サステナビリティの社内浸透とは、社員が会社の方針を知り、自分の仕事との関係を理解し、日々の判断や行動に使えるようになることです。研修を開くことに加え、部門で具体的な業務を話し合う時間、実践できる範囲、上司が支える仕組みをつなげて設計します。
「動画は見てもらえたが、仕事は変わっていない」「関心のある社員だけが参加する」。こうした状況を改善したい担当者に向けて、経営方針を業務の言葉へ置き換える方法、研修・対話・実践の組み合わせ、最初の90日間の進め方を整理します。環境だけでなく、人権、働き方、地域との関係など、自社の重点課題に応じて使うための考え方です。

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ
方針を、身近な問いと
実践のきっかけへ。
若者との対話や地域での学びを、サステナビリティの取り組みに組み込みたいご担当者へ。リジェネレーションは、企業・自治体と次世代がともに考えるプログラムを企画・運営しています。
- 若者との接点づくり
- 目的に合う対話設計
- 企画から運営まで
若者とのワークショップ・環境教育・地域共創の支援内容と実例をご紹介しています。
社内浸透のゴールは、仕事で判断できる状態

「サステナビリティを自分ごと化する」という言葉を、確認できる行動に置き換えるところから始めます。例えば、調達担当者なら価格と納期に加えて、取引先の労働環境について何を確認すべきか説明できる。商品企画担当者なら、使う人の不便や廃棄のしにくさを企画時に問い直せる。こうした状態を、対象部門と一緒に定義します。
サステナビリティは環境・社会・経済の持続可能性に関わる広い考え方です。SDGsの目標番号を覚えるだけでは、自社の選択基準は決まりません。自社が優先する課題、今ある業務上の課題、社員が変えられる行動をつなぐ必要があります。
| 確認する段階 | 到達した状態の例 | 確かめ方の例 |
|---|---|---|
| 知っている | 自社の重点課題と選定理由を説明できる | 短い確認問題と自由記述 |
| 業務と結びついている | 担当業務への影響と、判断に迷う場面を挙げられる | 具体的な案件を使った部門対話 |
| 試している | 承認された範囲で業務改善を試し、結果を残す | 実践記録と上司との振り返り |
| 継続している | 有効だった工夫を手順や定例会議に組み込む | 数か月後の業務記録の確認 |
この表は社内で目標をすり合わせるための整理例です。受講率が高くても、次の段階へ進めていないことがあります。どこで止まっているかによって、追加する施策は変わります。理解が不足していれば教材を、実践に移れなければ時間・権限・上司の支援を見直します。
国連グローバル・コンパクトなどによるSDG Compassは、SDGsの理解、優先課題の決定、目標設定、経営への統合、報告という流れを示しています。社内浸透も、このうち日々の業務へ統合していく過程の一つとして位置づけると、広報行事だけにとどまりません。
経営方針を部門と社員の言葉に置き換える

全社員に同じメッセージを伝える部分と、部門ごとに考える部分を分けます。全体で共有するのは「なぜ会社が取り組むのか」「どの課題を重視するか」「判断が難しいときの相談先」です。その上で、担当業務に近い場面へ置き換えます。
例えば「責任ある調達」を重点課題にする場合、社員全員に取引先審査の専門知識を求める必要はありません。購買部門は確認手順を、営業部門は顧客から問われたときの回答範囲を、管理職は相談を受けたときの判断経路を理解する、と役割を分けます。下表は業務への落とし込み例であり、各社の実績ではありません。
| 対象 | 扱う問い | 研修後に残すもの |
|---|---|---|
| 経営層・管理職 | 短期のコストと社会・環境面の影響が両立しないとき、何を優先し誰が判断するか | 判断条件と相談経路 |
| 購買・調達 | 価格・品質・納期以外に、取引先について何を確かめるか | 既存手順への確認項目案 |
| 営業・商品企画 | 顧客や利用者の困りごとを、提案や商品設計へどう反映するか | 次の案件で試す質問や改善案 |
| 人事・総務 | 学習や参加の機会に偏りはないか。働き方のどこを見直せるか | 参加条件と業務運用の改善案 |
現場の社員には、理想像だけでなく「既に取り組めていること」と「難しくしている条件」を聞きます。例えば、資材を再利用したくても保管場所がなければ、意欲の問題として扱ってはいけません。現場から出た条件を、設備・予算・手順の担当へ返すルートを用意します。
管理職には受講を勧める役割だけを任せず、実践に使える時間の確保、部門内の優先順位、困りごとの解消までを依頼します。推進部門が教材を作り、現場が実践を選び、管理職が実行条件を整える分担にすると、担当者一人で抱え込む状態を防ぎやすくなります。
研修・対話・実践を組み合わせる

