Z世代の転職・退職をどう理解する?定着施策につなぐ聞き取りと職場改善

転職・退職を考える若手の経験と希望を聞き、職場改善につなげる場面のイラスト

若手から転職を考えていると聞いたとき、「Z世代はすぐ辞める」という説明で終えると、仕事内容の認識違いや相談しにくい仕組みを見落とします。辞めるかどうかの結論と、現在の職場で起きていることの確認は、分けて進める必要があります。

定着施策の出発点は、本人が大切にしたい条件と、職場で変えられる条件を具体的にすることです。勤務先に残ることだけを成功とせず、無理のある働き方や情報の食い違いを解消し、その後の選択を本人が考えられる状態を目指します。

この記事では、退職・転職・解雇の違いを確認したうえで、調査から得られる視点、面談で使える7つの質問、声を集めた後の改善と検証を整理します。新卒の3年以内離職率や理由の公表値は、若者の離職率・推移と離職理由の読み方で扱っています。

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Z世代の退職・転職・解雇はどう違う?まず言葉と状況を分ける

退職・離職、転職、退職代行を整理。雇用の終了、勤務先の変更、第三者による意思伝達と法的交渉は異なる。
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「辞める」という言葉の中には、本人の転職希望、雇用の終了、職場のトラブルなど、異なる状況が含まれます。人事担当者が確認したいのは、世代名ではなく、いま何が起きているかです。相談の段階で「退職する人」と決めつけると、まだ整理していない考えを話しにくくしてしまいます。

言葉この記事での整理混同しないこと
離職・退職勤務先との雇用が終了することを捉える言葉別の仕事へ移る場合もあるため、働く意欲の低下と同じではない
転職勤務先を変えて働くこと賃金、時間、仕事内容など、変えたい条件は人によって異なる
解雇使用者からの一方的な申し出による労働契約の終了本人の自主的な退職とは区別する
退職代行第三者を介して退職に関する意思などを伝えるサービスの呼称意思の伝達と、退職日・金銭等の法的交渉は同じ業務ではない

解雇について、厚生労働省は、使用者がいつでも自由に行えるものではなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となることを説明しています。「Z世代だから」「会社に合わないと感じるから」といった世代や印象だけで扱える話ではありません。詳しくは厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」を確認してください。

退職代行の利用から、性格や原因を決めつけない

退職代行を利用したという事実だけでは、本人が第三者を選んだ理由は分かりません。会社へ直接話すことへの不安、すでに相談しても状況が変わらなかった経験、手続き上の負担など、確かめるべき点を分けます。ただし、これらを利用者全員の理由として断定することもできません。

東京弁護士会は、退職に関連する未払残業代や慰謝料等の交渉を、有償の事業者が本人に代わって行う場合などに、弁護士法上の問題が生じ得ることを説明しています。退職意思を伝えることと法的問題の処理を区別し、東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反」を参照します。個別の紛争は専門家へ相談する事項です。

企業側にとっての実務上の問いは、通常の相談経路で話せる状態があったか、本人の意思を確認する窓口が明確だったかです。第三者への連絡そのものを非難するより、相談経路と対応記録を振り返る方が、次の改善につながります。

転職後は何が変わる?若年者調査から定着施策の問いをつくる

転職後の変化を収入、時間、経験に分けて確認する。若年者調査はZ世代だけの調査ではなく、自社の状況は別に聞く。
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退職者を一括して数えるだけでは、職場改善の優先順位を決められません。「どの条件を変えたいのか」「転職後に何が変わったのか」を確認すると、給与制度、業務分担、育成機会など、異なる対応が見えてきます。

対象年齢と調査時点をそろえて読む

労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査シリーズNo.250とNo.259は、2023年11月に実施したWebモニター調査を基にしています。対象は20〜34歳、高校卒〜修士修了の非在学者で、有効回答は7,994件です。Z世代以外の年齢層も含むため、結果をそのまま「Z世代全員の特徴」と呼ぶことはできません。

No.250では初職の経験と勤続・離職を、No.259では初職離職後のキャリアを扱っています。どちらも、本稿で提案する聞き取りや施策の効果を直接検証した調査ではありません。結果から確認すべき問いを考え、自社の状況は別に確かめます。

