住民参加のまちづくり|声を集めた、その先へ。手法と合意形成の進め方

住民参加のまちづくり。意見を集めた、その先まで設計する。地域づくりをテーマにした解説イラスト。

住民参加のまちづくりは、地域の計画や活動に、暮らす人や利用する人の経験・意見を取り入れる取り組みです。説明を聞く機会、意見を伝える機会、一緒に案を考える機会では、参加者が関われる範囲が異なります。

参加の場を設ける際は、「何に関われるのか」「誰が判断するのか」「意見がどう扱われるのか」を明らかにすることが重要です。本記事では、手法の選び方と、異なる意見を次の判断へつなぐ進め方を解説します。

一般社団法人Re-Generation 代表理事 右近宣人

この記事の筆者

右近 宣人 NORIHITO UKON

一般社団法人Re-Generation 代表理事|若者参画・地域共創

若者参画を専門に、企業・自治体とともに都市開発・まちづくりの共創プロジェクトを企画・運営。神戸・三宮での対話を原点に、大阪・うめきた、佐賀の中心街、兵庫県三木市などで、若者の視点を地域の未来につなぐ場づくりに取り組む。

1999年生まれ。神戸大学法学部卒業後、2022年に関西電力へ入社。新ビジネス創造コース1期生として、脱炭素や社会課題領域の新規事業開発に携わり、2023年6月に一般社団法人Re-Generationを設立。

現場で得た知見をもとに、日本経済新聞社大阪本社・大阪商工会議所共催シンポジウムで登壇。全国市街地再開発協会の広報誌「CITY in CITY」vol.36の座談会にも参加し、次世代とともに進めるまちづくりのあり方を発信している。

まちづくりから始まった、右近宣人の想いとリジェネレーションの歩みを知る →

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リジェネレーションと。

声を聞けていない人との接点づくりから、立場の異なる人が話せる問いの設計まで。参加の目的と意思決定の範囲を整理し、地域の対話を支援します。

  • 若者の声を可視化
  • 地域の未来を共創
  • 企画から運営まで

神戸・三宮、三木市などの実践事例と、支援内容・進め方をご紹介しています。

コンテンツ

住民参加・参画・協働を、実際の役割で理解する

参加の範囲を、具体的に伝える。意見を伝える:経験や懸念を検討材料にする。案を考える:条件を共有し一緒に検討する。運営に関わる:役割と負担を分担する。
名称よりも、何に関われるかを募集時に示す。

参加は、場や活動への関わりを広く指します。参画は、企画や検討の段階から関わる意味で使われ、協働は、異なる主体が役割を持って一緒に取り組む意味で使われることがあります。ただし、言葉の使い分けは自治体や事業によって異なります。

名称よりも、参加者ができることを具体的に示しましょう。「一緒に考える」と案内しながら、実際には決定済みの内容を説明するだけだと、期待とのずれが生じます。

企業・自治体・地域団体などの役割を分けて企画する方法は、地域共創の進め方でも紹介しています。

住民自治も関連する概念ですが、個別事業の意見収集だけで、その全体を説明できるものではありません。この記事では、地域の企画・計画・活動における参加の設計に焦点を当てます。

「住民参加のはしご」から考える視点

シェリー・アーンスタインの1969年の論文「A Ladder of Citizen Participation」は、参加のあり方を、市民が意思決定にどの程度関われるかという観点から捉えた研究です。原論文の書誌・概要を確認できます。

現在の企画で参考にするなら、参加人数の多さだけでなく、判断への関わり方を見ることがポイントです。すべての会を同じ参加の形にするのではなく、目的に合う範囲を明示します。

参加の役割を、募集前に示す

意見を聞く場なのか、案を一緒に作る場なのか、運営に関わる人を募る場なのかを明示します。意見交換に来た人へ、後から運営の責任まで求めると、期待のずれが生じます。逆に、企画に関われると考えて参加した人へ完成案の説明だけを行っても、対話の目的が伝わりません。

参加の位置づけ主催者が用意すること参加者へ伝えること
情報を知る分かりやすい資料と質問の窓口現在の検討段階、次の予定
経験や意見を伝える発言・回答の機会と記録方法どの判断に使うか、結果の返し方
案を一緒に考える前提条件、比較材料、対話の時間変更できる範囲、決定する主体
実施や運営に関わる役割分担、相談先、引き継ぎ作業内容、負担、参加を終える方法

これは役割を整理するための表で、すべての事業を同じ順序で進める必要があるという意味ではありません。事業の段階や対象者に合わせて組み合わせます。

住民参加のメリットと、設計上の課題

住民や利用者から、記録や図面だけでは分からない使い方や不便さを知れることがあります。また、異なる立場の人が同じ情報に触れることで、相互の理解を深める機会にもなります。

一方、参加できる人が偏る、意見が対立する、時間がかかる、結果の返答が遅れるといった課題があります。参加の機会を設ければ、自動的に理解や合意が得られるわけではありません。