施策の種類は、社員の関心の高さではなく、今の課題から選びます。基礎知識をそろえる段階では短い教材や動画、判断の違いを扱う段階では対話、実行条件を確かめる段階では小さな試行が向いています。一つの方法ですべてを達成しようとしないことが大切です。
| 方法 | 得意なこと | 次につなぐ工夫 |
|---|---|---|
| 短い研修・動画 | 用語、方針、事業との関係を共有する | 自分の仕事に関係する場面を一つ持ち寄る |
| 部門内の対話 | 日々の迷いや制約を具体化する | 試す行動と、相談が必要な課題を分ける |
| 他部門・社外との対話 | 社内の前提と異なる経験を知る | 持ち帰った論点の検討先と返答時期を決める |
| 業務での試行 | 実行できるか、何が変わるかを確かめる | 記録を残し、継続・修正・中止を判断する |
対話では「サステナビリティについて自由に話してください」よりも、「最近の仕事で、環境や人への影響を考えて迷った場面はありますか」と聞くと、経験を取り出しやすくなります。個人で書く時間を設けてから順番に共有し、発言の多い人だけで結論を決めない進め方を用意します。
続く問いは「その場面で誰が影響を受けるか」「自分で変えられることは何か」「部門を越えた判断が必要なことは何か」です。困りごとを出した人に解決責任を押しつけず、判断が必要な事項は担当者と期限を記録します。意見が採用されない場合も、その理由を返すと次の対話につながります。
環境をテーマにした教材や対象別の学びを詳しく検討したい場合は、企業の環境教育の導入・評価や環境教育イベント・ワークショップの企画例をご覧ください。本記事では、環境分野に限らず、会社の重点課題を業務で使う仕組みを扱います。

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ
社外の視点に触れる
学びを設計する。
自社だけでは気づきにくい問いを、若者や地域との対話から考えてみませんか。目的・対象者・社内での活用先を整理し、公開しているサービスの範囲でご相談を承ります。
- 若者との接点づくり
- 目的に合う対話設計
- 企画から運営まで
NTT東日本やNECとの若者向けプログラムなど、実施内容をご確認いただけます。
最初の90日間で、試行と振り返りまで設計する

初めて取り組む場合は、いきなり全社共通の施策を増やすより、協力できる部門で一巡させ、改善点を確かめてから広げる方法があります。以下は90日間の企画例です。実在する企業の実施日程や、リジェネレーションが提供する固定パッケージではありません。
| 期間の例 | 主な取り組み | 担当・成果物 |
|---|---|---|
| 1〜15日目 | 方針と現場の課題を確認し、試行する部門を決める | 推進担当と部門長:目的、対象、変更可能な範囲 |
| 16〜30日目 | 短い研修と業務に関する対話を行う | 推進担当と参加者:課題の記録、実践候補 |
| 31〜60日目 | 各チームで一つの改善を試す | 現場担当と上司:実践記録、制約、途中の結果 |
| 61〜90日目 | 変化を確認し、継続・修正・中止を判断する | 部門長と推進担当:見直した手順、次の対象部門 |
30日目までの対話では、たとえば「顧客へ渡す説明資料で、根拠が曖昧な環境表現がないかを点検する」という実践を選べます。実施前に対象資料を決め、試行中に確認した箇所と相談事項を記録し、終了時に修正の有無と確認にかかった負担を振り返ります。売上や環境負荷の改善まで、短期間で実証できると決めつける必要はありません。
実践案は「担当者・期限・必要な協力・確認する記録」を一枚にまとめます。担当者を決めても通常業務に時間が確保されていなければ進みません。研修の開催前に、部門長が試行時間と確認日を予定へ入れるところまで調整しましょう。
複数拠点や交代勤務の職場では、同時参加だけを前提にしない設計が必要です。短い資料と録画で共通知識を共有し、職場ごとの小さな対話で業務に置き換えます。配信履歴だけで参加機会を判断せず、閲覧できる端末や勤務時間の条件も確認します。
企業・自治体の実践から、学習設計の工夫を学ぶ

社員を対象にした社内浸透の事例と、社外の若者が参加する学習・共創の事例は、対象と目的が異なります。ここでは前者から施策の組み合わせを、後者から問いと実践をつなぐ設計を読み取ります。若者向けの開催実績を、全社員向け研修の実績として紹介するものではありません。
栗本鐵工所:部門別の勉強会と継続的な情報共有
栗本鐵工所は公式ページで、営業・技術・間接部門などに合わせた勉強会、部門単位で意見を交わす取り組み、社内ポータルや短編動画による情報共有を紹介しています。学ぶ内容を仕事に寄せ、複数の接点を用意している点が参考になります。これらの実施だけで業績や社会的成果が改善したと断定することはできません。出典:栗本鐵工所「社内浸透」。
NTT東日本との若者向けプログラム:現状・理想・行動をつなぐ