賃金・時間・仕事内容を、一つの満足度にまとめない

No.259の概要では、初職が正社員で、正社員へ転職した若者の分析について、賃金や労働時間・休日を理由とした転職で、それぞれ賃金上昇や労働時間短縮がみられる一方、人間関係や健康損害等を理由とする転職では月給が減少する傾向も示されています。これは対象者にみられた関連であり、転職すれば一定の結果が得られるという因果の保証ではありません。

この違いから、本稿では収入、時間、仕事内容、人との関係を別々に聞くことを提案します。収入が上がっても休日が減れば本人の希望と合わない場合があります。反対に、収入だけを見ると見逃す負担の軽減もあります。どの条件を優先し、どの条件なら調整できるかを本人と確かめるためです。 希望・職場への評価・実際の行動を区別する考え方は、公的資料で読む若者の仕事観も参照してください。

確認する条件具体的に聞く内容職場側で検討すること
収入・評価何に対する評価か分かるか、生活との関係で何が負担か評価基準の説明、役割と処遇の整合
時間・休み予定変更や繁忙で、どの生活場面に影響があるか業務量、分担、予定の見通し
経験・成長身につけたい経験と、現在任されている仕事は何か仕事の配分、学習機会、相談相手
人との関係どの場面で相談や確認が難しいか相談経路、指示や情報共有の方法

同じ条件でも、入社時期、職種、雇用形態、生活上の事情で意味が変わります。分析の際は、年齢だけでまとめず、無理のない範囲で仕事上の条件をそろえて比較します。小さな集団の違いを見つけても、個人が特定される集計は共有しない運用にします。

退職を考える若手に何を聞く?結論を急がない7つの質問

退職を考える若手への聞き取りは、具体的経験、本人の希望、共有範囲と次の確認の順で進める。結論や翻意を急がせない。
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聞き取りでは、引き留めるための答えを探すより、本人の経験を正確に理解します。最初から「何があれば残る?」と尋ねると、退職を交渉材料にする会話へ寄りやすくなります。現在の経験、希望、相談の段階を順に聞き、本人が話す範囲を選べるようにします。

面談の前に、目的と共有範囲を説明する

面談の案内には、仕事内容や働き方について理解する目的、記録の扱い、誰に何を共有するかを記します。人事評価の面談と兼ねる場合は、そのことを明示します。職場改善の聞き取りなのに、後から発言が評価材料へ使われると、次に相談することをためらいやすくなります。 面談の案内や連絡方法をすり合わせるには、Z世代とのコミュニケーションの目的・期限・手段を明確にする文例が使えます。

直属上司との関係が相談内容に含まれる場合に備え、人事や別の相談経路も選べるようにします。録音や記名アンケートを使うなら、利用目的と保存・閲覧の範囲を説明します。守れない秘密保持を約束せず、安全上の問題などで共有が必要な場合の扱いも確認してください。

以下は、一般的な職場改善の聞き取りに使う編集部提案の質問例です。実施済みのインタビューや、効果が検証された尺度ではありません。すべてを一度に聞く必要はなく、本人が話しやすい順に調整します。

  1. いまの仕事で、続けたいことと負担に感じることは何ですか?
    困りごとだけでなく、残したい経験や関係も確認します。仕事全体を良い・悪いで評価する前に、場面を分けます。
  2. そう感じた、直近の具体的な場面を教えてもらえますか?
    いつ、どの仕事で、どの説明や調整が不足したかを聞きます。「成長できない」等の言葉を、本人が意味する経験へ戻します。
  3. 入社前に想像していたことと、実際の仕事で違った点はありますか?
    採用時の説明、配属、仕事の進め方などを確認します。本人の理解不足と決めず、伝えた内容と経験の両方を振り返ります。
  4. これから大切にしたい条件は、どのようなものですか?
    仕事内容、収入、時間、場所、人との関係を分け、いま特に大切な点を聞きます。個人の生活事情は話せる範囲にとどめます。
  5. 今の職場で変えられるとしたら、何から試してみたいですか?
    実現の約束を先にせず、業務の配分、確認の機会、役割の説明など、検討できる案を整理します。変更を望まない場合も受け止めます。
  6. 誰に、どのような形なら相談しやすいですか?
    上司への相談だけを前提にせず、人事、別の管理職、外部の専門職等の選択肢を確認します。相談相手を選ぶ理由を追及しません。
  7. 今日の話を誰にどこまで共有し、次に何を確認しましょうか?
    本人が述べたことと、担当者が考えた仮説を分けます。対応する人、期限、次の連絡方法を確認して終えます。