最初に、事業の目的、参加する人、扱う内容、決め方を共有し、足りない意見や残った懸念を把握できる設計にします。

目的に合わせて、参加の手法を組み合わせる

手法主な役割補いたい点
説明会計画や条件を伝え、質問を受ける人前で質問しにくい人への対応
アンケート一定の質問で広く意見を集める理由の深掘り、回答者の偏り
インタビュー個々の経験や懸念を詳しく聞く意見の広がりの確認
ワークショップ異なる視点で課題や案を検討する当日来られない人の声
オープンハウス展示を見ながら個別に話す説明内容の統一、記録方法
提案箱・オンライン投稿都合のよいときに意見を伝える投稿への対応、利用しない人への案内

例えば説明会とアンケートを組み合わせれば、情報を共有した上で意見を受けられます。案の比較にはワークショップ、特定の利用場面の理解にはインタビューなど、目的に応じて補います。

方法の実務は、ワークショップの進め方とニーズ調査の設計をご覧ください。

一つの手法で、すべての声を集めようとしない

大人数の説明会は共通情報を伝えやすい一方、発言に慣れない人の経験を詳しく聞くには別の機会が必要です。アンケートで論点を把握し、少人数の対話で背景を聞き、現地で実際の困りごとを確かめるなど、それぞれの役割を決めます。

複数の手法を使う場合は、同じ人が繰り返し参加することもあります。回答や発言の件数を単純に合計して「地域の何人が支持した」と読み替えず、手法ごとの対象と集め方を残します。参加機会を増やすことと、集めた意見の代表性を確かめることは別に検討します。

誰の声を聞けていないかを確認する

日中に働く人、子育てや介護を担う人、移動しにくい人などは、同じ日時・会場では参加が難しい場合があります。住民以外にも、地域で働く人、通学する人、施設を使う人が関わる事業もあります。

対象範囲を決めたら、参加状況と募集経路を記録します。出席者が少ない層には、別の時間、短い対話、オンラインや紙などの方法を検討します。デジタルの参加手段も、誰にとって使いやすいかを確かめましょう。

若者の声を取り入れる場合は、若者の募集・対話・継続参加のように、学校や生活時間との関係も考えます。参加者に地域全体の代表としての責任を負わせず、どの範囲の意見かを示します。

参加しにくさを、本人の関心の低さだけで説明しない

仕事や育児の時間、会場までの移動、資料の難しさ、周囲の人間関係などが参加の障壁になる場合があります。昼間の会合に来られない人へ夜間やオンラインの機会を用意する、長い資料とは別に概要を作る、会場で発言しなくても書面で意見を出せるようにするなど、複数の入口を検討します。

特定の属性だけで必要な配慮を決めつけず、申し込み時に参加上の希望を確認できる窓口を設けます。会場や運営上の制約がある場合も、どこまで対応できるかを事前に案内すると、参加者が判断しやすくなります。

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合意形成は、意見を一つにそろえることから始めない

合意形成は、違いの背景から考える。情報をそろえる:現状と変更できる条件を共有。理由を聞く:守りたいこと・心配を記録。案を比べる:条件を変えた選択肢を検討。判断を伝える:理由と残る懸念次の確認を示す。
全員の意見を同じにすることを、出発点にしない。

合意形成では、主張の違いと、その背景を分けます。例えば、広場で催しを増やしたい人と静かな環境を望む人がいる場合、対立しているのは活動そのものか、時間帯か、音量かを確かめます。

1.共通の情報をそろえる

対象区域、現状、変更できる条件を同じ資料で示します。推測と確認済みの情報を区別し、分からない点は追加確認として残します。

2.主張の理由を聞く

賛成・反対の人数だけでなく、何を守りたいか、何を心配しているかを記録します。同じ反対でも、騒音、安全、費用など、理由によって対応は変わります。

3.複数の選択肢を比較する

場所を分ける、時間を限定する、試行期間を置くなど、条件を変えた案を考えます。比較の観点は、利用、安全、費用、運営負担など、当該事業に必要なものを選びます。

4.残る懸念と、判断の理由を示す

全員が同じ意見にならない場合もあります。採用した案の理由、対応する懸念、今後確かめることを記録し、判断する主体を明確にします。ワークショップの投票だけで、必要な制度上の手続や権限を置き換えることはできません。

対立する意見を、条件の違いとして整理する例

以下は、広場の夜間利用をめぐる架空の例です。「夜まで使いたい」と「静かにしてほしい」を賛否だけで記録すると、調整できる点が見えにくくなります。利用の時間、音の種類、場所、頻度、連絡先などへ分けて確認します。

意見背景にある関心確認・調整する条件
仕事の後にも利用したい平日昼間に利用できない利用時間、必要な設備
近隣の生活を守ってほしい音や帰宅時の動きが気になる音の出る活動の場所・時間、案内方法
管理の負担を増やしたくない担当者や費用が限られる当番、連絡窓口、試行する日数

この整理から、時間帯を限った試行、場所の使い分け、事前周知などの選択肢を検討できます。ただし、試行できるかは管理者の判断や現地条件によります。解消できない意見の違いも記録し、誰がどの基準で判断したかを説明します。

