表を組み合わせています。集合研修の回数だけでなく、参加者が案を深める期間の支援を設計する際の参考になります。
研修を自地域へ取り入れるなら、講師の講義内容に加え、現地で話を聞ける人、途中の相談担当、発表を受け止める相手を確保します。修了後の活動を追う場合も、本人の意向と地域側の受入体制を合わせて確認しましょう。
実務者向けには、中小企業庁の2026年「マチスタート in 関西」開催概要もあります。オンラインの基礎学習、集合研修、現地見学を組み合わせた実施例です。受講募集や費用は本記事では案内せず、過去の設計を考える材料として紹介します。
地域のテーマに合わせた学びと実践を組み立てる
地域を知る学びから、対話・企画・発表や小さな実践へつなぐプログラムを、対象者と活動先に合わせて検討します。若者が地域で役割を持つ、企画支援を見る。
制作・参照情報
本記事は、公開中の実施レポートと、本文中に示した自治体・公的機関等の資料をもとに構成しています。比較表や質問例は企画検討のための整理で、特定の事業の成果を保証するものではありません。リジェネレーションの団体情報・事業内容もご覧ください。

自治体・デベロッパー・エリア運営のご担当者へ
若者が役割を担う企画を、
一緒に考える。
検討中のテーマ、対象者、実施時期、支援が必要な範囲をお聞かせください。企画、当日の進行、意見整理など、必要な部分から相談できます。
- 参加対象と問いを整理
- 若者との接点づくり
- 対話・運営・意見整理
各地の実施レポートと、支援内容・進め方をご紹介しています。