本人の言葉と担当者の解釈を分けて記録する

例えば「毎週、前日に予定が変わる」という発言を、記録の段階で「柔軟性が低い」と言い換えないようにします。本人が経験した事実、本人の受け止め、担当者の仮説、追加で確かめる事項を別の欄に残すと、改善案を考える際の飛躍を減らせます。 対象者の集め方、質問と記録の設計は若者インタビュー・定性調査の進め方で整理しています。人事評価や個別の労務対応との境界を明示して用います。

また、まだ情報を集めているのか、退職を決めているのかでも会話の目的は異なります。意思が固まっている人に、同じ質問を何度も繰り返して翻意を迫らないようにします。解雇、未払賃金、ハラスメントなどの労働問題は、この質問表だけで処理せず、総合労働相談コーナーや専門家につなぐ事項として区別します。

聞いた声を定着施策へ返す|職場改善と再確認の進め方

若手の声を職場改善へつなぐ手順。個別調整・チーム運用・制度を分け、担当と期限を決め、同じ経験が変わったかを再確認する。
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面談やアンケートの実施だけでは、職場の状況は変わりません。聞いた声を、担当者が実行できる行動に置き換え、実施後に本人の経験を確かめます。ここでは、短い期間で試す改善案と、制度や専門対応として扱う事項を分ける方法を提案します。

個人の希望と、複数人に共通する仕組みを分ける

一人の希望から全社員向けの制度を変える必要があるとは限りません。一方で、同じ業務の予定変更について複数人が困っているなら、本人の適応だけを求めるより、決定と共有の手順を検討できます。個別調整、チームの運用、組織の制度という三つの範囲で整理します。

聞いた声の例まず確かめること改善を試す例後で確認する経験
予定変更が重なり、休みの見通しが立たない変更の頻度と決定経路、誰が調整できるか予定確定の時期と変更時の連絡を整理前もって予定を考えられるようになったか
何を身につければ次の仕事を任されるか分からない期待する役割と、現在の経験を双方が理解しているか必要な経験と、試せる仕事を具体化自分の次の目標を説明できるか
質問の相手が決まっていない困る仕事と、相談相手の不在・偏り相談経路と代替担当を明確にする困った時に必要な相手へつながるか
募集時の説明と日々の仕事が違うどの説明と、どの仕事に差があるか業務説明や採用時の情報を更新次の入社者にも同じ認識違いが生じていないか

この表は施策の例です。本人の希望、職場の権限や業務上の制約を確認して採用します。負荷の高い働き方や不適切な扱いがある場合に、面談の回数を増やすだけで対応を済ませないことも大切です。

小さく試すときも、担当と期限を曖昧にしない

改善案は「コミュニケーションを増やす」よりも、「毎週の業務確認で優先順位と相談先を確かめる」のように、何を変えるかまで記します。実行する担当、始める時期、確認する時期、変えられない条件もそろえます。検討できない案には、理由や別の選択肢を本人へ返します。 採用時に何を伝え、学生がどの条件を確かめたかを振り返る際は、Z世代の就活・会社選びと採用接点へ進んでください。

例えば、あるチームで業務の相談経路を整理するなら、開始前にどの場面で回答を待つかを確認し、一定期間の後に同じ場面を振り返ります。社員が「相談できるようになった」と述べたことと、記録上の回答待ち時間が変わったことは、別の結果として扱います。

離職率だけを、すぐに成果指標へ置かない

定着施策の評価では、相談のしやすさ、仕事の見通し、役割の理解、業務負荷の経験など、実施した変更に近い指標を先に確認します。離職率を追う場合も、雇用形態、対象者、期間、分母を固定し、件数を添えます。人数の少ない部署では、1人の変化で率が大きく動きます。 数値の対象、設問、分母を確認する手順はZ世代の統計・調査資料の読み方を参照できます。