意見への対応を、見える形で返す

意見への返答に入れること。意見の要旨:背景や懸念も残す。対応の方向:採用・検討中・範囲外を整理。理由:なぜその判断になったか。担当と時期:誰が確認し、いつ知らせるか。
「参考にします」の先に、検討状況が伝わる返答を。

以下は、広場の活用を想定した対応表の作成例です。

意見・懸念確認する内容対応の方向返答・判断の担当
夜の音が心配影響する場所と時間時間帯や運営条件を検討主催者・施設管理者
通路を確保してほしい普段の動線、混雑配置案を修正して確認企画・会場担当
若者の企画を試したい希望内容、支援の必要性小規模な試行を検討地域連携担当

実際の表では、対応状況と返答時期も加えます。「検討します」で止めず、何を確認しているかを示すと、参加者が経過を理解できます。

公表時には、個人が特定される内容や、非公開として受けた意見の扱いを確認します。詳しい経緯を公開できない場合も、論点と対応方針を伝えられる形に整理します。

意見への対応表は、検討中の事項も載せる

対応表には、意見の要旨、主催者の考え方、対応状況、次の確認時期を入れます。「参考にします」だけでは、その後どう扱われるかが分かりません。例えば「現地の管理条件を確認し、次回会議で試行の可否を検討する」と書けば、現在の段階が伝わります。

公表する際は、発言者が特定される情報や、本人が公開を想定していない経験の扱いに注意します。発言を短くまとめたことで意味が変わっていないかも確認します。意見の内容と個人の評価を分け、安心して次の機会にも参加できる返し方を考えましょう。

若者との対話を、幅広い参加の一部として組み込む

プロジェクトの概要:「未来社会デザインとカーボンニュートラル」は、脱炭素を切り口に神戸の都市と暮らしの将来を考えた対話プログラムです。神戸大学・IGES・リジェネレーションが共催し、神戸市が実施に協力しました。レクチャー、グループでの検討、発表とフィードバックを組み合わせています。ここで紹介する成果は参加者のアイデアと議論であり、神戸市の計画への採用を示すものではありません。出典:リジェネレーションの実施記録、神戸大学の開催報告。

神戸の未来社会デザインでグループワークに取り組む参加者
神戸「未来社会デザインとカーボンニュートラル」のワークショップ。出典:リジェネレーション実施レポート。 事例の詳細を読む

リジェネレーションの神戸の実施事例は、若者と行政・研究者が同じテーマを考えた対話の例です。地域の参加設計に応用する場合は、こうした場に加え、他の世代や利用者からどのように声を聞くかも検討します。

都市計画、地区計画などに関連する参加では、事業に必要な手続と、任意の対話の場を整理します。制度の確認には国土交通省の都市計画Q&Aなどの公式資料を参照してください。

三木と神戸の事例を、参加の目的から読み分ける

三木市の若者ミーティングは、地域資源の学習や現地での活動を重ね、若者が将来像を考えて発表した事業です。地域を知る機会と、提案する機会をつなぐ設計として参考になります。神戸の未来社会デザインでは、専門家・行政から情報を共有したうえで、都市と暮らしの未来について対話しました。

どちらも、日常の経験だけでは考えにくいテーマについて、共通情報を得てから意見を交わす構成です。地域全体の合意を確認した事例と扱うのではなく、どの参加者と何を検討したかを踏まえ、住民参加の一つの機会として位置づけます。

説明会・オープンハウス・パブリックコメントをどう分けるか

説明会は共通の情報を伝え、質問を受ける場です。オープンハウスは、展示などを見ながら担当者と個別に話す形式として設計できます。ワークショップは参加者同士が経験を持ち寄り、共同で論点や案をつくる場です。意見募集では、所定の案に対する意見を受け取る目的を明確にします。

制度上の意見募集と、任意の対話イベントは代替関係にあるとは限りません。地区計画や都市計画に関係する場合は、その計画に必要な手続を自治体の公式資料で確認します。横浜市の住民合意形成ガイドラインは、身近なまちづくりと地区計画の合意形成を分けて解説しています。

困っていること追加できる参加方法記録すること
人前で話しにくい個別対話、書面での意見発言者が公開を望む範囲
会場に来られない複数日程、オンラインや郵送方法ごとの参加条件の違い
案の前提を理解しにくい図面・写真と担当者の説明質問と回答、未確認事項
意見が対立する条件別の比較、小さな試行賛否だけでなく理由と懸念

住民自治は地域の人が地域のあり方を担う広い考え方で、個別の行政事業への参加だけでは測れません。参加者数、決定へ関わった範囲、その後の活動を分けて確認します。全体の位置づけはまちづくりの基本へ、開発との関係は都市開発と住民の声へつながります。

意見を集めた後まで含めて、参加を設計する

リジェネレーションでは、若者の声を地域の企画に取り入れる調査・ワークショップをご相談いただけます。対象者、検討テーマ、意見の使い方を整理する際は、まちづくり・地域共創支援をご覧ください。

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制作・参照情報

本記事は、公開中の実施レポートと、本文中に示した自治体・公的機関等の資料をもとに構成しています。比較表や質問例は企画検討のための整理で、特定の事業の成果を保証するものではありません。リジェネレーションの団体情報・事業内容もご覧ください。

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