2025年7月にNTT東日本とRe-Generationが連携したプログラムでは、地域循環型社会に関するレクチャーに加え、現状の社会モデル、理想の未来、今後の行動を順に考えるワークを実施しました。参加者自身の活動へ結びつける構成が特徴です。公式レポートから確認できるのは、こうした企画と実施内容であり、社員全体への浸透や実施後の行動率ではありません。
この設計を社内で応用するなら、現状の社会モデルを「今の業務フロー」、理想像を「重点課題に沿う仕事の状態」、行動を「自部門で試せる改善」に置き換えることが考えられます。対象者と権限が異なるため、元のワークをそのまま転用せず、部門ごとに調整します。
兵庫県の環境リーダー育成:集合しない期間も設計する

Re-Generationが企画運営を担当した2025年度の兵庫県のプログラムは、ワークショップ、フィールドワーク、メンタリング、提言発表を組み合わせて実施されました。約5か月の公式実施レポートでは、集合回の合間に考えを進め、行き詰まりを支える期間を置いたことも紹介しています。
社員の実践でも、研修の翌日に一人で取り組むよう求めるだけではなく、途中で相談する機会が必要です。若者育成の事例から参考にできるのは、この継続支援の構造です。社員の行動変容や事業効果が同じように生まれると保証するものではありません。
浸透度を測り、よくある停滞を見直す

社内浸透の評価は、受講した人の数だけで終えず、知識、業務との関係、実践、継続を別々に確認します。研修直後には理解と実践案を、1〜3か月後には試した行動と障壁を聞く、と時期を分けると、何を改善すべきか考えやすくなります。
例えば、研修前後で「自社の重点課題に関係する自分の業務を一つ挙げてください」と同じ問いを使い、具体的な業務が書けたかを一定の基準で確認します。実践の追跡では「取り組みたいですか」ではなく、「いつ、どの場面で、何を試しましたか」「試せなかった条件は何でしたか」と聞きます。前向きな意向と実際の行動を分けるためです。
| 停滞している状態 | 先に確認すること | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 受講率が低い | 案内が届いたか、参加する時間・端末があるか | 参加条件と教材の長さを調整する |
| 理解しても案が出ない | 教材が自分の業務と離れていないか | 実際の案件や判断場面を題材にする |
| 案はあるが動けない | 予算、権限、時間、他部門との調整が必要か | 管理職が障壁を取り除き、試行範囲を絞る |
| 一度試して終わる | 振り返りと相談の機会があるか | 定例会議や手順書に確認を組み込む |
アンケートは社員を評価する材料として集めるのか、施策を改善するために集めるのかを最初に説明します。本音を把握する目的なら、管理職への個人別回答の共有を前提にせず、集計方法と利用範囲を明確にしましょう。未回答者が多い場合には、回答者だけの前向きな傾向を全社員の状態に広げて解釈しません。
評価結果は「社員の意識が低い」で締めず、「次回は営業部門の実際の相談事例を教材へ加える」「試行の承認担当を明確にする」など、運営側が変更する内容へつなげます。外部の若者や地域との対話を扱う場合は、ステークホルダーエンゲージメントの進め方で、意見の活用と参加者への返答まで確認できます。
社内浸透を進める前に、決めておきたいこと

最初の企画書には、会社としての重点課題、対象部門、社員に使ってほしい判断、試せる範囲、支える管理職、確認する時期をそろえます。「何人に受講してもらうか」から始めるより、研修後にどの業務で何を変えたいかを一文にすることが先です。
たとえば「営業部門が、顧客からサステナビリティに関する質問を受けた際に、確認済みの情報で回答し、判断に迷う事項を適切な担当へつなげる」と置けば、教材、対話の題材、必要な相談先が具体化します。初回で全社員の行動を一度に変えようとせず、業務の中で確かめられる範囲を決めましょう。
社外の視点を取り入れる際にも、参加者に何を聞き、社内の誰が受け取り、どの会議で扱うかを先に整理します。若者との対話や地域での学習を企画する場合、リジェネレーションのサービス一覧から、対象・目的に合う支援内容をご覧いただけます。環境を題材にした次世代育成は、環境教育プログラムの企画・運営支援で紹介しています。

サステナビリティ推進・CSRのご担当者へ
学びの目的から、
次の企画を考える。
若者との対話、学生向け環境教育、地域との共創を検討されている方へ。社内で考えている課題と、参加者に持ち帰ってほしいことをお聞かせください。
- 若者との接点づくり
- 目的に合う対話設計
- 企画から運営まで
全社員向けの制度設計とは分けて、若者・地域との接点づくりをご案内します。