前後の数字が良くなっても、人員構成や景況、他の施策が変わっていれば、今回の面談だけの効果とは言えません。JILPTのNo.250も、適切な労働条件や情報提供、教育訓練、コミュニケーション、職場トラブルの防止などを職場定着の論点として挙げています。一つの新しい施策で、基礎的な条件を置き換えないようにします。

退職者の話を確認する場合も、回答の任意性と共有範囲を説明し、本人の発言を特定の社員への非難として流さない運用にします。課題を担当部署へ返すときは、固有のエピソードから人物が分からないかも確認します。集めた声が誰の手で何に使われたかを説明することが、次の聞き取りの土台になります。

キャリアの希望を言葉にする事例と、転職・退職についてのFAQ

キャリアの希望を経験から言語化する。過去を振り返り仕事・生活・場所を具体化する。キャリアデザイン事例は社員の離職率改善実績とは区別する。
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職場の困りごとを聞くことと、本人がどんな働き方や暮らしを望むかを整理することは、つながっています。抽象的な「やりがい」「自分らしさ」を聞くだけでは、担当者と本人の理解がずれる場合があります。経験や生活の場面から言葉にする実践を紹介します。

福井県との実践:経験を振り返り、働くことと暮らしを一緒に考える

Re-Generationは、福井県と連携したFukui Future Summit キャリアデザイン編で、若者・学生が自分のウェルビーイングと将来を考える場を企画・運営しました。大阪・東京の2会場で計42名が参加し、個人ワークとグループワークを組み合わせています。

福井県とRe-Generationが実施したFukui Future Summitキャリアデザイン編、東京会場でのワークショップ
福井県・Fukui Future Summit キャリアデザイン編、東京会場でのワークショップ。出典:Re-Generationの実施レポート。

参加者は、過去の経験を振り返ったうえで、好きなこと・得意なこと・やってみたいことを整理し、働くこと、私生活、居住地の条件と組み合わせて将来を考えました。本稿では、仕事への希望を日常の経験から具体化する場の設計として参照しています。

これは学生・若者と地域をつなぐキャリアデザインの事例であり、社員の離職率を下げた実績ではありません。職場へ応用する場合は、参加目的、評価との関係、個人情報の扱いを改めて設計します。本人の希望を企業の都合へ合わせるためのワークにしないことが、扱う範囲を決めるうえで大切です。

Z世代は、他の世代よりすぐ転職するのでしょうか?

世代名だけでは判断できません。年齢、勤続年数、雇用形態、仕事内容、調査時点をそろえて比較する必要があります。また、離職と転職、失業は同じ状態ではありません。離職率の対象と推移は若者の離職率の記事で確認できます。

本人が話さない場合、面談や匿名アンケートを増やすべきですか?

回数の前に、話の使われ方を説明できているか、相談相手を選べるかを確認します。匿名と案内しても、部署・職種・年齢の組み合わせで人物が分かる場合があります。回答しない選択を尊重し、集計や自由記述の共有範囲も見直します。

退職代行や解雇を、社内の若手面談だけで扱えますか?

意思の確認と法律問題の解決は分ける必要があります。解雇、雇止め、賃金の引下げ、ハラスメント等については、労働者・事業主の双方が利用できる厚生労働省の総合労働相談コーナーが案内されています。契約や金銭に関する個別の判断は専門家へ相談します。

Re-Generationに相談できることは何ですか?

若者とのインタビューやワークショップを通じ、生活の経験と企画の問いをつなぐ支援です。仕事・組織への期待を聞く接点や、本人が希望を言葉にする場を検討できます。労務紛争の代理や退職代行、定着率の改善保証を行う支援とは分け、Z世代との対話・リサーチ支援で範囲を確認してください。

転職や退職を考える理由は、一つの世代像に収まりません。経験を具体的に聞き、変えられる条件を確かめ、実施後に本人へ戻る。この循環を、若手が相談できる職場づくりの中へ組み込んでいきましょう。

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